7th BASE
お読みいただきありがとうございます。
明日から春の選抜甲子園が始まりますね!
高校野球はプロ野球とはまた違った魅力あり、非常に楽しみです。
スマホの画面に、《みつきさんと友達になりました》という文字が表示される。先ほど約束した通り、私は校門を出てすぐにある階段を上がった場所で、光毅さんと連絡先を交換した。
「オッケー。今後もし聞きたいことがあったら、気兼ねなく相談してよ」
「ありがとうございます」
「じゃあお疲れ」
光毅さんと風さんは自転車に跨り、私たちの前を過ぎ去っていく。電車通学の私たちは、徒歩で駅へと向かう。
「二人とも、本当に良かったの?」
歩いている途中、私は二人に切り出す。
「何が?」
「野球部に入ることだよ。今日は私が無理矢理参加させたわけだし、流されてるところもあるんじゃないかって思って……」
「あー、それはあるかもね」
祥ちゃんが澄ました顔で言う。
「ほら。だからよく考えてからでも」
「うーん……。でもよく考えた後でも、答えは変わらないと思うよ」
「え?」
「私はさ、人間ってどんな選択肢を選んでも、絶対に後悔すると思うんだよ。他の選択肢に行っていればもっと上手くいったんじゃないかって、もっと良い思いをできたんじゃないかって。選ばなかった方の選択肢を羨んで、憧れる。こんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、私もきっと後悔するんだ。野球部に入ったって、入らなくたって。今日少しでも野球をやってみたいと思ってしまった以上はね。だったらさ、できるだけ早く決断するに越したことはないじゃん」
祥ちゃんは頭の後ろで手を組み、空を見上げる。星は輝いているというより、あるのだけは分かるという模様を呈している。
「ま、これは中学校の先生が言ってたことの受け売りなんだけど」
祥ちゃんはあどけなく白い歯を見せる。ほんの少しだけ、私の心が軽くなる。
「ウチのことも気にしなくていいから。真裕と野球ができることが楽しみなのは本当。こうなる気がしてたとは言ったけど、それは決して諦めとかではないし、雰囲気に流されたとかでもない。私は真裕と一緒に、野球がしたいの」
京子ちゃんの表情はさっぱりとしている。先ほど感じた陰りは見当たらない。
「そっか。なら良かった」
私は安堵する。同時に胸の奥から、言葉では言い表せないほどの高揚感が湧き上がってきた。
「よし! じゃあ三人で頂点目指して頑張るぞー!」
私は天高く右手を突き上げる。祥ちゃんもそれに続く。
「おー! ……って、全国制覇ってこと⁉」
「うん。とりあえずはね」
「とりあえず?」
首を傾げる祥ちゃん。そう、私の目標は全国制覇で終わりではない。それに関して、京子ちゃんが代弁する。
「そういえば言ってなかったね。真裕の夢は、女子野球の日本代表として世界一になることなの」
「は⁉ 真裕それって冗談じゃ……ない?」
「うん。京子ちゃんの言った通りだよ。私はいつか、世界の舞台で優勝したいんだ」
「まじかよ……」
祥ちゃんは口と目をこれでもかというほどに開き、その場に固まる。驚くのも無理は無い。けれど私は本気だ。
「京子ちゃん、祥ちゃん、一緒に頑張ろ」
自然と出る飛び切りの笑顔。私の高校野球は、ここから始まる。夜空の星が一つだけ、華々しく煌いた――。
See you next base……
PLAYERFILE.7:城下風
学年:高校三年生
誕生日:5/12
投/打:右/右
守備位置:遊撃手
身長/体重:156/52
好きな食べ物:ショートケーキ、ショコラケーキ