表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/47

営業妨害

・うっかりミスで一日遅れです。


・完全な悪役って難しいなぁ。

 ピロリロリ〜ン


「いらっしゃいませー」


 ちょうどレジを担当していた陽菜が挨拶をする。が、すぐにその客のおかしな様子に気が付いた。雰囲気が、ただの客とは訳が違う。この店は武器や魔法道具、ポーションなども取り扱っているので、冒険者や魔法使いなども出入りするのだが、それとはまた違った雰囲気だ。


「(他所の店のスパイでしょうか……。それとも、商業ギルドの回し者? 取り敢えずイオっち呼んでおきますか)」


 困った時の一桜葉頼み。本人の好意を無碍にする行為だが、そんなの陽菜に通用しない。同じ世界で生きていないのだ。


 ……そもそもここは異世界だが。


 呼ぶには、カウンターの下にあるスイッチをポチッと押すだけだ。


「(ポチッとな)」


 本来なら強盗などが現れた時の通報用のスイッチだが、ラファが少し仕掛けを弄り、各店員を呼べるようにしたのだ。


「ほいほい、どうした」


「あ、店長。新しいお客さんです」


 これの意味することは、『怪しいお客さんが入店してきた』だ。


 他にも、「〜の在庫がなくなりそうです」は『万引きしそうな客がいる』。「店内/店外の清掃お願いします」は『困った客を追い払え』。


 四人が普段、お互いに頼み事をする時は、もっと軽い口調で話すので、そうなのかそうでないのかはすぐに分かる。


 四人以外では伝わらないので、雇っているアルバイト達には教えていない。そのうち、もっと改良して教え込もうと思う。


「どうすればいい?」


「念の為、ラファ副店長の用意をお願いします」


「(そんな防犯グッズみたく……)」


 一応、この店ではオーナー兼店長を一桜葉、副店長をラファ、チーフを結奈、バイトリーダーを陽菜としている。そのうち、支店を沢山だすつもりだ。


 一桜葉は裏に周り、ラファを呼びに行く。


 途端、怒声が聞こえた。


 慌てて駆け寄る二人。先程の怪しげな客が、か弱い店員を怒鳴りつけている所だった。


 陽菜だ。


「一桜葉さん、抑えて。すぐに衛兵を呼びに行って下さい」


「……分かった」


 相手の実力が分からない以上、臨機応変に対応出来るラファの方が、この場にはうってつけだ。


「(悔しい……)」


 なんとかしたい気持ちを抑え、一桜葉は裏口から衛兵のいる詰所へと向かう。


「何事ですか」


「副店長……! そ、それが」


 咄嗟の演技に入った。こういう場合のことを考え、色々と打ち合わせしてある。


 話を聞くに、この店の商品が不良品だとのこと。


「すぐに交換させて頂きます。お代も結構です。それでよろしいでしょうか?」


「あ゛? その態度、気に食わねぇなァ」


「(これは……。最初からそのつもりでしたね)」


 どこの店の回し者かは知らないが、いわゆる営業妨害という奴だ。理不尽なイチャモンを付け、こちらが折れるまで帰らないつもりだろう。


「誠意っちューモンを見せろ! 誠意をォ!」


 誠意とは、馬鹿らしい。何が楽しくて、たかが営業妨害に誠意を見せなければならないのか。


「(イエスマンな日本人と言えど、ここは譲りませんからね……!)」


 いや、アンタそもそも日本人じゃないから。魔女だから。


「副店長、どうしましょう……」


 取り敢えず、他の客を結奈が保護する。雇ったバイトの子達も一緒だ。


「【収納(ストレージ)】」


 他の大事な商品たちが傷ついても困るので、亜空間にしまっておく。


 なんだなんだと焦るイチャモン男。営業妨害に来たくせに、度胸はないらしい。だいたい、一人で営業妨害に来るバカがいるだろうか。よっぽど自信があるのか……。この様子じゃ、そうとも思えないが。


「(いや、そもそも一人じゃない……? まさか! 別の場所に待機して……!? ッ、一桜葉さんが危ない!)」


 助けに行きたいが、この男を何とかしなければならなかった。それが今の役割りだ。


「(……どうすれば!)」


 魔法を使うとこちらの正当性が失われる。なんとも、もどかしかった。

・20時に『平穏日記』のメタ回を更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ