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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第七章 夏大、始まる。
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84th BASE

お読みいただきありがとうございます。


だんだん寒くなってきました。

最近は粉から作るココアに嵌り、作業のお供となっております。

「二回、ゼロに抑えるぞ!」

「おー!」


 キャッチャーの優築の掛け声がグラウンドにこだます。二回表が始まった。和久学園の攻撃は四番の島岡(しまおか)真祐(まゆ)からだ。


「よろしくお願いします」


 丁寧な口調でお辞儀を済ませ、真祐が右打席に入る。亀ヶ崎としては点を取った直後なので、この回はきっちりと抑えなければいけない。


(あの三番を差し置いて四番を打っているわけだから、この人もそれなりに実力はあるはず。まずは探りを入れるか)


 四番が相手ということで、優築は様子を見ながらのリードをする。初球はボールになるカーブで入ってみるも、真祐は誘いには乗ってこない。


 二球目は直球を選択。外角の惜しいところだったが、これもボールになる。

 三球目。ストレートを続け、今度はストライクを取った。真祐は三球連続で見逃す。


(これも振ってこなかったか。初回の攻撃を見る限り、どんどん打ってくるタイプが多そうな打線だけど、この人は違うのか? といってもどのみちここはカウントを整えておかなきゃならない。打たれたらその時はその時。空さん、これで行きましょう)

(分かった)


 優築のサインに空が頷く。ランナーはいないがセットポジションに入り、足を上げて四球目を投じる。


 初球と同じようなコースのカーブ。ただしさっきよりも高く、ストライクを入れにいった投球だ。これに真祐はバットを出してきた。ボールの落ち際をベース手前で捉え、三遊間にライナーを飛ばす。


「ショート!」

「はい!」


 ショートの風が左腕を伸ばして跳びつく。打球はグラブの中に収まった。その勢いに少々押され気味になりながらも、彼女はボールを溢すことなく着地を決める。


「ふう……」

「ナイキャッチ! 最高!」


 風に拍手を送る空。捕れていなければ長打になり、和久学園の大きな得点機に迎えるところだった。一度引き寄せた流れを、亀ヶ崎も簡単には手放さない。


「あー、残念……」


 和久学園のナインも揃って悔しそうな表情を見せる。その後もランナーは出ず、この回も三者凡退に終わった。


「さあ仕切り直して。この点差なら何とかなる。食らいついていくよ!」


 そう味方を鼓舞しながら、愛里が二イニング目のマウンドに上がる。初回に三点を失ったが、ここからの立て直しが期待される。


「サード!」

「オーライ」


 二回裏、ツーアウトランナー二塁。一番光毅の放ったゴロは、サードの青瀬(あおせ)吉乃(よしの)の前に転がる。吉乃はショートバウンドでボールを掴み、素早く一塁へ送球する。足の速い光毅だが余裕でアウトだ。


「おっしゃ。ナイスよっぴー」

「イエーイ。ああいう打球は任せんしゃい」


 愛里は吉乃とグラブを重ねて喜ぶ。和久学園の守りにもリズムが出てきた。


 それは攻撃にも好影響を与える。三回こそ無得点だったものの、四回表にチャンスが到来。一死から三番の愛里が初球を弾き返すと、左中間を割るツーベースとなった。和久学園にとって初めての安打が生まれる。


「ナイバッチ! 来た来た!」


 湧き上がる和久学園ベンチ。ここで打順は、四番の真祐に回る。


《四番ファースト、島岡さん》

「まゆしい頼んだよ。私を還して!」


 愛里の言葉に徐に頷き、真祐は足場を固めて打つ姿勢を取る。一点でも入れば、試合の流れは急激に和久学園の方に傾く。そんな気配が球場全体に漂っていた。


(嫌な展開になってきた。三点のリードはあるけれど、繋がれたら向こうを調子付かせてしまうかもしれない)


 優築はいち早く危機を察知する。彼女は一旦間を空けるべく、タイムを取ってマウンドに駆け寄る。


「空さん、ここなんですけど、打たれたらかなり厄介なことになると思います」

「分かってるよ。こういうチームってそれがあるからやりにくいんだよなあ……」


 はっきり言って和久学園は強いチームではない。本来の実力は圧倒的に亀ヶ崎の方が上だ。しかしここまで三対〇と大して差は付いていない。決して舐めてかかっているわけではないが、結果的に亀ヶ崎は弱小校にお付き合いしている形になっているのである。

 そしてこうした時にありがちなのが、ふとした一打を許して相手打線を波に乗らせてしまうこと。特に和久学園のように少人数で団結力の強いチームは、一度点火すると誰が投げても止められなくなるという可能性を秘めており、気付けば大量点を奪われていたなんてことも十分あり得る。そのような事態は是が非でも防がなければならない。それは空と優築も重々承知していた。


「けど逆に私たちが抑えたらさ、こっちにもチャンスが来るわけじゃん。それなら捻じ伏せるしかないでしょ」


 空に怖じける様子は無い。抑えて自分たちのチームに勢いを与える気満々である。それを見た優築の顔にはうっすらとだが、笑みが浮かぶ。


「ふふっ。ここでその発言が出るのは頼もしいですね。ではこのバッターを何としても打ち取りましょう」

「おう。命燃やして投げるよ!」


 バッテリーの話し合いが終わり、試合が再開される。優築はホームベース上の土を足で適当に掃ってから、キャッチャーボックスに座った。


(さあ、駆け引きを始めましょうか)




See you next base……


PLAYERFILE.29:島岡しまおか真祐(まゆ)


学年:高校三年生

誕生日:11/7

投/打:右/右

守備位置:一塁手

身長:159

好きな食べ物:辛いもの(唐辛子系)


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