第3話 朝飯いいなあ
『再構築:右脹脛』、『再構築:臀部』、『再構築:後頭部』
「……ふぁ、やっと7時半――」
『再構築:臀部』、『再構築:頭部全体』
「おひゃようごじゃいましゅ、ごひゅ人ひゃま、あっ、うひろひゃきに……」
「ん? ああ、そうだった。後ろもいるんだった」
なんかずっと後ろの辺りに違和感があると思ってたけど、そういえばこっちのが楽だからって正面の奴らばっかり相手にしちゃってたな。
……完徹なんて久々過ぎて上手いこと頭が回ってないや。あはは。
……。って何頬張ってんの?
まさか朝ごはん食ってんの?
俺が、ご主人様がこんな頑張ってるってのに、なんでマンガ盛りの白飯がコロちゃんの手に?
――チーン!
魚の匂い……。そういえば鮭が冷蔵で……。
「ん、ごく……。安心してください! ご主人様の分も塩振って用意してますから! だから……私だけ先に頂いちゃいますね!」
とてとて音を立てて家の中に戻るコロちゃん。
家の中がこれ以上悲惨なことになるのはまずいと思たし、これ以上コロちゃんが怯えるのは可哀想だと思って、外でワイバーン狩りすることにしたんだけど……緊張感取り戻させるためにわざとワイバーンを家の中にあげようかな?
「なぁ、お前もちょっとくらいキツイ躾け必要だと思――」
「ぐ、あぁぁああああっ!!」
――ぶちっ。……ぼごっ。
『再構築:左腕』
俺の問いかけを無視して左腕に噛み付いてきたワイバーンのこめかみにカウンターの右フックをぶつけた。
結構な速さで動き回るからこうやって身体のどっかを囮にして、戦うのがさっきからハマってる。
ちょっと前までは何発も殴らないと倒せなかったからこんな戦法じゃなくて、特攻しまくってたけど……。
――ってあれ? その頃、というか2時間前くらいはコロちゃんも狙われてなかったっけ?
ま、まあいいや。
とにかくレベルが上がったみたいで今は当たり所次第では1発。
いや、レベルの影響だけじゃないか……。これは……。
「お前らでさえ、飯食えてるのに……。俺だってゆっくり飯食いたいんじゃああああああああっ!!」
うん。やっぱ、嫉妬ってすげえや。
こんなに疲れてるし、腹も減ってるのにどんどん力が湧いてくるよ。
ああ、もうしんどいしんどいしんどいしんどいしんどいしんどい、これいっそのこと死ねた方が楽なんじゃ――
「ごひゅ人様、がんひゃれっ!」
――憎たらしい。憎たらしいけど……頬膨らませてるコロちゃん可愛すぎんか?
風俗でも摂取できない最強の癒しだよ、コロちゃん。
「ああ、俺頑張るっ――」
「おお、おお、いいねえ。その主従関係。まるで青春だねえ。楽しそうだからあと少し待ってあげようねえ。あ、朝ごはんありがとうねえ」
「いえいえ、あの人見知りなご主人様のお呼びしたお客様ですからこれくらいは……」
「あははっ! やっぱりモンスターが喋って、しかも人間に従ってるって……あー面白いねえ」
おかわりした白飯に旨そうな焼き鮭を乗せて帰ってきたコロちゃんの後ろから、のっそりと歩いてきた女性。
相変わらず影はうっすいし、ひどい猫背とぼさぼさな髪なんだけど……なんかそれが妙に落ち着くんだよな。なんか俺と同じ匂いがするっていうかなんというか……。
「着いてるならもっと早く声掛けてよ。こっちはもう一杯一杯なんだからさあ」
「そうかい? 私には楽しそうに見えたけどねえ。それで君もやっぱり『バスターズ』なんだなあってねえ。モンスターを従えていることにはいろいろ思うところがないわけじゃないけど……それでも君に関心していたところだったんだけどねえ」
「関心ありがとう。でも――」
――ぎっ……ぶちっ
『再構築:臀部』
ヤバ。そうこうしてる間にまたワイバーンに……。くそ、腹立つなあ。
「うっ、らあああああああ!! はぁはぁ……。今はそんなのいいから。早く『障壁』を――」
「んー、なるほど。一応痛みはあるんだねえ、その天啓。そっかそっか、じゃあ急いで私も天啓を……『障壁:目視範囲指定、強度3』。……ふぅ。いつも通り支払いは現金だからねえ。疲れて倒れる前に早く用意を――」
「あれ? 日下部さん、2時間前に私が危ないからってもう障壁張ってくれてましたよね? それで、ご主人様が楽しそうだから自分のことは秘密でって――」
「コロちゃんって名前だったねえ、あのねえ、ネタばらしっていうのはタイミングが重要――」
「へぇー、2時間も食われる俺を見て楽しんでいたと……。ということは楽しんだ分割り引いてくれるんだよねえ。ねえ?」
「それは……。まぁまぁ、朝ご飯食べながらその話『も』しようねえ。コロちゃん、おかわりお願いねえ」
「……。日下部、これも相談なんだけど……朝飯代とらせてもらってもいいかな?」
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