記憶
ダンジョン前、冒険者ギルドで登録を終え初期装備を借りて、いざダンジョン!…と言う処で前世の記憶を思い出した。
別に人格が変わった感じはしないが…さっき迄の自分はちょっとアホだったんじゃ無いかと思う。
何をとち狂ったか【召喚士】のジョブなのに自分一人で戦って稼ごうとしていたのだ。
正直分からない訳でも無い、冒険者ギルドから支給された魔石を使って出て来たのが『マイルドドック』だったのだからスラム育ちの自分は無理だと思うだろう、だが前世の記憶を思い出した今は最初はそんなもんだろうと思うのだ。
ソシャゲじゃ無いのだからリセマラだとかSSR確定なんてないのだ。
進化的なのがあると楽しそうだが兎にも角にもご飯代を稼がなければならない、とは言え冒険者ギルドは良くも悪くも犯罪者以外には平等なのだから差別などの心配もないのは良い事だ。
取り敢えず自分はダンジョンに潜る事にした。
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《ミグラント》 《普人族》
[魔力値:5/6]
[戦力値:3]
【下位召喚士:F -】
《職業》
召喚:F《1/6》
契約:F《1/1:咆哮F》
《自己》
直感:E
病毒耐性:E
《固有》
戦術眼:F
▼
この物語の主人公。特にこれといった特別な力もチートも運命も持ってない前世の記憶を思い出しただけのスラム産まれスラム育ちのスラム民。年齢は5才。性別は男性。すでに何となく自分が特別な存在では無い事は察している。前世は高校生。灰色の髪に灰色の目をしている。名前は無かったので自分でつけた…何故この名前が浮かんだのかは本人も謎だったが強いて言うなら身体が闘争を求めたらしい。記憶を思い出した以降の冒険者としての一人称は”此方”二人称は”貴公”にした。
《マイルドドック》《rank1》
[魔力値:3]
[戦力値:1]
咆哮:F
▼
冒険者ギルドの定めた(弱すぎると言う意味で)規格外のランク”F -”の一体。
尚F -は冒険者ギルドの定めた危険度によると”無害級”との事。
扱いは完全に愛玩犬のそれであり、戦闘には死ぬほど向いてない。ペット。
その戦力値は(色んな意味で)脅威の最低値である。
辛うじて咆哮は使えない事もないらしい。
《危険度:F -》
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《契約》のスキルは魔力の上限値を使用する、だからギルドから借りた装備の一つ召喚の魔導本から契約した存在を呼び出す為の魔力を残さないといけない。
とは言え召喚と契約に必要な魔力はそれぞれ魔物の位階と同値らしく《マイルドドック》で言えば両方とも1しか使わないので今の処は問題ない。
魔力も使用し続ければ上がるらしいし常時魔力の上限値を《契約》で使用する召喚士は上がりやすいと聞いた。
ダンジョンの中石(の様な何か)で出来た通路を《マイルドドック》と歩いて行く。
ダンジョンは前世で言う別サーバー的なあれらしくパーティを組まない限り他の冒険者と鉢合わせる事はない。
これに関してはメリットもデメリットも相応にあると聞いたが興味なかったので覚えていないそこまで此方と関係のある話でも無かった気がするし思い出す必要もないだろう。
そんな事を考えながら歩いていたらそこそこ先に緑色の小鬼…恐らくゴブリンであろう存在がいた、此方としては食い扶持を稼がないといけないのでっとっと倒す事にする。
まずそこら辺に落ちている石を拾う、具体的には二つほど。
「マイルドドック《咆哮》」
咆哮スキルには前世で言うスタン効果があるのでゴブリンならまあ3秒位は動きを止めれるだろう。
「ワン!ワン!」
これはマイルド。
と言うかこれで動きが止まるのか…いや効果があるなら別に良いんだが。
取り敢えず止まったゴブリンの顔面に石を投げつける、そこまで距離が離れている訳でもないのでまあ普通に当たる。
怯んだ処でもう一回。
「マイルドドック《咆哮》」
「ワン!ワン!」
投石2回目。
「ぐぎゃ!」
あっ…死んだ。
まあ死ぬかゴブリンって実質武器を持って暴れる子供だし、2回も顔面に思いっきり石を投げたらそりゃあ死ぬよ。
逆に言うとゴブリン以下のこの犬はもっと弱いんだよな。
取り敢えず残った魔石を回収する、ダンジョンは解体する必要がないのは便利だと思う。
その後次の階層への階段につくまでゴブリン追加で2体程殺した、取り敢えず次の階層を少しだけ覗く事にする。