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怪しい笑顔

「ふっ……! ふっ……!」


 早朝。

 太陽が徐々に地平線を超え、明りが街を照らすころ。


 カスミはまだベッドでおスヤスヤと眠っている。


 そんな中、俺は店で買った訓練用の木剣で一心不乱に素振りをする。

 通常の剣より重く、筋肉も鍛えられる優れものだ。


 汗を流しながら、ひたすらに振り続ける。王都に来てからの日課だった。


 吸血鬼に会い、そしてもっと強くなる。

 今よりもっと。だからこうして、毎日少しずつでも強く成ろうと努力している。


 小さい頃から一人で、途中からはカスミと行ってきた剣の基礎訓練は、意外と最近は疎かになっていた。


 冒険者になり、実戦的な剣での戦いが増えることでそっちまで手が及んでいなかったのだ。


 実戦訓練が一番の訓練だというのはそうだと思う。けど、こうして基礎に立ち返ってみると、剣筋に思わぬ癖がついていたり、感覚でやり始めていた動きがあったりと意外と新しい発見がある。


 やはり基礎を疎かにしては強くなれない。初心に帰って、しっかり鍛える。


 そうして日課の素振りを終えると、俺は軽く汗を流し部屋に戻る。


「ふぅ~、疲れたあ」


 肩を軽く揉みながら部屋に入ると、気持ちよさそうに眠るカスミの姿が。


 相変わらず口を大きく開け、体を丸めるように眠っている。

 白い髪に太陽の光が煌めき、何とも言えない神秘的な雰囲気を纏っている。


 やっぱり魔剣だけはあるなあ、としみじみ思う。


 俺はさっさと着替えを済ませると、カスミの身体をゆする。


「ほら、もう朝だよカスミ」

「んん……もう無理……」

 

 寝ぼけて良く分からないことを口走りながら、カスミはむにゃむにゃと口を動かす。


「もう無理って、まだ何もしてないだろ?」

「んぐう……あれ、朝……?」

「ほら、いい天気だよ」


 カスミはごしごしと目元を擦りながら、ゆっくりと身体を起こす。

 ぼーっとしながらも、掠れた目で辺りを見回している。


「ほんとだ……」


 カスミはんん~と身体を伸ばす。

 どうやら目が覚めてきたらしい。


「さ、今日も吸血鬼探すんだろ? 朝ご飯食べに行こうよ」

「ふぁあ……だね。ホロウも朝からご苦労様」

「へへ、昔みたいだろ?」


 言うと、カスミは目を細めて笑う。


「そうね。明日からは私も付き合おうかな」

「起きれたらね」

「起きれるよ!」


 こうして今日もまた人探しが始まった。


 まずは腹ごしらえだと、近くの店で朝食をとる。


「んー、昨日は北の方で聞いて回ったから、今日は少し東側かな?」

「そうね、こっちの方は歓楽街とかだから、もしかすると知ってる人がいるかも」


 今日の捜索範囲を相談しながら、俺はパンに齧りつく。


「セシリアも探してくれるし、これなら効率もよさそうだね」

「そうだね、今日見つかるといいけど……」

「だね」


 と地図を眺めながらもう一口進めると――


「やっ、ここ座っても?」

「えっと――――」


 言われて後ろを振り返ると、そこには見慣れた人物が立っていた。

 昨日に似たシチュエーション。だが、それ以上の衝撃。


 綺麗な金の髪を他なびかせ、我が物顔でそこに立っていたのは、この国でも上位の力を持つ剣聖の称号を持つ男。


「ヴァ、ヴァレンタインさん……!?」

「やっ、元気そうだね、魔断の剣士――ホロウ君」


 ヴァレンタインはニコッと笑う。


 そうだ、王都と言えばヴァレンタインだ。

 最後に分かれたときも、確か王都で活動してることが多いって話していたっけ。


「ど、どうしたんですか、こんなところに」

「どうしたとは冷たいな。僕たちの仲だろ?」


 そう言ってヴァレンタインはウィンクをする。

 そんな親密な仲になった覚えはないけど……でも、そう思ってもらえるのは悪い気はしない。


「王都は僕の庭だからね。水臭いじゃないか、人探しだろ? 僕を頼ってくれればいいのに」

「「!」」


 俺とカスミは目を合わせる。

 確かに、剣聖ほどの人物なら人探しも俺達がするより数倍効率が良さそうだ。


 けど、剣聖……それほど忙しいと思われる人物がわざわざ手伝いに来てくれたなんてあまり素直には思えない。


 これは何か裏があるんじゃなかろうかと、少しだけ警戒心が募る。


「はは、そんな警戒しなくても。言っただろ、僕は君に興味があるって」

「そういえばそんなこと言ってくれてましたっけ」

「いつか手合わせ、だろ? ――ここ座っても?」


 俺はどうぞと頷く。


「君は――確かカスミちゃんだったかな」

「そうだよ」

「…………なるほど。仲が良さそうだね」

「まあね!」


 ふふんとカスミは胸を張る。


「良いことだ。それで、ホロウ君の探し人だけど」


 言われて、俺はヴァレンタインにカスミの描いた人相書きを渡す。


 その様子を、カスミはじとーっとした目で眺める。

 もう何度も絵の微妙さに笑われてきたのだ、警戒心が高まっている。


 すると、ヴァレンタインはじっくりとその人相書きを見た後、うんと頷く。


「この絵だが」

「はい……」

「見たことあるな、彼」

「「えっ!?」」

新作「異世界ハードモード ~女子高生はカオスな異世界に来てしまったようです。え、魔法を貰うのに体の部位を捧げるんですか?~」


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趣味極振りにした作品です。

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