宴会
・少し短いです。
ダンバト当日。
[残り五分以内に迷宮戦争を開始します]
「遂に始まっちゃった……」
初めてのダンマスらしいイベントかも。正直、これから殺し合いが始まるんだと思うと怖いし、やってらんないけど、腹くくるしかないよね。
[参加メンバーを表示します]
自分のメンバーと敵方のメンバーが表示されて行く。
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迷宮主:神人・赤崎蒼奈
従魔師:兎人・ミミたん
魔闘士:水龍人・ソーダ
治癒師:梟人・シロ
家政婦:シルキー・No name
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迷宮主:???・???
霊媒師:???・No name
祓魔師:???・No name
調薬師:???・No name
巨大骸骨:???・No name
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「なんか強そう!?」
死霊系の敵とも言えるエクソシストや、死霊系に関係なさそうなドクターがいるのにはツッコミたいけど、それは置いておこう。ドクターはヒーラーみたいな役割なのかも?
コアさん曰く、No nameが多いのは普通の事だそう。逆にほんの数日でバンバン名付けまくってる僕の方が異常とのこと。
「ギガ・スケルトン……」
ギガゾ〇ビみたいな。ギ〇ゾンビって名前は知ってるけどどんなだっけ? まぁいいや。
ダンマスの正体が分からないと何とも言えないが、このままだと負ける気がする。
「コアさん、ダンジョン・モンスターの強化方法について」
『撃破・撃退で得た経験値を割り振りましょう。ギルマスを何度か撃退しているので、たっぷりありますよ』
えー、そういうの早く言って欲しかった……。
という訳で、早速ステ振り。こんな感じになった。
アオナ:2→10 ミミたん:3→30 ソーダ:1→25 シロ:30→ サクラ:1→40
役割としては、僕とシロが後衛で、ソーダが前衛、ミミたんとサクラが中衛だ。
[迷宮戦争開始、三秒前]
やばっ、もう始まっちゃう。
「コアさん、行ってきます!」
『行ってらっしゃいませ。と言っても、私は音声でサポートしますけど』
「そうだっだね」
[迷宮戦争を開始します]
あー、遂に始まっちゃった。
目の前に敵が現れる。
え、まって。死神みたいな奴いる! 多分ダンマスだけど! めっちゃヤバそう! 一番強く見えるのは気のせいじゃないよね?
つかなにあのドクター!? 明らかにヤブ医者の方だよね!? 目がイッちゃってるよ!
え!? ギガ・スケルトン、デカすぎ!? 天井に届くんじゃない!? 墓場ステージだから天井なんてないけど! まさに巨人って感じ。
エクソシストは……、いた。アレか。まぁ、このメンツの中じゃ普通かな。見た目は普通にヒューマンだ。寧ろこんなメンツだから目立ってる。
ネクロマンサーは、まぁネクロマンサーだ。意味が分からないって? ヤバいって事だよ!
「――」(←敵のダンマス)
ぬぉぉぉ、ダンマスの威圧感パネェー!? これ詰んだよ。
お互いが睨み合い、牽制している中。真っ先に動いたのは――サクラだった。
「ふふ、容赦は致しませんよ?」
サクラやべぇ! どのくらいやべぇかと言うと、向こうのダンマスと同じくらい。やべぇの系統違うけど。
サクラの戦闘スタイルは、消えて現れて消えて現れて、陽動しまくってからの死角から攻撃、でもってこちら側に戻って来る。あと、基本は投げナイフによる攻撃だ。ただ、その技術が半端ない。
それに合わせて、敵も味方も動き出した。僕は僕のやるべき事をするとしよう。
「【HP表示】【MP表示】【魔力サークル・展開】」
皆がダメージを受けたりMPが減るのを表示して目視で確認、魔力サークルで僕からMPを讓渡させたり、シロに指示して回復させたりする。あとは、敵のHP・MP状況に応じて、味方にバフを掛けたり、敵にデバフ掛けたり、戦況に合わせて行動する。まさに臨機応変な対応を要される役割だ。
(ソーダ、ドクターが回復系スキル溜めてる。妨害よろ!)
(了解)
これ? 『念話』って言う魔法というか、スキルみたいな? ダンジョン・マスターはダンジョン・モンスターと『念話』でやり取りが出来る。感覚としては、メールみたいな感じかな? ボイスチャットの脳内版、みたいな。
(ミミたん、ネクロマンサーが霊を召喚した!)
(は、はいっ……!)
出て来た霊は、元の世界でも見た事がある。あれは水子だ。水子と言うのは、この世に産まれて間もない、または産まれもしなかった生命のことを言う(らしい)。僕は専門家という訳でもないので何とも言えないが、水子はあらゆる祟りを起こすらしい。頭痛から勉強嫌いまで起こすんだとか。いや、水子さん強過ぎでしょ。
対処法としては、例え産まれなかったからと言っても供養してあげる事だ。堕ろす人もいる世の中、これが中々難しい。が、そこはやはり一つの生命。しっかり供養して上げてほしいのだ。いや、割と強いんだ。これが。赤ん坊だから言葉は通じないし、泣き喚くし、水子として得た『力』をしっちゃかめっちゃかに振り撒くし。一度対峙した事があるのだが、もう疲れた。何度、赤崎家に伝わる秘伝の必殺技を使ってやろうと思ったことか。まぁ、コスパ悪過ぎてポンポン使えないんだけど。
(っ! サクラ! 後ろ!)
ギガ・スケルトンが、なんと自身の骨を投げたのだ。そしてそれはブーメランのように回転し、対峙していたサクラに当たりそうになる。投げた部位は肋骨辺りかな。あ、骨盤も投げた。そして自身がバランスを崩す。……何がしたかったんだ、一体。
まぁ、サクラはメンバーの中じゃ一番強い(はず)だから、流石に肋骨ブーメランは避ける。骨盤も避ける。避けるついでにギガ・スケルトンに追撃したりしてるし。なんだ、余裕じゃんか。
と、ここで真っ直ぐ僕を狙って来るヤツが一人。エクソシストか? いや、エクソシストは何もしていない。それどころかダンマスに恨みを抱えている? なんか、反抗期の子供を見ているような気分――これは既視感か。そんなものに駆られる。
ネクロマンサーの下僕か。これは――舐められてるな。こんな下級霊如きに赤崎神社の次期当主が負けるとでも?
「【浄化】」
これくらいの霊なら元の世界でも退治していた。もう少し時間は掛かっていたのだが。こちらの世界では詠唱一つとか、僕の今までの苦労は一体なんだったんだろうか。長ったらしい祝詞を述べ、神々の力を借り、漸く悪霊を成仏させるのが一日の精一杯。しかも僕は学生でもありながら永遠の子役でもあるので、休日と言える休日なんて年に数回あればいい方だ。
うっ……。今のを見てか、敵の攻撃が僕に集中し出した。ドクターとネクロマンサー、ダンマスさえも遠距離から魔法を放って来る。まぁ、その殆どはサクラが術式を破壊などして妨害しているので、僕に飛んで来るのはその一部なのだが。
ってか、サクラはギガ・スケルトンを相手しているのに、こちらの援護をする余裕があるようだ。なんかサクラが負ける姿が想像出来ない。
「【魔力防御壁】」
これは、魔力(MPとも言う)が続く限りシールドを張る魔法だ。僕のMPはレベルアップしてとんでもないことになっているので、大抵の魔法は無効化できる――そう、大規模じゃなければ。
……あっ、フラグだったかも。
その言葉がキーワードだったのか、ダンマスからイヤな瘴気みたいなのがシュワシュワと漂ってくる。
「っ……! サクラ!」
「ふふふ、ティータイムに致しましょう?」
……サクラは戦闘になると少し壊れる。あと、そのティータイムは毒入りのお茶が出て来そうな気がする。ヘタするとケーキにも混入されているかも。うん、参加したくないな。
「ソーダ、ミミたん! 一度戻って来て!」
サクラが敵の足止めをしている間に、こちらも大規模な魔法を放つことにする。
「術式はシロが組み立てて! 僕は魔力補給、ミミたんとソーダは護衛及びダンマスの妨害!」
ミミたんがスキル:影移動を駆使し、敵を陽動。そこにソーダの一撃必殺とサクラの投げナイフが飛ぶ。
シロが組み立てているのは、アンデッドの大敵とも言える浄化系統の最上級の魔法。これを使えば大抵の“穢れ”は浄化されると言う。
「うわ、めっちゃ魔力吸うね」
シロの組み立てと同時並行で魔力をチャージしつつ、メンバーの回復。
結構疲れるわ、これ。
「とっとと終わらせたいから、フラグはもう回収しないよ?」
なんだか決め台詞みたいだね。アニメとか漫画で言いそうな奴。にしてな何かダサいような。……こまけぇこたぁ良いんだよ!
「【永遠なる浄化】」
なんか詠唱ダセェな。ピュリファイって……。ここ、アニメとかだとバトルシーンで山場なんだけどな。
ダンマスから溢れていた瘴気が墓場から消え、太陽の光が差し込む。勝利するとこういう演出があるのか。なるほど。あ、WINNERってボイスメッセージが来た。
[迷宮戦争に勝利しました]
[迷宮核のレベルが上がります。1→2]
[迷宮主のレベルが上がります。10→11]
[迷宮核に、死霊属性(小)・闇属性(微)・影属性(微)が追加されます]
[各属性がランクアップしました。水属性(中)・氷属性(中)・聖属性(中)]
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あー、しんどい。情報量が多過ぎてこんがらがる。
「たっだいまー」
はー、疲れた。何もしてないだろって? いやいや、舐めてもらっちゃ困るな。僕は今回の作戦に必要不可欠なのだ。
まぁ、そこら辺はまた後日談でするとして……。
「そろそろクラス-3に通わないと、だよね」
設定上、僕はギルマスの部下の受付嬢の弟ってことになってる。一応16は成人に近くこの国では働けるので、血の気が引く程忙しいという追加設定もある。
もう三日か、四日か。多分、そのくらい通えてない。
「ま、今日はもう遅いし寝ますか」
その前に、勝利の宴があるそうだが、僕はあまりこういうの得意じゃない。昔から。
仕事の関係上、打ち合わせに付き合わなきゃならなかったり、最初の挨拶だけでも、なんて誘われていざ行ってみると寝落ちしちゃったり。あと、お酒が入った状態の大人ほど怖いものはない。
僕は絶対に飲まないって決めてる。まぁ、この体じゃ飲むのもあまり良くないかもしれない。
「酒は飲んでも呑まれるな、か」
皆も、お酒は程々にね! AONAとのお約束だよ!
うん、キャラブレが酷いな。演技にキレもなくなって来た。そっちの練習もしとかなきゃな……。
そう考えつつも、宴会に並ぶ料理に目を輝かせてしまうのだった。グーってお腹も鳴った。
……うん、生理現象だから。仕方ないんだから。お願い、ジト目で見ないで。
・誘われた宴会で必ず寝落ちするのは飲み物に睡眠薬を混入されている、という裏設定があります。一体、意識不明の間に何をされているのか……。それは――『のくたーんやで☆』みたいな事になるかもしれないですし、ならないかもしれないし……? これも、完結してから設定&裏設定として載せる事になる……かも!




