地雷
ひとまず名乗り出ておきますか。クレアさんとは初対面ではないので、なんとかなるでしょう。
「あ、僕です、僕。ラファエルです」
「あぁ、『いちごだいふく』の……!」
クレアさんの頭の中ではもうそのイメージで固定らしい。
「クレア、誰?」
「あぁ、えっと、ラファエルさんよ。ほら、さっき話した、焚き火の精霊と契約した人」
「……オトハ。よろしく」
「改めまして、ラファエルです。よろしくお願いします。遠慮なくラファって呼んでください」
「……よろしく」
「オトハは、上位の精霊を何体も契約してるの。魔法の腕も相当なのよ」
「たしかに、先程の戦闘での魔法技術は素晴らしかったですね」
あれは凄まじかったです。もはや一種の芸術だと思います。
「お二人はどういうご関係なんですか?」
「まぁ、言うならば友達って奴かな」
「ん。友達」
やはりエルフでしたか。その割には、魔法技術が並大抵のエルフではありませんでしたから、恐らくハイエルフなどでしょう。
「先程の盗賊らしき方々は?」
「……レメンターナを荒らす賊の奴らよ。エルフは奴隷として価値があるし、森林の動植物も高値で売れるわ。レメンターナにしか生息しない希少な魔物なんかもいるし、それを狙う輩、って感じかな」
「あぁ、なるほど。いわゆる密猟者って奴ですか」
「そう。今回は奇跡的に被害はなかったけどね」
この辺りはそういう輩が多く居るみたいですね。拠点付近にも警戒しておかなければ。
「とりあえず僕は帰りますね。お腹を空かせたご主人様が待っているので」
「……それ、どういう状況?」
戸惑うのも無理はないですね。今、人としてかなりとち狂ったことを言った気がします。
……まぁ、僕は人じゃないんですけどね。
***
クレアと青年に別れを告げ、無事に拠点まで戻ってきた。
青年の名前、なんでしたっけ。元々記憶力が良い方ではないので、人の名前とか全然覚えられません。あ、思い出した。オトハさんでしたね。妙に日本人っぽい名前ですが、深く考えるのはやめときましょう。
「ただいま戻りました」
「おう。鶏肉は狩って来たか」
「多分これがニワトリっぽいんじゃないかな、と。コカトリスって奴ですね」
時空属性の魔法である『収納』からコカトリスを取り出す。
……あれ? コイツって狩っても良かったのでしょうか。まさかレメンターナの希少な魔物とかじゃないですよね?
まぁ、今度会ったら謝っておきますか。一体くらいならきっと許してくれるでしょう。『鑑定』の魔法では、『食用家畜が野生化したもの。近年、異常増殖が問題になっている』と出ていましたし。恐らく狩ってもセーフな奴でしょう。
「コカトリスには毒があるようですし、解体作業は僕がしますね」
「あら、そう。揚げ鶏にするつもりだったから、胸肉だけお願いね」
「了解です」
調味料なんかもダンジョンの機能で購入済みだそうです。やはりダンジョンの機能は便利なんてもんじゃないですね。元の世界でも一度だけ見たことがありますが、相変わらずの壊れっぷりです。
「いや、元の世界でダンジョン見る機会とかまずないからな?」
「それもそうですけど」
まだ皆さんと出会う前のお話ですね。母親のツテで見学しに行きました。
「あの頃はまだ家族と仲も良かったのですがね……」
「思わぬ地雷」




