第4話 紐パン、意外
「うーん……。私も商売人だからねえ。そんな簡単に割引はできない、けど……」
「あっ! お、おい、あんまりこっち来ると――」
「危ないって? ここまで呼びつけておいて今更何を言ってるのかねえ。こりゃこりゃ徹夜の影響かねえ?」
そう言われればここに来るまでって今よりも危険な状況だったはず、か。
でも日下部がモンスターと戦う姿なんて今まで見たことないし、勿論自分からモンスターに近づいていくのなんて見たことがなくて……俺のイメージだと『ひ弱』って感じなんだけど。
「があああああああっ!!」
「……。レベル8のワイバーン、ねえ。まるで危険区域『渋谷』にいるみたいだねえ。でもねえ……『渋谷』って所詮は危険度Cなんだよねえ。しかもレベル8はそこに出るモンスターの最低レベルなんだよねえ。だから……そこに住んでる私からしてこのワイバーンは『雑魚』ってわけなんだよ、ねえっ!」
日下部の振り上げた踵が襲い掛かってきたワイバーンの脳天に落ちた。
いつもの猫背でゆったりした印象とは違う、俊敏な動きで放たれたその一撃はワイバーンを地面と同化させ、コロちゃんの顎を外させた。
分かる分かるよ。まさか日下部がこんなに強いなんて……。しかも天啓使ってないし、そりゃあ驚くよね。
勿論俺もかなり驚いた、けど、その強さより今の一撃で日下部のスカートの中に見えたあの淡いピンクのふりっふりが付いた布面積の少ない紐パンの方が驚いたかも。
「「ぐああああああああっ!!」」
「ワイバーンって圧倒的な力を見せつけるだけで簡単に帰っていく臆病なモンスターなんだけどねえ……。ここにいるワイバーンはちょっと違うみたいだねえ。これも異質な存在……コロちゃんのせいなのかねえ」
「多分……。それより一旦こいつらを片付ける手伝いをしてくれるって言うなら日下部はそっちを頼む。俺はこっちを――」
「あんな美味しい朝ご飯を、それだけじゃなくて今日の夜分まで美味いご飯で食い溜めさせてくれるんだからねえ。ここは全部私がやってあげないとだよねえ。あ、でも私のパンツ見たよねえ? だったらそこまでしてあげなくても――」
「食い溜めなんて約束してないんだけど。それに、見てない。いつもの日下部からは想像できないような可愛くてエロい紐パンなんか見てない」
「……。あははっ! 顔真っ赤にして小っちゃいそれなのにテント張っちゃってねえ。なかなか渋くて男前な顔なのにそういう可愛いとこ見せてくれるんだから……あれもこれも抜きにしてサービスしてあげたくなっちゃうんだよねえ。……『複数障壁:部位指定呼吸器、強度2』」
「? ――あ!? ぐあっ……ぐ、ぅ」
バッタバッタと地面に伏し始めるワイバーンたち。
なんかもうあれだけ苦労してたのが馬鹿みたいに思える光景なんだけど……。
「す、凄いですね」
「ふ、ふぅ……。私の天啓は、障壁は、あらゆる場所に張ることができるのよねえ。だからこうやって呼吸を阻害することもできて……つまり、場合によってはあなた、コロちゃんも、ねえ……」
「え?」
「もし、この状況を作ったことに悪意があって戌飼君……れ、蓮君を現行で陥れようって考えているのならねえ……。『バスターズ』じゃないけど私も全力で殺しにかかるからねえ。――。あはは、それじゃあ現金貰ってから朝ご飯にしようかねえ」
凄む日下部についつい俺まで悪寒を走らせてしまった。
でも、コロちゃんはそんな俺よりも日下部にビビってしまったのか、ちょろちょろと失禁。
はぁあ。結局漏らしちゃうのかぁ。
「日下部、あんまり俺の愛犬をイジメないでくれるかな? 罰としてそれの処理は任したから」
「ああ、これはちょっとやり過ぎたから仕方ないねえ。でも、れ、蓮君はもうちょっと注意した方がいいかもねえ」
「そう思うならもっと早く助けてくれれば良かっただろ。それじゃあ支払いを……おっとその前にワイバーンの素材剥ぎ取っておかないと……。ふふふ、これいくらになんのかな? もしかしたら今月分の支払い分全部これで――」
「……。悪いけど、高レベル=素材が高いってわけじゃないんだよねえ。ワイバーンの犬歯は1本100円。皮は1キロ……50円くらいだったような。ちなみにこの強度の障壁の代金は知ってると思うけど――」
「月5000円だろ? でもさあ初月からしっかり現金手渡しなんて、ちょっとケチ臭くな――」
「契約途中での乗り換え費用3000円、強度3の初付与はこっちの疲労も大きいから、その分初期費用が発生して……今月分は20000円になるねえ」
「……。俺のこと案じてくれたくせに……」
「商売は商売。私情は関係ないからねえ。それにこんな綺麗な一軒家に住む『バスターズ』のお給金が安いわけないよねえ。いくらDランクっていってもまさかここにきて障壁代20000円は渋らないよねえ?」
「……。Dランク? いや、俺まだEランクなんだけど――」
「あっ! ご主人様のレベルが一気に上がってたので、『バスターズ認定協会』に報告しておいてですね……。おめでとうございます! ご主人様はもうDランクですよ!」
「まぁまだ『仮』らしいけどねえ」
コロちゃん……。そんなキラキラした目で見つめられたら『なんで勝手に!』っとか言いにくいじゃん。
というかそれをしたってことは……。
「そのうちに認定人がここに来るだろうねえ。私は『バスターズ』とは関係ないからコロちゃんのこと、というか蓮君のプライベートに付け込んだりする気はないけど――」
――ピンポーン
「!?」
「あらあら、『バスターズ認定協会』は随分と暇なんだねえ」
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