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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

”ドール”

作者: 二尾 結尾

満天の星空の下に広がる荒れ果てた大地。

その荒野に、ぽつぽつと墓標のように立ち並ぶ、かつて家だった土壁。

その陰で、刺すような冷たい夜風をしのぐ人々の姿があった。


皆が横になり寝ている中、ひとりの若者が歩いていく。

その先には、かつての村の広場にある構造物の残骸に腰掛ける老人がいた。

老人は、顔をあげて若者を見ると、ため息をつきながら言った。


“なぁ、爺さん”

“なんだ”

“おもしろい話をしてくれよ”


“はやく休め、小僧。先は長いんだ”

“そうは言ってもなぁ”


ふてくされたように顔をしかめる若者に、老人はため息をつく


“そなたがよくても、この老いぼれの身体が持たん。勘弁してくれ。これでも、少しでも長生きしようと必死なんだぞ”

“爺さんがくたばるなんて信じられるか”


顔をしかめる老人に、若者は元気な笑い声をあげる

老人は、首を横に振って


“よし、いいだろう。この老いぼれ頭が寝ちまうまで話してやろうじゃないか”


――――――――――――――――――――――――――――――――――


むかしむかし、世界はもっと大きく豊かだった


その頃の人類は、実に様々なことができた。

空高くそびえたつ構造物を築き、

大空を自由に飛び回り、

空の先にすら、その活動範囲を広げていった。


神に迫らんとする人類は、あるとき、人類は自分たちに限りなく近い存在を作った。


人類は、その存在を“ドール”と呼んだ。


“ドール”は本物のヒトのように話し、

“ドール”は本物のヒトのように考え、

“ドール”は本物のヒトのように笑った。


人類は、“ドール”たちにヒトを支える存在になってほしいと願った。


ヒトのように考えながらも、ヒト以上の頭脳を持つその存在が、

人類の友として、自分たちを支えてくれることを望んだ。


“ドール”たちはその期待に応えた。


ヒトができない仕事を、その頭脳で解決し、

ヒトがやりたがらない仕事を、率先してこなし、

ヒトが膨大な時間を必要とする仕事を、効率的に済ましていった。


人類が生み出したその存在は、人類にとって不可欠であり、よい友人だった。


しかし、いつしか人類は、自分たちと似た“ドール”を恐れ始めた。


自分たち以上の性能を持つ存在

自分たちが知らない部分まで網羅する存在

自分たち以上に簡単に物事を運んでいく存在


「“ドール”は、世界の覇者となった人類を支配できる存在なのではないか」


人類は、友として生み出したその存在が、自分たちの手を離れ、自分たちに歯向かうことをひどく恐れた。


そして、人類は、“ドール”の完全廃棄を決定した。

自らが生み出した友を、すべて破壊することになった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


“そのあとはどうなったんだ”

“知らんよ。まぁ、人類が”ドール“がしていた仕事を、自分たちだけでこなせるか、が問題だな”


若者は、考え込む。


“その”ドール“たちは、最期に何を思ったんだろうな”

“それも知らんよ。全く下らん、自分たちが生み出したものを、自分自身で恐れるなど”


老人は、そう言うと、毛布にくるまりながら横になってしまった。


“・・・・・・・・・”


若者は、満天の星空を眺めながら、まるで底のない深淵をのぞき込んだような冷たい感覚に浸っていた。


・あとがき・

短い文書でしたが、読んでいただき、ありがとうございます。

いまに通じる何かを感じてもらえれば幸いです。


なにかあれば、順次、修正・更新していきます。

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