大魔王アオナ
・今週中に2話あげたいと言っていたのに申し訳ありません。
・しかも閑話です。
一方その頃、蒼奈は。
「合成実験、開始!」
ノーマルなスライムを両腕に抱えて、なんとか大きな鍋に入れる。この鍋はスライム合成機といい、スライムのモンスターカタログを開放したり、新種を開発したりしていたら、いつの間にか錬金術カタログで開放されていたアイテムである。アイテムをスライムと合成するとほぼ100%の確率で成功させてくれる壊れ性能だ。
そしてスライムを抱えるその姿は、たとえ幼児愛好者じゃなくともキュンとくるものがあるだろう。それだけ、蒼奈という人材は強い魅力を秘めていた。
どんな人種にも、果ては人外にまで好かれる存在。あらゆるものを惹き付ける『虜』という『第二の能力』を保持しているのは、周りは疎か本人さえ知らない事実である。
「何と合わせようかなぁ。餡子とかやってみようかな……。それとも既製の和菓子と合わせるとか?」
自身もソーダも大好物である和菓子を量産しようという目論見である。
「あ、蒸し器と合わせてスチームスライムってのも……。いや、スチームスライムは確かモンスターカタログで開放されてたな」
スチームスライムとは文字通り、ホットな水蒸気を放つスライムだ。ミストスライムという霧を噴き出すスライムの亜種と言われている。
「新種がいいなぁ」
その素直な気持ちは、スライムの限界というものをこの目で確かめたいという知的欲求である。元々の知識欲が周囲よりもずば抜けて高いので、一度玩具を見つけるとそれに首ったけになるので、扱う場合には手綱を握る技術を必要とされる。
……なにそれ、もう馬じゃん。下手したら馬よりじゃじゃ馬じゃん。
「そろそろ、ザーガィスト帝国も潰しておきたいなぁ……」
もう脳内で滅ぼすことは確定しているので、ザーガィスト帝国に逃げるすべはない。鎖国するとか平和主義を掲げるとかするならまだ何とかなるだろう。全面戦争なんて宣言した暁には、一桜葉曰く「この世で一番怒らせてはならない大魔王」が、降臨してしまう。ここは異世界で地球じゃないから問題ないんじゃないのか、とか思ったそこのあなた。よく覚えておきなさい、大魔王は魔法チートを得たんだ。これが何を意味するか、分かるね?
「あの? 大魔王、大魔王ってさっきからうるさいんだけど。そしてものすごく心外」
実際に大魔王として降臨したのは一度だけなのだが、その時は大層な被害が出た。
「別に、怒らせなければ良いだけの話なんだけど。一度だけ怒ったのも、理不尽な内容じゃないし」
大魔王の地雷はどこにあるか分からないので、対処のしようがない。もはや無差別だ。
「完全に無視ってどうなの? あ、思い付いちゃった」
ザーガィスト帝国を潰す戦力になり得るスライムを作るために混ぜ合わせるアイテムをずっと脳内で考えていたのだが、ようやく結論に至ったのだろう。
「ソーダとソルブ王に言っておかなきゃ」
着々と保護者と化していく面々。じゃじゃ馬だからね、仕方ないね。
・実はこのナレーターは蒼奈の中にいる多重人格の一人という裏設定があったり。蒼奈の独り言が多いのはそのためです。怖ぇ。




