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#2 妹とゲーム

一善とVRマシーンを購入してから、最初の金曜日。

今日がAAOのサービス開始日だ。一善も健介もサービス開始と同時にログインするためにさっさと家へと向かっていったので、自分も帰ろうとしていると後ろから声をかけられた。


「あれ、お兄ちゃん今日は随分早いんだね?」


「あぁ、詠里か。今日はAAOのサービス開始日だろ?だから一善も健介も今日は手伝いを入れないようにスケジュール調整してすぐに帰れるようにしてたみたいだからな。おかげで付き添いの俺も今日は早く帰れたってわけだ」


「あ、なるほどね!ていうか、お兄ちゃんもAAO始めるんでしょ?…みんなで一緒に集まってやったりしないの?」


声をかけてきた妹、詠里も我が友人と同じβテスターなのだが、ちょっと違うのがβテストに応募した理由だ。単純にゲームをやりたいが8割と友人の一人健介とお近づきになりたいというさくぼ…ゴホン、乙女心が2割で始めたらしい。結果としてはβテストの権利を射止めたあたりはやはり恋する乙女は強いのかと感心したものだ。


「残念ながら集まらないな。サービス開始までそれぞれβ時代の情報を整理してスタートダッシュを決めるんだ!とか言ってたな。詳しいことはほとんど分からなかったが」


集まらない、と聞いたところで詠里は肩を落とす。

これからAAOでどうせ会うのだからいいんじゃないか?と思ってしまっても口には出さない。以前同じようなことを言ってしまったら3日は口を聞いてくれなくなってしまったのだ。


「…んー、しょうがないか。ゲームで会えるまで待とう!そういえばお兄ちゃん、今日のご飯ちょっと早めにしてねって言ったのは覚えてる?」


「あぁ、サービス開始が19時だからだろ。今日は母さんも夜勤でいないからパパッと軽めに作れるものにするからな、パスタでいいよな?」


それにしても17時過ぎに夕飯を食べるのは早すぎる気もするのだが…。あと1時間だぞ、腹に入るのか?


「ありがとー。お兄ちゃんの作る料理はパッと作るものでも手が込んでるからね。なんでもばっちこーい!」


そうやって話しながら上機嫌になった詠里と共に俺は家へ帰ってきた。


家に帰ると詠里は部屋で友達と電話でAAOについて話すのだと部屋に行ってしまった。なんでも詠里もお詫びをソフトにしたそうで興味を持っていた友達にあげたらしい。ゲーム初心者なその子のサポートをするのだと気合十分に2階へと上がってくのを見送って、俺は洗濯物を取り込み畳んだあとキッチンへと向かい料理の準備を開始した。


今日のメニューは和風ペペロンチーノとシーザーサラダだ。

パパッと食べてしまえるし準備もお手軽で済む。


まずはパスタパンでお湯を沸かしている間にニンニク、パセリをみじん切りと鷹の爪を細かく切り、きのこをさっと洗う。

お湯が沸いたら塩を大さじ1とオリーブオイルを小さじ1入れてパスタを茹でる。

パスタが茹で上がる間にサラダを作るが、これはレタスをちぎって入れてクルトンをのせ、自家製のシーザードレッシングをかけるだけの簡単なものだ。

そうしたら茹で上がったパスタをあげて、刻んだニンニクと鷹の爪をオリーブオイルで炒めて、パセリときのこ、茹で汁を少々。

しっかり混ざったらパスタと絡めてと。


よし、これで完成だから盛り付ける前に詠里を…というところでキッチンの入り口の方から視線を感じたので横を向くとキラキラとペペロンチーノを見つめる我が妹がいた。


「…もうできたからフォークと麦茶を持っていってくれ」


「はーい」


時間を見ると17時半を回るところだったので、おそらく待ちきれなくなったのだろう食欲旺盛な妹のために、パスタを皿に盛り付け最後に小ねぎをパラパラとかけて完成っと。二人ぶんのペペロンチーノとサラダを食卓に並べて夕食の準備が完成する。


「おー、相変わらずの主夫っぷりだねぇ、お兄ちゃん!これなら今すぐにでも婿に引く手数多だよ!」


「はいはい、どうも。ちなみに俺が今婿に貰われていった場合、家事はお前がするんだがいいのか?」


そんな言葉を返すと詠里は口笛を吹きながら横を向く。

…地味に上手いのがムカつくな。

詠里も昔は手伝いをすると言って一緒にやっていたのだから、できないはずはないのだが…。

そんなことを考えながら席に着き、手を合わせ目の前の料理に手をつける。


「お兄ちゃん、AAOでどんなことをするか決めたの?」


「いや、まだ何も決めていないな。一善や健介に聞いた限りだとAAOって職業がないんだろ?自分が取るスキルと行動によって称号ってのに職業みたいのが付くって言ってたからな。とりあえずしばらくやってたらわかってくるだろ」


そうなのだ。AAOを一週間前に一善に貰って以来AAOについての知識を改めて聞いていたのだが、一番の驚きだったのは職業がないということだった。やったことがあるファンタジーゲームは職業を選ぶのが当たり前だったのにと驚いているとβの時に話したぞと怒られてしまっていたのだが、それはまた別の話。


「まぁねー。私たちはβでやってパーティの役割が決まってるし、パーティも全員参加が決まってるから取るスキルも決まってるけど、最初はそれが一番か。変なスキルさえ取らなきゃOKだしねー」


「変なスキルって何かあるのか?」


「例えばβであったのは、【樹の気持ち】ってスキルかな。木型のモンスターと会話できるかもって考えた人が取ったけど結局唸り声みたいなテレパシー?が聞こえただけだったらしいよ」


「それはまた外れだな…」


無言で向かい合ってる木のモンスターと人を想像してしまった。


「ま、どのスキルも使い方次第だからね。その【樹の気持ち】ってスキルも会話できる木型のモンスターやNPCがいるんじゃないかって話だったし…と。ごちそうさまでした!」


気が急いているのか食べ終わってすぐに部屋へ戻ろうとする詠里に風呂の予約だけ頼んで、俺は洗い物など残った家事を始め終わって時間を見ると19時を少し回っていた。


「さて、じゃあやってみますかね」


部屋へ戻る前に家の鍵を確認−防犯も問題なしだったので、ベッドに寝転がりVRマシーンの電源を入れる。

起動音とともにメッセージの羅列が流れたところで、俺の意識はゆっくりと薄れていった。



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