第六章 風邪
~次の日の朝~
何だかスゴく体が重い…。
やっぱり昨日、たくさん泣いたからかな…。
そんな事を考えていると、昨日のお母様との話がフラッシュバックしてくる。
『榛に他に好きな子ができたら、応援してあげてね、巡ちゃん』
榛ちゃんに私を思い出してもらう事しか頭になかった私は、榛ちゃんに他な好きな子ができるトコなんて想像してなかったから。
「私も…ギャルっぽくなろうかなぁ…」
一人でポツンと呟く私。
榛ちゃんが…
榛ちゃんがギャルを好きなら私…
私、雛鳥 巡は、ギャルにだってなんにだってなってやります!!
私は拳を、グッと宙に突き出した。
そうと決まったら、今日は学校帰りにデパートに寄ろう。
そう心に決めた私は、モノクロのシックなパジャマから制服に着替えてリビングに降りて行く。
「お父様、お母様、おはようございます」
リビングの扉を開けると同時に私は頭を下げる。
そんな私が見たのは、鳳珠お兄様ただ一人。
リビングには鳳珠お兄様しか居なかったのである。
「鳳珠お兄様、お母様とお父様と榛ちゃんはどうなさったんですか?」
朝ご飯のバタートーストを右手に持ったまま、ポカンとした表情で固まっている鳳珠お兄様。
「鳳珠お兄様?」
「な、ななな、なんで巡が此処に居るの!?」
はい?
「私は昨日の夜からお邪魔していましたが…」
「うっそ!!」
テーブルにバンッと手を着き、驚きのあまり立ち上がる鳳珠お兄様。
あっ、そうか…。
鳳珠お兄様は昨日、部屋で寝てたから知らないんですね……。
「昨日よりお世話になっております、雛鳥 巡です。よろしくお願いします」
「ふーっ。そっかぁ、よろしくね、巡」
「はい、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ」
ぺこり、と頭を下げ合う私達。
「ところで榛ちゃんはどうなさったのですか?」
「榛は部屋に居るよー。熱出したとかでー…」
私は、鳳珠お兄様の話を最後まで聞かずにリビングを飛び出し、榛ちゃんの部屋へ向かった。
「榛ちゃん!!!!」