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ジェネラルオーク戦①

 ジェネラルオークは、ゆっくりと間合いを詰めてくる。

 俺は、刀をしっかりと握り直す。


「……っ!」


 今までに感じたことのない圧。

 これが、ジェネラルオーク……!


 ただの魔物じゃない。この迷宮(ダンジョン)で多くの敵を返り討ちにしてきた、百戦錬磨の魔物だ。


『そうよ、ホロウ。いい? 相手は戦い慣れているわ。生まれ持った能力だけだった今までの魔物とは訳が違うわ』

「うん、そうみたいだ。落ち着いて戦う……!」

『その意気よ! やっちゃえホロウ!』


 元気よく背中を押された感じがして、俺はぐっと気合を入れなおす。


 ジェネラルオークは、ゆっくりと近づいてきながらもこちらの出方を伺っている。

 だったら、まずは挨拶代わり――!


「“三閃”!」


 ジェネラルオークを覆い囲むように、三本の剣閃が襲い掛かる。

 これなら確実にダメージは入る! 


 ――しかし。


「グオアアアアアア!!」


 ジェネラルオークは地面を思い切り斧で抉ると、岩や土を思い切りこちらに投げつけてくる。


「なっ!?」


 岩は俺の斬撃にぶつかると、その勢いを殺す。

 勢いの落ちた三閃はジェネラルオークの皮膚に弾かれると、その隙に一気にジェネラルオークが身体を入れてくる。


「こいつ……!」


 予想以上に戦い慣れてる……!!


 そうだ、今まで討伐してきた魔物たち。確かに強かったけど、人間と戦うときのような駆け引きのようなものはなかった。


 でも、こいつには思考がある……! 戦闘の概念が……!


『ホロウ、気を付けて……!』

「うん……!」


 迂闊な攻撃はできない。きっと、今までのように攻撃するとこいつには受け止められてしまう。


 どうする――


「グアアアアア!!」


 瞬間、俺の攻撃が止まったことを見逃さず、ジェネラルオークは一気に俺に突撃してくる。


 振りかぶった巨大な斧が、思い切り振り下ろされる。


「ふっ!」


 俺は刀を横に構え、振り下ろされた斧を受け止める。

 ドシンっ! と重い衝撃が手、肩、腰、脚へと電撃のように一気に流れる。


「ぐっ……こいつ……パワーが……!」


 攻撃が重く、地面に脚が埋まりそうになる。

 素のパワーは俺以上だ……!


 さすがにこれを無尽蔵に打ち込まれると、一気に破壊される。

 守りは不利だ……!


 だが、ひるんだ俺を見逃さず、ジェネラルオークは斧を握っていた片方の手を離すと、思い切り振りかぶる。


 ――平手打ち――!


「ッ!」


 俺は咄嗟に雪羅を抜くと、ジェネラルオークの脇腹に向けて振る。


 ジェネラルオークは俺の攻撃を察知すると、攻撃の手を緩め距離をとる。


 俺の振りぬいた雪羅が、空を切る。

 

 こいつ……剣士との戦いにも慣れている。

 遠距離攻撃の可能性が低いことを読んでるんだ。このまま戦いを続ければ、俺が魔術を使えないことまで察してしまうかもしれない。そうなれば、俺が圧倒的に不利だ。


『相手にとって不足はないわね、ホロウ』


 いつも通りのカスミの声が頭に響く。

 この声が聞こえると、落ち着ける。


「……そうだね。確かに今まで戦ってきた相手より明らかに素の力が高い。間違いなく強敵だよ」

『ええ。でも、思い出して私との特訓を。純粋な剣での勝負。それなら、ホロウが負けるわけないわ!!』


 カスミのどや顔が頭に浮かぶ。

 俺は静かに頷く。


「任せといてよ……!」


 俺はカスミを構えると、スッと全身の力を抜く。

 落ち着けば、勝てる相手だ。


 少しの膠着状態。

 遠く、小部屋の方から魔術の放たれる音と、オークの叫び声が聞こえる。


 そして。


「グオオアアアアア!!」


 痺れを切らしたジェネラルオークがこちらに駆け出す。

 恐らく、奥のオークの叫び声から状況を察したのだろう。リーズたちが押してるんだ。


「来い!」


 ジェネラルオークはさっきと同じように土砂の弾幕を張る。

 襲い掛かる岩や土を、俺は完全に見切って全て叩き切る。


 その一瞬の視界の隙から、ジェネラルオークは一気にこちらに飛び掛かる。


「ふっ……!」


 それを僅かな動きで避けると、開いた首元に刀を滑らせる。

 だが、ジェネラルオークもそれを斧で受け止める。


 そこから、一気に俺の連撃が始まる。


 パワーで負けているなら、スピードで勝つ!

 その重い斧ならついてこれないだろ!


 斧と刀が弾ける甲高い音が迷宮(ダンジョン)に響き渡る。

 

 徐々に刀がジェネラルオークの皮膚にかすり始める。

 重い斧では俺の刀のスピードについてこれない。


 しかし、きっと今までもそれだけの攻撃をしてきた剣士はいたはずだ。

 だが、ジェネラルオークの皮膚は鋼のように固い。傷をつけることは難しい。


 ――けど。


「グ――ウオオオオアアアアア!!!」


 ジェネラルオークの悲鳴。

 皮膚からは、赤黒い血が流れる。


「カスミなら傷をつけられる!!」


 ラストスパートだ……!

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