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12話 力の確認

「体の調子はどうかね?」


 ギルバランの問いに僕は自身の体を確認する。手を握っては開いて、肩を回して屈伸をする。体を捻ったり伸ばしたりするが、特に異変はない。


 まだ、耳鳴りや頭痛、匂いがキツかったりとはあるが、目覚めたばかりの時に比べればかなりマシになった。肉体的にも異常は感じられない。


「ふむ、見た限り問題は無さそうだな。それでは訓練を始めようか」


 ギルバランの言葉に僕は頷く。ようやく訓練が出来る様になった。僕が鬼になってから5日が経った今日、ようやく鋭敏になっていた感覚が我慢出来るほど慣れて来たからね。


 慣れる前は動くだけで視界がグラッと揺れて気持ち悪くなるほどだ。歩く事すらままならなかったから、歩けるってだけで嬉しく感じてしまった。


「何をニヤニヤしているのだ。気味が悪いぞ」


 余りにも嬉しくて笑みを浮かべていると、ギルバランにそんな事を言われてしまった。憎い鬼にそんな事を言われると腹が立つけど、今はそんな事で怒っている場合じゃない。


 悔しいけど、この鬼に師事しないと力の使い方はわからないし、僕自身強くなれない。まあ、復讐という目的のために、その対象である鬼の力を貰った僕だ。そんな些細な事は気にしないようにしないと。


「それで、今から何をするんだ?」


「うむ、まずは吸血鬼となった体に慣れてもらわなければならない。吸血鬼となったお前の体はお前自身が思っている以上に強化されている。それこそ、力加減がわからずに自分で自分の体を壊すぐらいに。

 そうなる前に、自身の限界を知らねばならん。そのために……」


「そのために?」


「こやつらから逃げてもらおう」


 そう言いながらギルバランは燕尾服の内側から短剣を取り出して、何を思ったのか自分の左手首を切りつけた。


 勢い良く溢れ出る血。僕は驚いて動けなかったけど、ギルバランは顔色を変えずにある程度血を流すと、短剣を再び懐に直して、傷口を手で押さえる。すると、驚く事にかなり溢れていた血が簡単に止まったのだ。


 そして、ギルバランが何をしたのかはわからないけど、流れ出たギルバランの血がグニャグニャと蠢き出した。あっという間に人のような形になったそれは、二足で立って僕を見ていた。まあ、目が無いので僕を見ているのかはわからないけど、僕の方を向いていた。


「お前たち人間が言う『気力』という力は、元々は我々が使っている力が元となっている。この世界に生きるもの全てに宿る力であるが、その中で使っていたのは我々のみだった。

 それを人間が扱えるようにしたものが、お前たちの言う『気力』というものだ。昔は私たちの名前からとって『鬼力』と言われていたが、鬼の名が入っているのを嫌がったのか、気が付けば変わっておったな」


 そんな人間の国の中では伝えられていないかなり重要な歴史のような話をするギルバラン。こいつは一体何歳なんだ? それに王という男が何故このような場所に1人なのか。色々と気にはなるけど……。


「その気の力を使えばこのような事も出来る」


 それが目の前の血で出来た人型ってわけか。こんなの国でも見た事が無い。


「お前にはこれからコレと戦ってもらう。強さはお前より少し強くした程度。だが、当然殺す気で行くから気を抜くなよ?」


 ギルバランがそういうと、血の人型の腕が鋭く尖って剣のようになった。そしてギルバランは僕に剣を投げてくるら、これを使えって事か。僕は地面に転がった剣を掴んで鞘から抜いて構える。


 ……ふぅ、復讐のためその対象である鬼の力を手に入れたんだ。なけなしとはいえ、ちっぽけなプライドも捨てたんだ。絶対に強くなってやる。

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