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ジェネラルオーク戦②

「はあああ!!」


 斧と刀がぶつかり合い、激しい火花が散る。


「グゥゥ……グアアアアア!!」


 ジェネラルオークも、負けじと覇気を出し攻撃に全力を注ぐ。


 一対一なら、俺達は負けない……!


 拮抗しているかに見える戦い。

 しかし、徐々にジェネラルオークの身体には切り傷が増え始める。


 体力と精神力をどんどん消耗し、ジェネラルオークの叫び声も必然的に増えてくる。


「グアアアアアア!!!」

「!」


 長期戦を嫌ったジェネラルオークが、思い切り斧を振り上げる。

 一撃必殺、この一撃で一気に勝負を決める気だ。


 その隙を、ホロウは見逃さなかった。


 すぐさま低姿勢をとると、横一線に薙ぎ払う。


 俺の放った斬撃はジェネラルオークの脚を切り裂き、ジェネラルオークは一気に態勢を崩す。


「――――ッ!!」


 前のめりに倒れこむジェネラルオーク。


 俺は一気に地面を蹴り上げると、一気に跳躍する。


「もらった――っ!!」


 倒れこむジェネラルオークの頭が、お辞儀をするように落ちる。


 俺はその落ちた視線の外から、差し出される首に空中で回転しながら渾身の一撃をお見舞いする。


 切り傷しか付けられなかったジェネラルオークの皮膚に、刃が通る。


「グオアアアアアアアアア!!!!」


 激しい咆哮。


 最後の断末魔の叫び。


 そのまま首は斬り落とされ、ジェネラルオークは力なく地面に倒れこんだ。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」


 俺は地面に着地すると、茫然と立ち尽くし、肩で息をする。


 頬を伝う汗をぬぐい、俺は手に握ったカスミを見つめる。


『ナイス、ホロウ!! 私は信じてたわよ!!』


 黄色い歓声が、脳内に走る。


 その声に、俺は思わず笑みが零れる。


「終わった……!」


 俺はくたくた~っと力が抜けると、両手を後ろに着いて地面に座る。


 すると、ドロンっとカスミが人型に戻り、抱き着いてくる。


「わっ!」

「お疲れ様! いや~ホロウならやれると思ってたわ!」


 カスミは嬉しそうにニコニコとしている。


「はは、カスミのおかげだよ」

「ううん、ずっとホロウが頑張って剣を磨いてきたからよ」

「じゃあ、二人の力ってことで」

「そうね。ジェネラルオークはなかなか強敵だったわね」


 カスミはジェネラルオークの死体を見ながら言う。


「そうだね。本物の野生の魔物はなかなか手ごわいね」

「ふふ、でも結果だけ見ればホロウの圧勝よ! 命のやり取りって、経験が物を言うからね」

「そっか……」


 これくらいの運動は普段からカスミとの訓練でしている。それでもこの疲労感があるのは、精神を極限まで切り詰め集中していたからこそなんだろうなあ。


 結構テンパってたのかもしれない。


「まあでも、一度乗り越えたんだから次からはもっとうまく行けるわよ! ジェネラルオークに無傷何て、普通はありえないんだから!」


 カスミはキラキラとした目で嬉しそうに言う。


 もっと精進する必要がある。

 ヴァレンタインさんとも俺の剣は互角だった。剣の実力には自信があるんだ、後は経験を積むだけだ。


「うん……がんばろう!」

「その意気よ!」

「……よし、リーズたちの所に行こう。もうオークの声がしてないから終わったのかもしれないけど。もしまだ戦ってるなら早く助けないと」

「あら、優しいねホロウは。オークくらいあの人たちだけでも大丈夫だと思うけど」

「油断は厳禁、だろ?」


 俺の言葉に、カスミは確かにそうねと肩を竦め、すぐさま刀に戻る。


 俺は駆け足でリーズたちの向かった小部屋へと向かう。

 今ならオークにも負ける気はしない。


 少しして、小部屋が見えてくる。


「あ、あそこ――」


 瞬間、何か変な感覚を覚える。

 何故か額から、ツーっと汗が垂れる。


「……?」


 俺はその汗を拭う。

 そして、嫌な悪寒が身体を走る。重々しい空気感。

 小部屋に近づくほど、それはどんどんと大きくなっているように感じた。


「……カスミ」

『……ええ、私も感じてるわ。これは……《《あの夜》》みたいな……』


 リドウェルでヴァレンタインに追われたあの夜。

 路地で死体を見たときのような、何かが居るという感覚。


 空間が変わった様子はないから、人払いの魔術ではない。

 純粋に、この先から感じるプレッシャー。


『それに……ジェネラルオーク戦の前に感じたあの感じ……もしかして、これが……』


 カスミからも緊張感が伝わってくる。

 俺は無意識に、ごくりと唾を飲み込む。


 見たくない。進みたくない。何かが変わってしまいそうなそんな予感が、小部屋の入口から漂っていた。


 けれど、だとしたら尚更行くしかない。

 カタカタと、カスミが揺れる。――いや、カスミを握る俺の手に力が入り過ぎているのだ。


「……行くよ」

『……えぇ』


 俺は恐る恐る岩に手をつきながら、ゆっくりと小部屋の中を見る。


 地面にはオークの死体が転がっている。

 そして、その中央に立っていたのは一人の女性だった。


 それは、リーズやシアではなかった。

 

 後ろ姿の銀色の髪を女だけが、ただ一人この部屋で佇んでいる。

 その左手には、俺と同じ武器、刀が握られている。


 女はこちらの気配に気が付くと、ゆっくりと振り返る。


 その顔は綺麗で、そして返り血を浴びて頬が赤く染まっていた。

 その血を拭いながら、女性は笑みを浮かべる。


「遅かったわねえ。やっと会えたわ」


 女性は、妖艶な声色でそう俺達に聞こえるように言う。


 誰だ、この人は……。


 混乱で、俺の視野は狭まっていた。

 転がっている死体はオークだけじゃなく……。


 その女性の右手には、誰かが掴まれていた。

 一瞬誰だか分らなかったが、その黒髪とローブ姿で気付く。


 あぁ、彼は――。


「リーズ……!!」

お知らせ

コミッググラスト5/27配信号から、本作「最強剣士の下克上」が、タイトル

改め「落ちこぼれ魔剣使いの英雄譚」としてコミカライズ連載が開始します!

作画はよつやのはじめ先生! Twitterの方で予告画像などツイートしてるので

見てみてください、絵がきれいすぎる、ホロウ・カスミ可愛い……!

連載開始お楽しみに!

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