表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/69

圧倒的

「はっ、剣術しか能がねえゴミが本当にいるとはな! その割りには威勢がいいじゃねえか。ホッグス、相手してやれ」

「俺でいいのか!」

「痛めつけるの好きだろ? ちょっとこのガキに思い知らせてやれ」

「くっくっく、きたきたきたああ!」


 後ろから、金髪の青年がウキウキした様子で現れる。


「はっはあ! 殺しも女も楽しめるとは盗賊になって良かったぜ! さっさとてめえを嬲り殺して、その後はあの女達だ!」

「その言葉、殺される覚悟もある上で言ってるんだよな?」

「あぁ? ……あっはっは! いいぜいいぜ、殺せるもんならな! 魔術も使えないとかそこら辺のガキにも負けるぜ! いやあ、居る所には居るもんだなあ。良く生きてこれたもんだ」

「そうか、じゃあ遠慮は要らないな」


 俺は剣の切っ先を盗賊へと向け、顔の横で構える。 


「ひゅ~かっこいい! 構えは一丁前だなあ! じゃあ、いくぜえ……!」


 金髪の男――ホッグスは両手を前に突き出す。


 魔法陣が出現し、魔力の反応で光が溢れる。


「まずは動けなくしてからじっくり楽しませてもらうぜ! "雷撃サンダー”!!」


 放たれる、白い電撃。

 雷属性魔術、"雷撃サンダー"。食らえば一時的な痺れは防げないだろう。

 だが、俺には関係ない。


 瞬間、俺は一歩踏み込み刀を振り切ると、俺目掛けて放たれた雷撃を、一刀両断する。


 俺の切り裂いた雷魔術は、バラバラに解けるとまるで静電気のようにバチバチと虚しくはじけ空へと消えていく。


「はっはっは! これが魔術だ! 剣で切ったところで魔術を止められる訳がないだろ!!」


 自信満々な表情を浮かべるホッグス。


「体中が痺れて今にも倒れこみそうな――」

「"雷撃サンダー”か、いいなあ魔術使えて」


 俺は平然とフンフンと軽く素振りして見せる。


「……は?」


 ホッグスの顔が一瞬にして曇る。


「……? あ、あれ……? いやいやいや! 俺の"雷撃サンダー”をまともに食らっただろ!? ライガでさえしばらく痺れて動けないはずだぞ!?」

「斬った」

「は……はあ? 何を言ってる! 魔術を斬れるわけがないだろ!」

「おいホッグスなにやってる、さっさと攻撃しろ」


 後ろの頭はイライラし始めたようで、腕を組み鋭い眼光をホッグスに向ける。


「しゃねえ、もう一発だ! "雷撃サンダー”!」


 しかし、これも俺は眼前で軽々と斬り捨てる。


「えっと……え?」


 カレンも、茫然と俺を見つめている。


「ま、また!? た……確かに魔術を放ったはず……な、何かおかしい……!! 俺は今確実に……こ、こいつ……! な、何かしたんだ! 魔術だ……魔術に違いない!! 騙された……! こいつ魔術師だ!!」

「何言ってやがる、そんなもん発動してなかっただろうが! ただの剣士だぞ、何慌ててやがる!」

「いや、だから……!! 俺の魔術が相殺され――――」

「あぁ、遅い。俺の幻想イメージの剣豪はこんなスピードじゃなかった。わざわざお前の準備を待つ必要もないよな?」


 瞬間、俺は一気にホッグスの間合いへと踏み込む。

 自分の魔術を斬られたホッグスは、哀れなほど隙だらけだった。


「う、うわあああああ!!」


 無造作に繰り出される魔法陣。

 しかし、俺はそれを一薙ぎで切り捨てて見せる。


「な、なんだこいつ……お頭!! こいつ何かおかしい!!」


 横一線、魔法陣を切り裂いた勢いをそのまま刃を下から上に向けて振りぬく。


 ザシュッ!!


 と、何かが斬れる音がする。


「はっ…………え?」


 二つの物体が宙高く舞い上がりクルクルと回転する。

 それは重力の縛られて落下を始め、ドスっと音を立てて地面に落ちる。


 続いて、目の前を覆う程の赤い洪水。


「う……うぎゃあああああああ!!!」


 ホッグスは叫び声を上げて地面に倒れこむ。

 無造作に突き出していたはずの腕が、肘から先が綺麗になくなっている。

 そこから溢れ出る血を必死に止めようと涙を零しながら自分の身体に押し付けている。


「!」


 盗賊たちが、倒れこみ叫ぶホッグスではなく。

 冷静に刀に付いた血を振り払う俺の方を見て固唾をのむ。


 ――人を斬った。

 だが、心は落ち着いている。その理由は明確だ。こいつらが絶対的悪だからだ。


 クエンとは違う、存在する価値のない者達。

 要は、魔物と変わらない存在だ。


 戦える。俺の剣術は、魔術を使った犯罪者集団にもまったく引けを取らない。それどころか――。


 これなら、行ける。


「てめえ…………本当に剣術だけか……?」


 俺はニヤリと笑う。


「剣術をなめていると痛い目見るよ。そいつみたいに」

「……チッ!」


 バロンは、苛立った表情を浮かべ額に大筋を浮かべる。

 しかし、さすがは頭領といったところだろうか。自分の怒りとは裏腹に、バロンは最も最適な答えを選択する。


「得体が知れねえ!! 油断はするな、このガキは何か使いやがる! なぶり殺しはやめだ、全員でこいつを速やかにぶち殺す!! いいなあ!?」

「「「うおおおお!!」」」


 盗賊たちが、さっきまでのなめた態度を改め、バロンの一声で一斉に戦闘態勢へと移行する。


「――殺せ!!」


 その言葉を合図に、盗賊たちは一斉に魔術を発動する。

 

 風や火、水などの魔術攻撃が俺を襲う。


 しかし、俺には発動の瞬間から魔力の流れが視えている。展開する魔法陣を的確に捉え、魔力の充填が早いものから破壊していく。


「なっ……!!」

「おいおいおい!! 魔法陣が破壊されるぞ!」

「はぁ!? そんなの魔術だろ!!」

「魔術でもそんなのできねえよ!!!」


 阿鼻叫喚の盗賊たち。

 お得意の魔術が使えず、完全に混乱状態だ。


 俺はその最中を高速で駆けまわり、次々と切り裂いていく。

 盗賊たちは成す術もなく倒れこんでいく。


「てめえら……舐められてんじゃあ――ねえ!!」


 隙を見て放たれたバロンの氷属性魔術。


 氷の棘が群れを成して俺に襲い掛かる。

 さっき両腕を切断したホッグスや、倒れた他の仲間を巻き込んで凍らせることもお構いなしに、それは発動された。


 広範囲に渡り地面が凍り、氷の山が迫る。


「甘い!」


 俺は迫りくる氷の山を一振りで破壊する。

 それに連鎖するように、地面を覆っていた氷も一気に崩壊していく。元は一つの魔術。先端を破壊すれば根元まで崩壊するのが道理だ。


 俺は取り戻された地面を全力で走り、最短距離で一気にバロンへと詰め寄る。


「なっ……くそ、冗談だろちくしょう!!」


 俺を見てすぐさまバロンは腰に差したナイフを抜く。

 

「ガキ相手なんざナイフで十分なんだよおお!!!」


 何の策もなく、ただ俺に向けて突き出された一突き。


「そんな付け焼刃のナイフ、俺には効かないよ」


 俺はそのナイフの切っ先を、軽く見切って見せる。

 眼前でそれを首の動きだけで避け、一気にバロンに詰め寄る。


「ッ!?」


 俺はそのまま頭領の身体を斜めに切り裂く。


「は、はえぇ……」


 噴き出す鮮血。


 バロンは唖然とした表情で膝から崩れ落ちていく。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 血が溢れる胸元を抑えながら、バロンは息を荒げる。

 もうすでに、戦意も体力もない。


 俺は刀をそっと鞘へとしまう。


 カチンと音がした。

「面白かった!」

「もっと更新してくれ!」

「続きが気になる」


等々思っていただましたから、下の【☆☆☆☆☆】より評価いただけると非常にありがたいです。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ