#13 犯罪者認定?
10話すぎてやっとモンスターとの戦闘の気配が…!
展開遅いですが、長い目でみてくださると嬉しいです!
「ゆ、誘拐!?」
そんなことしてるわけないのになんでそんな…って理由は一つしかないよな。
俺はちらっと横目でトゥニアを見る。
掲示板曰く誘拐の被害者である当人は運ばれてきた野菜炒めを食べつつ首を傾げている。
「…ムクのやつの方が美味しかった。なんで?」
「使ってる調味料が違ったのかもしれないな。あとで聞いてみよう」
「ん、また作って」
その辺でやめておいた方がいい気がするんだけどな。
さすがに食べ過ぎだ…
それはともかく俺が誘拐犯とされてる訳について詳しく聞くと、どうやらNPCとプレイヤーでは頭の上に表示されるカーソルが違うらしい。デフォルトではキャラ名やカーソルも表示されないが、設定によっては全部が表示されるようになるそうだ。
βテスターはそのことを知っており、また事前情報をまとめたサイトでも載せていたので多くのプレイヤーはチュートリアル後にその完全表示へと変更していたらしい。
その結果、ソロのプレイヤーかプレイヤー同士でパーティを組んでいる人々がほとんどな状態でプレイヤー一人とNPCの女の子の二人組は随分と目立ってしまっていたらしい。そしてその状況をたまたま掲示板にあげたプレイヤーいたらしく、個人を特定できる情報はあげていなかったそうだが他に当てはまる奴もいないだろという推測の元、俺だとほぼわかる状態で掲示板で話題になってしまったそうなのだ。
「今、冒険者ギルドでこなせる依頼なんて街を出てすぐの草原にいるワイルドラビットの討伐くらいだしね。それもレベルが上がってないうちはみんなが押し寄せるからプレイヤーに対してラビットの数が足りてない。みんなちょっと行き詰ってるところに明らかに特別なことをしてるであろうお兄ちゃんの情報なんて入ってきたら、どうやってやるんだーってみんな不満のはけ口になっちゃうわけ」
「その不満の中で誘拐してるなんてデマを撒いたやつがいたんだろうな。本人も掲示板に出てこないから悪口書き放題な状態でズルや犯罪してるんだろうって分かり易い攻撃の対象にされてしまったんだろう。全く卑怯な奴もいたもんだ!」
「そんな流れで今ムクだとわかる状態で掲示板に誘拐犯だって偽の情報が流れてる状態になっちゃってる。僕たちが状況をGMに連絡したから掲示板はすぐにでも削除されると思うけど、こんな初期から一人のプレイヤーに対して攻撃がおこるなんて運営も予測してなかったんだろうね。実際信じてる人はそんなにいないと思うけど情報が出回ったのはもうどうしようもできないと思う…」
なんてこった…。まさかチュートリアルが終わってまだ冒険に出る前からこんな冤罪を被ることになろうとは…。
「濡れ衣を取っ払うには、その子…トゥニアちゃんだったか?その子に誘拐されてないって言ってもらうのが早いんだろうが−」
「プレイヤー一人一人に言って回る訳にはいかないしな。そんな面倒なことをトゥニアにさせるのも以ての外だ」
「だよな。掲示板も落ち着くまでは下手に手を出さない方がいいだろうし…運営が何か対処をしてくれるまではしばらく静観するしかないだろうな」
それしかないか…。
全く冒険を始める前から人の目を気にしながらやらなきゃならないなんて面倒なことになったな…
「ムク君は落ち着くまではしばらく私達と一緒に行動した方がいいと思うわ。7人だけど合同パーティを組めば動けるし…」
「だが、合同パーティになると経験値の分割が割に合わないだろう?俺側の問題で迷惑をかけているのにそっちのパーティの経験値が減るのは良くないしな。提案はありがたいけど、そっちにも被害が飛び火したら目も当てられない」
実際今も掲示板の情報を見たのか、こちらの様子をチラチラ伺っている視線を感じる。
監視されているようで気分のいいもんじゃないな。
「だけど…」
「大丈夫だよ。しばらくすれば落ち着くだろうし、万が一絡まれたらGMコールすればいいだろうしな」
「…そこまで言うならわかった。けど、何かあったらすぐ連絡よこしてくれよ。うちのパーティ全員とID交換しておけば、連絡くれれば駆けつけるからな」
「ちゃんと頼ってよ、お兄ちゃん!ゲームの中では私の方が先輩なんだからね!」
「わかってるよ。何かあったら頼らせてもらうから」
そのあと、全員とID交換をしイチゼン達と別れた後俺たちはギルドのクエストボードで受ける依頼を決めることにした。
−納品クエスト−
ワイルドラビットの肉を5つ納品してほしい
報酬:50ルコ
依頼者:ジール精肉店
−納品クエスト−
ワイルドウルフの毛皮を3つ納品してほしい!なるべく早く!
報酬:500ルコ
依頼者:ロシルの鎧屋
−討伐クエスト−
ワイルドボア1匹討伐
報酬:500ルコ
依頼者:商業ギルド
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たくさんの依頼が並んでいるがどれがいいものか…。ワイルドボア1匹なんて兎50匹分の報酬だしな…。
まぁそのぶん手強いんだろう…あっ、ウルフの依頼がなくなった。
俺たちも早く選ばないとな。
「トゥニア、どの依頼が受けてみたい?」
「…お肉が食べられるやつ」
食い意地が張りすぎじゃないですか、お嬢さん…?
そういうことなら肉の納品のクエストじゃない方がいいな。
トゥニアの希望を叶えられ、かつまだ戦闘初心者の俺たちでも達成できそうなクエストを探した結果一つのクエストを見つけた。
−納品クエスト−
ワイルドウルフの毛皮一つお願いします。
報酬:100ルコ
依頼者:ティート
これなら1匹倒せば、毛皮の納品をして報酬ももらえつつ肉はゲットできるだろう。
受付で冒険者カードと受ける依頼を提示して、クエスト受注もできた。
問題はワイルドウルフがどこにいるかなのだが…受付の人に聞いてみたところ東門の先にある平原とその向こうの森の境目あたりによく出現するらしいとの情報だった。
「よし、東の大通りで武器と道具を買ってウルフ退治に行こうか」
「私の魔法でお肉ゲット…!」
肉でどんな料理がいいか言い合いながらギルドを出た俺とトゥニアだが、俺たちは離れた距離でついてくる後ろの人には気づけないまま東門へと向かうのだった。