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第二章 絶望

次回の投稿は、0:00〜1:00を予定しています。

もし作者の都合により、作品が遅れる場合はスイマセン。

第二章 絶望



「榛ちゃん!!」



普段の大人しい私の言葉に、みんながザワザワと騒ぎ立てる。



「なんなのかな、雛鳥さん」


「ちょっとカッコイイ子が入ったからって、ねえ?」


「てか、知り合いなのかな??」



「静かにしてください!!」



担任の水沢みずさわ先生が一喝すると、一気に周りが大人しくなる。



「雛鳥さんも、座りなさい」


「でも、先生!!私、榛ちゃんのいとこなんです!!」


「え…?」



私の言葉に先生は、

「初耳だわ…」

と呟く。


「雛鳥さん、アナタ、本当に雛鳥くんのいとこなの?」



どうして先生はそんな事聞くの?

担任なんだから、生徒の情報は知ってるハズなのに…。



「はい…そうですけど…」


「おかしいわねぇ…」



首を可愛いらしく傾げる水沢先生。

今年で40歳とは思えないほど可愛いなあ、水沢先生。

でも首を傾げたせいで知的な眼鏡がずり落ちそうになってるし…。



「ねぇ、雛鳥さん。何かの間違いじゃなくて??」


「えっ?違わないですよう、先生。私と榛ちゃんは、間違いなくいとこです!ねえ、榛ちゃん?」



私は榛ちゃんに同意を求める。



「は、お前といとこ?初耳だな。人違いなんじゃねーの」



えっ…?

し…ん……ちゃ、ん?

わっ、私の聞き間違いだよね?それとも、あまりにも私が変わっちゃったから気づかないのかな?

きっとそうだよね…。



「い、いやだなあ、榛ちゃん。巡だよ、巡。雛鳥 巡」



そうだよ、私だよ。

榛ちゃん…。

思いだした、よね?



「つーか、アンタ誰?妙に馴れ馴れしいんだけど」



アンタ、ダレ?

ダレ、ッテ…?

ワタシダヨ、シンチャン…。

ウソダヨネ?

ワルイ、ジョウダンダヨネ?


「もう、榛ちゃんったら〜、見ない間に冗談上手くなっちゃってー!」


「いや、マジで覚えてないんだけど」




その瞬間、


私の世界は


真っ白に


なりました。



バシン



気づけば、

乾いたような音が響いていて、

私は、


私はー…。


私は榛ちゃんの頬を

叩いていたのでした…。




いつの間にか私は学校を飛び出して、昔に榛ちゃん一家が住んでいた家の前に来ていました。


どうして、私…。

ここに来たんだろうー…。自分でも分からなかった。


ただ、榛ちゃんに、

「さっきのはウソだよ。巡の事、忘れる訳ねーじゃん★」

って言って、昔みたいにイタズラっぽく笑って欲しかった。


私は震える手を押さえて、チャイムを押しました。

中から人の声がしたので、もしかしたら誰かいるのかな?って思ったから。


ピンポーン♪


チャイムの軽快な音が響いて、中から小太りの女性が出てきました。



「はい?…あれ??もしかして巡ちゃん?」



小太りの女性……榛ちゃんのお母さんは、十年経ってるから、ある程度は老けたけど、昔と同じ温かい笑顔で私を出迎えてくれた。



「…はい、おばさん…!」


「何があったか知らないけど、泣いてる娘さんを帰す訳にはいかないね。上がっていきなさい、巡ちゃん」




泣いてる?



私が??



私は目元を、そっと指先で触れてみる。

濡れた感触。

自分でも気づかないうちに、泣いてしまってたみたいだ。

でも私には、もう恥ずかしいとか感じる余裕すらなくて、榛ちゃんのお母さんに抱きついた。



「榛ちゃんのお母さん〜!!!!!!」


「なあに、巡ちゃん」



榛ちゃんのお母さんは泣いてる私の頭を優しく撫でてくれた。



「榛ちゃんが…榛ちゃんがっ!!」


「榛がどうかしたの?」


「榛ちゃんが、私の事、誰って…言ったのっ…!!巡だよ、雛鳥 巡だよ、って言っても知らないって…!!」


「!!」



榛ちゃんの顔が段々青ざめてくる。

どうかしたのかな?

私に呆れちゃったのかな…?



「巡ちゃん…」


「な、に…?榛ちゃんのお母さん…」


「今から大事な事を話すわよ?落ち着いて聞いてね??」


「うん…」



何だか嫌な予感がした。

背中に、

ゾクゾクッとした

悪寒が走る。



「榛ねぇ、巡ちゃんと別れてからすぐ、交通事故にあったのよ」


「え…?」



榛ちゃんが、交通事故!?



「ケ、ケガはっ!!」


「だから、落ち着いて聞いてね?榛は、道路に飛び出した子犬を助けようとして、車にひかれちゃったのよ。奇跡的に特に目立った外傷もなかったんだけど、頭を強く打っちゃったのよ。その後、一時的な記憶喪失になってたんだけど、ちゃんと思いだしたの。だから巡ちゃんの場合もそれじゃないかしら?」


記憶…喪失?

榛ちゃんの中から私だけが消えたの?

そんなの…イヤだよ。

榛ちゃん…。



「巡ちゃん?」


「…榛ちゃんのお母さん、私、帰ります」



頭の中がボウッとする。



「巡ちゃん危ないっ!!」



危機迫ったような顔した榛ちゃんのお母さんが私に叫ぶ。




危ない?



何が…。



私はフワッと

横を見る。


すると、トラックがこっちに走って来るのが見えた。



もぅ、




どうでもいいよ…。




榛ちゃんの中から私は居なくなっちゃったんだから…。



「巡ちゃん!!」




続く

次回は…。

秘密です。

楽しみにしていてください。

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