#12 2日目スタート!
日々PVやポイントが増えていて感謝です!
翌日、目覚ましの音で目を覚ますと朝7時だった。
土曜日とはいえ生活習慣はそうそう乱れないし、詠里がずっと寝てるタイプなのでいつもこの時間に起きるのだが…今日は珍しく下から物音が聞こえる。
母さんも昨日は夜勤だと言っていたので、起きてる可能性は少ない。
となると、詠里が起きているか泥棒かの二択なのだが…と恐る恐る階段を降りて下の様子を見てみるとなんと詠里が朝食の準備をしていた。
「どうしたんだ?普段こんな時間には起きてないだろ?」
「へっへーん、お兄ちゃんが昨日約束したのに来ないからだよ!今日もバイト行くんでしょ?それなら早く朝ご飯食べてバイトまでの間にログインしてもらって昨日の話を聞かせてもらおう、ってことで私が珍しく早起きしたのです!」
なるほど、確かに俺は土日に近所でカフェのバイトをやってるから土日もゲームをやる時間を他の人ほどたくさんには取れないしな。
なら空き時間を無理やり作ってしまおうってことか。
全く家事をやる理由もゲームからってところが詠里らしいっちゃらしいな…
「じゃあもう朝の家事は全部終わってるのか?」
「当然!朝ごはんの準備はご覧の通りだし布団干すのもお兄ちゃんのだけ!洗濯はこれからだけど…残りはそれだけだから手伝ってもらえれば問題なし!」
「おぉー、ありがとな。普段もそれくらい動いてくれると助かるんだけど…」
「うぐ…、今日は特別!」
泣き落としは効かないか。やってくれるのは素直に有り難いし今日はラッキーな日くらいに思っておこう。
「じゃあ朝ごはん食べてしまおうか、いただきます」
「じゃあ私もいただきます!」
2人で朝食を食べ終わり残りの家事をやってしまっても時間は8時半。
バイトまでまだ時間は十分にあるな。
「他のみんなはもうログインしてるみたいだから、お兄ちゃんもログインしちゃってね。場所は昨日と同じ酒場だからね!」
「了解」
家族のカレンダーに今日の予定を書いてと…。
詠里のやつ昼食と夕食以外ゲームって後で怒られても知らないからな…。
二日連続で待たせるわけにもいかないので、さっさとマシーンの電源を入れて俺はAAOの世界にログインした。
景色が切り替わり、昨日ログアウトした部屋のベッドに座っていた。
横のベッドを見るとトゥニアもちょうど起きだしたところだったので声をかける。
「おはよう、トゥニア。今日は俺の友達に会いに行くんだが一緒に行くか?」
「ん、行く」
了承の返事をもらえたので一緒に部屋を出るとリビングにはゼクターたち家族が揃っていたので一声かけてから家を出ようとするとサヤさんに呼び止められた。
「ムクさん、トゥニアちゃん。まだご飯食べてないでしょう?一緒に食べていったら?」
「いえ、そこまでご迷惑かけるわけには…」
「気にしないで。うちにいる間は家族も同然なんだから。トゥニアちゃんはもう食べる気満々みたいだし」
そう言われて横を見るとトゥニアの姿はなく、家族と一緒に椅子にすでに腰掛けていた。
「すみません、ありがとうございます」
サヤさんの好意に甘え、サヤさん特製のサンドイッチを頂くと視界の片隅に胃のようなイラストが表示され、その中の数字が増えていくのが見えた。
ヘルプを見るとどうやら満腹度が回復したらしく満腹度が0になると、《空腹》のバッドステータスになり能力値にマイナスの補正がかかるらしい。
ログアウトした時の満腹度が一杯でも再度ログインした時の満腹度は基本50で、50以下でログアウトすると再ログイン時はその値からスタートになるらしい。
ということは、何個か食事は持ち歩いた方がいいみたいだな。
ギルドのキッチンを何回も借りていたらすぐ金欠になってしまうだろうし。
救いはAAOの食事に味はあっても満腹感はないことか。現実の満腹感を引きずっていたらさっきの朝食でもう腹一杯だったからなぁ…。
トゥニアも食べ終わったので、改めて挨拶をして俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
リリースから一夜明けてギルドの混み具合もそこそこ落ち着いたらしく、受付には列ができているものの昨日のような人混みで動けないようなことにはなっていなかった。
酒場の方に行くとファンタジーでよく見るような荒くれ者の格好をした人々の中に真新しい装備を付けた集団がいるのが見えた。
おそらくそうかなと思いながら到着した旨を伝えるメッセージを飛ばすとその中の1人が立ち上がってこちらの方を見たので手を振る。
「やっと合流できたね。その子が前話してた眷属の子?」
「あぁ、昨日は悪かったな」
「気にすんな!軽くセグに聞いた限りじゃ随分濃いチュートリアルだったみたいだからな。仕方ないってもんだ!」
セグ…あぁ健介のキャラ名か。ってことはこっちのマッチョが…
「一善か?」
「おぉ、そうだぜ!って…そういやまだAAOでの名前はお互い知らないままだったな。それならまず自己紹介から始めるか!」
「じゃあまず僕から。キャラ名はセグ。パーティの役としては斥候だね」
そう言って先ほど立ち上がった水色の髪の男性が自己紹介をする。話し方からも健介とわかるな。
「次は私ね!私はトルナ!槍使いの前衛をやってます。よろしくね、お兄ちゃん!」
次に自己紹介をしてくれたのは赤髪をポニーテールにまとめた女の子だったのだが…お兄ちゃんってことは詠里か!
「私はトマキア。セグの姉ね。役割は治癒魔法を使ってのヒーラーです。よろしくね」
続いては白の修道服風の装備に身を包んだ女性だ。セグの姉ということは詩緒里さんか。無事にゲームを始められたようでよかったな。
「わ、私はモナカです。役割は…えっと、魔法を使ってます。えーと…え、トルナちゃんと同級生でゲーム貰って一緒に始めてます!お、お兄さんのお話は前々からたくさん聞いて…。えっと、えっと…よろしくお願いします!」
そして慌てながらも挨拶してくれたのがおそらく昨日セグが言っていた早希ちゃんか。詠里と同級生ってことは前に話してたゲームをあげた友達だろうな。というか、おっきいな。詳しくいうのはセクハラになるから言わないが色々と−ってイタタタタ!?
急に足に痛みを感じたので見るとトゥニアにつねられていた。察しられたのだろうか…?
「で、最後は俺だな!キャラ名はイチゼン!前衛でタンクをやっているぞ」
最後は一善だな。しかし俺と一緒で名前の読み方を変えただけだし、役割も被ってるな…。
「みんな自己紹介ありがとう。俺はムク。前衛で盾持ちの剣士をやってる。半分タンク半分剣士みたいな立ち位置だな。で、こっちがトゥニア。後衛の魔法使いだな」
「…初めまして。よろしく」
自己紹介も終わって席に着くとウエイトレスが注文を取りに来た。
まだ初期資金のままだからあまり使いたくないんだけどな…。
「ワイルドラビットの野菜炒め」
いつのまにかトゥニアは料理注文してるし…。
あの料理を気に入ったみたいなのは嬉しいけどさっき食べたばっかだろ!
食欲底なしか…!?
とりあえず俺は一番安いのを頼もう…
「果汁ジュースを一つ」
注文を取ったウエイトレスさんが去った途端、早速昨日のキャラ作成とトゥニアについての質問が飛んでくる。
みんなの話をまとめると、曰くキャラ作成の時に質問はあったが戦闘がしたいや魔法が使いたいと答えたら最初の10個のスキル以外に魔法や《初心者の》とついた武器を貰えたらしい。
その時の声は男の人の声だったり、少年の声だったり、女性の声だったりと様々だったようだがみんな神様が出てくるなんってことはなかったそうだ。
眷属もβではもちろん掲示板でも今まで見たことがなく、明らかに新情報だという。
質問に対して俺とトゥニアがあらかた答え終わると、イチゼンとセグは何か話し合った後神妙な面持ちでこちらに向き直った後口を開く。
「…ムク、君もしかしたら既に掲示板で誘拐犯扱いされてるかもしれない」
なんですと!?