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#6 チュートリアル①−冒険者登録−

次に気付いた時には、広間のような部屋にいた。

周囲を見回すと、背後には大きなクリスタルのようなものが設置されていてその周りに次々とプレイヤーたちが現れてくる。

足元にはセヴァキアが俺たちを転送した時の魔法陣をさらに大きくしたものが光っているのでおそらくここに全プレイヤーは転送されるのだろう。

そんなことを考えているとウィンドウで『チュートリアルを開始します。よろしければ〈はい〉を押してください』という文字が表示されたので了承する。


『チュートリアル用フィールドへ移ります。チュートリアル中は、他プレイヤーは表示されません』


すると周囲のプレイヤーの姿が消え、先ほどまでの賑やかな広間から俺とトゥニアのみのがらんとした寂しい広間になってしまった。


「ムク、人が消えた」


「チュートリアル用の場所に移ったみたいだからな」


「なるほど」


トゥニアも一瞬でたくさんの人が消えたので驚いていたらしい。

先に説明しておけばよかったか…。

それにしてもセヴァキアもゲーム用語を言っていたのでもしかしたらと思ってはいたが、どうやらNPCもゲーム用語は説明せずに通じるみたいだな。

「チュートリアルって何」とでも聞かれたらどうしようかと思ったが。

意外と説明しづらいし。


『まずは冒険者ギルドで冒険者登録をしましょう』


『マップを出してみましょう。マップ表示と頭の中で念じてください』


言われた通りに念じてみると目の前のウィンドウの上に別のウィンドウでマップが表示された。

実際に触ることもできるし、大きさも自由自在。これは便利だな。


『こちらは最初の街“セントルム”のマップです』

『現在は冒険者ギルドや神殿など主要な場所のみ名前が表示されていますが、探索する中で見つけた場所は自身で登録することが可能です。特定の条件でのみ発見できる場所なども存在するので自分だけのマップを作成しましょう』


『また、他の街や国全体のマップはスキル《マッピング》を所持して実際に探索するかNPCのショップから購入することで入手が可能です』


『それでは冒険者ギルドへと向かってください』


説明アナウンスの表示が終わると、マップ上に赤く点滅する点が現れた。

タッチしてみるとマップに“冒険者ギルド”と表示されるのでここへ行けということだろう。

それにしても主要な場所以外は表示されないと言っていたが、マップ内の点は冒険者ギルドを含めても4つしかない上に全てが真ん中に集中している。

これは街全てを調べるのは大変そうだな…。


「トゥニア、冒険者ギルドで冒険者登録するみたいだ。行こう」


「ん、冒険者登録」


広間を出るとそこはさらに大きな広間があり、セヴァキアを含めた6体の神様の像の前で何人かの人々が祈っていた。


「トゥニア、セヴァキアが神様は自分以外にもいるって言ってたけどあの像がそうなのか?」

「そう、私たちから見て左手前から火神ミフロス様、水神ベラ様、風神ペスナト様、地神セブージル様、闇神ロザト様、そして最後が光神セヴァキア様」


トゥニアは俺の質問に答えて一息に言い終えると、どうだとドヤ顔しながらこちらを見ていたので撫でておく。

次来た時に改めて挨拶することを心に決めて、大広間を出るとそこはヨーロッパなどで見ることができるような広場だった。

中央には噴水があり東西南北に向かって大通りが伸びており、人々で活気にあふれている。


「今出て来たのが神殿だとすると冒険者ギルドは…あそこだな」


冒険者ギルドは神殿の真向かいにあった。

扉をくぐると正面には何箇所かに区切られたカウンターがあり、おそらく受付の職員であろう人たちが戦士風の装備の人などの対応をしていた。

左手の壁には掲示板らしきもの、右手にはいくつも並んだテーブルと椅子の存在と奥の方から聞こえる威勢のいい声から食堂であろうことが想像できる。

ちなみに掲示板らしきものと言ったのは、その掲示板があまりにも巨大だからだ。

低く見積もっても5mはあるように見えるのだが…上の方の紙の文字は見えるのだろうか?


『受付にて冒険者登録を行ってください』


指示に従い受付に行くとちょうど対応が終わったらしく人が退くところだった。


「冒険者ギルドへようこそ、ご登録ですか?」


「はい」


「ではまずこちらの魔法具に手を乗せてください」


栗色の髪を後ろでまとめた受付のお姉さんはそう言うと、横にあった水晶の板を目の前に置いたので言われた通りに乗せてみると板の表面に文字の羅列が浮かび上がって来た。

そこでお姉さんに一度手を離してくれと言われ、離すとお姉さんは文字の上へと白色のカードを置き何か聞きなれない呪文のようなものを唱えた。

すると文字は板からカードへと移るとともにカードの色も透き通った水色へと変わった。


「はい、これにて冒険者登録は完了です。ギルドの業務と施設の説明はお聞きになりますか?」


「あー…聞きたいんですが、その前にこの子の冒険者登録もお願いしてもいいですか?」


「はい?」


「ん、私」


お姉さんの疑問の声に対して手を伸ばして存在をアピールするトゥニア。

ここまでくる途中でトゥニアも登録するのか聞いていたところ「する」と答えていたのだ。

ちょうど死角に入っていたのかお姉さんも気付いてなかったようで、驚いていた。


「わ、分かりました。それじゃあお嬢ちゃん、この板に手を乗せてくれる?」


差し出された板に爪先立ちでなんとか手を伸ばして乗せているが…足がプルプルしてるぞ。

見てて和むので、今回は助けまい。

あ、お姉さんも和んでるが仕事はしてほしいな。もう読み取ってるぞ。


「…まだ?」


トゥニアも同じことを思ったらしく、お姉さんを急かしていた。


「ご、ごめんなさいね。…はい、できました」


そう言って差し出された空色のカードをトゥニアは受け取ると、俺のカードと見比べて見せてくる。


「お揃い」


うん、可愛いな。

こうも懐かれると詠里が小学校に上がった頃を思い出す。

出会ってから2、3年過ぎた頃の詠里は警戒心も解けて、俺の後ろばかりをついて来て学校での出来事や貰ったものなどを俺に見せに来ていた。

ちょうど身長も同じで110cmくらいか…。

懐かしくなりながら俺は頭を撫でると嬉しそうに目を細める。


「では、すみませんが業務と施設の説明をお願いできますか?」


俺はそう言ってお姉さんに向き直るが、お姉さんはポケーっとトゥニアを見つめて惚けてしまっている。

試しに目の前で手を振ってみるが…反応なし。

他の人と思って周りを見るが、みなさん忙しそうで対応や業務に走り回っている。

仕方ないか…と俺とトゥニアはお姉さんが復活するまで受付の前で暫らく待ちぼうけを食らうのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] チュートリアルに冒険者登録があるけど もしインスタンスマップに飛ばされなかったらプレイヤーが大行列になってて即萎えてたでしょうね…。
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