#3 キャラ作成
意識を取り戻すと同時に目を開けると、雲の上のような空間にいた。
『身体情報のスキャンとユーザーとデータの登録認証を行います』
そしてしばらくすると、どこからともなく音声が流れてくるとともに空から白色のリングが降ってきた。
体が輪を通るごとに先ほどまで自分の神経が戻ってくるような感触を覚え、輪が雲に消える頃には現実の自分の体を動かしているのと変わらない感覚になった。
『続いて、アバターの設定を行います』
すると、雲がせりあがり目の前にリアルの俺のデータを基としたキャラクターを表示したパネルが出てきた。が、顔のところだけはなんというか…モブ顔のような味気のない顔をしておりここから手を加えて自分の気に入った顔にしていくらしい。
そういうことなので手を加えていたのだが…いつまでたっても終わらない。
まつげの色から目の位置などやってて楽しい人は楽しいのだろうが、特に見た目にこだわりのない自分にはただただ苦痛の作業だ。
「自動でやってくれないかなぁ…?」
愚痴をついつい口走ってしまった。
『アバターの自動生成を行いますか?』
「うお!?…え、できるの?」
『はい、可能です。最初の設定画面の右上に自動生成モードが配置されています。』
…全く気づかなかった。いや、早く終わらそうとよく見ずに始めてしまった俺が悪いのだが。
徒労に終わってしまったことに打ちひしがれながら、自動生成モードを押すと黒髪黒眼で日本人風のやや美形のアバターができていた。
「おぉ、いいじゃん」
ファンタジーによくある外国人風のキャラじゃないのも高得点だ。三人称視点のゲームならともかく自分が操るとなるとこんな感じのキャラの方が違和感がない。
あとやや美形なのも嬉しい。いくらこだわりがないとはいってもやるならかっこいい顔でやりたいものだ。
『…ありがとうございます』
思わず漏れた言葉に若干ながら照れた様子がうかがえる返答が返ってきた。
高性能AIとは聞いていたがこんな感情を隠した表現までできるのか!?すごいなAAO…
『名前の設定を行います』
名前か…。特に凝った名前にすると後で一善や健介に会った時に恥ずかしいしな。いいや、名前を音読みにして…
「《ムク》で頼む」
『…はい。名前を確認しました。プレイヤー《ムク》で登録します』
『設定は以上となります。それでは最後にあなたに質問です。あなたはこのAlles Arcadia Onlineで何をしたいですか?』
なんだこの質問は?健介たちのβの話ではこんな質問があったとは聞かなかった。
まぁとにかく答えよう。
何がしたいかか…。別に俗にいう最強…トッププレイヤーになりたいわけでもないし、ただ友達にもらえたから始めようと思ったわけだから大した理由があるわけではないのだが…。
でもそうだな…。あぁ、そうだ。
「初めての経験をしてみたいかな」
『初めての経験…ですか。詳しく聞いても?』
「あぁ。友達からこのゲームを紹介された時にまるで異世界に転移したみたいだって聞いたんだ。そんなにも完璧に再現された世界で、かつ魔法やらモンスターが存在する世界なんだろ。ならこのゲーム…AAOじゃないとできないことをやってみたいって考えていたんだ」
…俺相当恥ずかしいこと言ってないか。
やばい、穴があったら入りたいぞ…頼む何か言ってくれ!
『…なるほど、それがあなたのしたいことなのですね。わかりました』
『それでは私はこの子をあなたに託しましょう。光神セヴァキアの名の下に来たれ、眷属よ』
音声がいい終わると同時に空から光を纏った女の子が降りてきたのだ。
え、これどういう状況?