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興味②

「興味ですか」


 まさか剣聖と呼ばれる人が俺なんかに興味があるだなんて。確かに魔術を斬るなんて有り得ないと色んな人が言っていたけど……。


 恐らくこの国でもトップに近いであろうヴァレンタインさんが興味を持つくらいだ。もしかすると魔術を斬れるというのは本当に俺だけの力なのだろうか。


「魔術を斬る……そんな力聞いたこともないからね」

「ホロウは凄いでしょ」


 カスミは自分のことの様に自慢げに胸を張る。


「はは、その通りだ。君の存在は騎士団ではちょっとした話題になっていたよ」

「話題?」

「あぁ。昨日の今日だけどね。なんたって、魔術がこれだけ発達した時代においても、魔術のカウンターとしての魔術は数あれど発動した魔術そのものを破壊するような魔術は存在しない。それを、魔術ではなく剣術だけでやってのけるとはね。一体どうなっているのか」


 ヴァレンタインさんは興味深げに俺を見る。


「そりゃ騎士団の人たちも興味津々さ。魔術を斬る少年。魔断の剣士。呼ばれ方はいろいろだが、すぐに広まるだろうね」

「おお、ホロウがとうとう有名人に!」

「う、嬉しいですけど……いいのかな広まっちゃって……」

「なんで?」

「まあ、ただ興味があるだけの人間だけじゃなく、悪意を持った人間も近づいてくるだろうからね。そこは注意が必要かもしれない。けれど、冒険者として生きていくつもりなら、名を売るのは重要だからね。上手く活用するといいさ。それに、君と魔断の剣士が一致しているのはまだ僕だけだ。これからの戦いの中でどんどん広まっていくだろう。君も、隠して生きるつもりはないだろう?」

「はい。俺は剣だけでも強くなれると証明するために家を出ました。俺の力がその手助けになるなら、むしろありがたいですけど」

「はは! いい心がけだ、君の活躍は是非とも追わせてもらうよ」


 そうヴァレンタインは楽しそうに笑う。


 その笑いがどういうものなのか俺には分からないけれど、どこかアラン兄さんと同じような雰囲気を感じる。悪い人じゃない気がする。


「まあ僕は純粋に君の剣の実力に興味があるね。こう見えても僕は魔剣士の中で剣聖と呼ばれる存在だ。その僕を超える剣技……魔術を使えないという特異な体質だからこそなせる技か」

「そんな大げさですよ」

「はは、君の人柄が見えてきたよ。今度僕と手合わせてしてもらえるかな? もちろん昨日のような殺し合いじゃなくね」

「そ、それは願ってもないですけど」


 剣聖との手合わせ……!

 昨日の戦いのような打ち合いが出来るなら、かなり訓練になるな。


「それは助かる。まあ君も冒険者として忙しいだろうからね。時間があるときによろしく頼むよ。そういえば君は王都に来たことあるかな? 王都はね――」



 そうしてヴァレンタインからの交流はその後も数十分続き、俺達はその場を後にした。


「はぁ~緊張した……」


 俺は深くため息を吐く。


「そんなかなあ? 王様に会うとかより全然だと思うけど」

「王様とか、そんな非現実的な……」

「そうかな?」


 不思議そうにカスミは首をかしげる。

 六百年……そいうやカスミは封印されていた魔剣だったんだよな。俺の知らない過去があって当然か。もしかすると王様となんかあった……とかあるのかな。


「まあ確かに凄い人ではあるかもね。緊張しても無理ないか。大丈夫?」

「まあ何とか。さすがに昨日は命の危機だったから平気だったけど、改めてこうやって対面すると凄いオーラだったよ」

「ホロウの方が強かったけどね!」

「本気だったのかなあ……」


 剣聖。

 詳しくは良く知らないけれど、騎士の中で与えられた名誉称号。


 アラン兄さんが話していたのを覚えている。


 俺に、剣術の才能は凄いと言ってくれていたアラン兄さんが良く引き合いに出していたのが剣聖の存在だった。


 ホロウならきっと剣聖にだって負けない剣の腕を身につけられるさ。

 そうすれば、もしかしたら魔術師相手でも戦えるようになれるかもね。


 そうやって良く俺を励ましてくれた。


 きっと魔術師と戦えるようになれるかもという言葉は、今思えばアラン兄さんなりの方便だったんだろうけど。小さいながらもその剣聖という響きに、俺はきっと強くなれるんだと励まされた。


 その剣聖本人との対談だ、緊張しない訳がない。


 俺は今さっきまで語り合っていた窓を見上げる。


「ホロウは凄いからね、剣聖の目も節穴じゃなかったってことね」

「それは言い過ぎだよ」

「そんなことないよ!」


 と、相変わらずのカスミ。

 俺にもこれだけ俺のことを信じてくれる人が居る。まあ剣だけど。

 それだけでも大分助けられているなあと思う。


「……ありがとな」

「ふふ、一蓮托生だからね!」

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