#1 友人とゲーム
なろう初投稿となります。
お手柔らかによろしくお願いします。
キーンコーンカーンコーンキーンコーン…
ホームルームも終わり、家に帰ろうかと準備をしていると友人の荻窪一善が「武久、ちょっといいか?」と話しかけてきた。
「どうした? 今日はバスケ部の助っ人で呼ばれてたんじゃなかったのか?」
「あぁ、向こうの顧問の先生が親戚の法事とかで来れないらしくてな。急遽中止になったらしい」
無くなったって聞いて急いで戻ってきたぜと言って制服で汗を拭う、イケメンこと一善は俺にタブレットの画面を見せてくる。
「武久、これ知ってるよな?」
「…アレス・アルカディア・オンライン?ああ、前にお前らがβテストに当たったー!って言ってたやつか。」
VR技術が発明されて以来動画やアトラクションなど様々なものに活用されてきたが、フルダイブ機能が搭載されたVRマシーンと対応したVRゲームが登場したのは十数年前のことだ。
そこから各企業が発売するゲームはほとんどがフルダイブ型のゲームに変わり、今やVRマシーンを持っていない家庭はないと言われるほどに普及してきたVRゲームだが、その中でもアレス・アルカディア・オンライン−通称AAO−は、完全に再現されたファンタジー世界であり頬を撫でる風や家一軒一軒の壁の質感など全てが現実のような感覚が再現されており、ゲーム内のキャラクターも全てが高性能AIを搭載しているため実際の人間が動かしているのかと錯覚するほどで文字通り異世界に転移したよう…らしい。
普段つるんでいるあと一人の友人に、βテストの感想と一緒にプレイしていたらしい妹の状況を聞くために話を振っただけで延々と1時間近く説明されたため嫌でも覚えてしまったのだ。
「そう!あのAAOの正式サービス開始が発表されたんだよ!サービス向上のためって言われて1ヶ月待たされたこの気持ちが1週間後にやっと果たされる…」
「それは良かったな。で、自慢なら走ってくることでもなかったろ。何か本題があるんじゃないのか?」
「あぁそうだった!…武久、一緒にAAOやらないか!?」
「いや、VRマシーン持ってないから無理だぞ?」
「なんだと!?」
先ほど持っていない家庭はないと言ったVRマシーンだがうちにももちろんある。だがそれは妹の詠里のもので、バイト代やお年玉なども貯まっているため買えない額ではなかったが特にやる機会もないからと俺は買わないままだった。
「だいたいそのゲーム、ソフトも初回版はもう売り切れてて第2陣の発売はあと2ヶ月は先とかになってるから詩緒里さんが落ち込んでたみたいな話健介としなかったか?」
健介とは先ほどのAAOの説明を長々としてくれたもう一人の友人で、その姉の詩緒里さんも結構なゲーマーらしくみんなでβテストに応募していたらしい。だが、詩緒里さん以外当選というあまりにもな抽選結果となってしまったため初回版こそはと応募したのだがそこでも落選してしまったため家の空気がここ最近重苦しいと健介が愚痴をこぼしていたのだ。
「ふっふっふ、それなんだがな…これを見ろ!」
そう言って一善はタブレットの写真を見せてきた。
「これは…そのゲームのソフトか。ん、二つある…?」
「そう!さっきサービス開始が1ヶ月遅れたって言ってたろ?そのお詫びでβテスター限定で送られてきたんだよ!いやー、ゲーミングチェアかどちらか選べって書いてあった時は悩んだけどなー」
「てことで武久、これやるから一緒にAAOやろうぜ!」
「なるほどなぁ…」
ソフトはある+リアルの友人からの誘い。状況がここまで整っていてあとは自分が一歩踏み出すかどうかか…。
「よし、いいぞ。やろう。」
「マジでか!?よっしゃ!じゃあ早速VRマシーン買いに行こうぜ!オススメのやつ教えてやるよ!」
一善の嬉しそうな顔を見ながら、まぁたまにはいいかと思っていたところでふと気づいた。
「そういえば、一善。今日は健介はどうしたんだ?いつもならうちのクラスに来るはずだろ?」
「あぁ、健介ならAAOのソフトをサプライズで渡したいからって大急ぎで帰ってたぞ。あそこの家は今日はすき焼きかもな」
なら、放っておいても大丈夫か。あとで一言連絡を入れておこう。
「よし、じゃあマシーン買うついでに夕飯の買い出しもしたいから一旦帰って駅前で合流にするか。荷物持ちよろしく。」
「マジか…武久の買い出しは一回が多いからなぁ。それに関してはパーゲンなアイス1個で手を打とう」
ぬぅ、いい感じなところを突いてきやがる…。こうなったら重いの割り増しで買ってやろう。そう決めて俺は荷物を持って帰路につくのだった。
5話まで毎日投稿していきます。
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