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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第六章 夏大に向けて
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59th BASE

お読みいただきありがとうございます。


先日、人生で初めて四国に行ってきました。

二泊三日で四県を回るという弾丸ツアーでしたが、とても楽しかったです。

ベタな感想ですが、やっぱりうどんは一味違いましたね。

「センター」


 打球が右中間を破っていく。シートバッティングも三班目に順番が回っていた。因みに今打ったバッターは晴香さんだ。流石と言ったところか、レギュラー組の先輩たちの多くは、変化球を使われてもきちんと藤原さんの球に対応している。特に晴香さんや珠音さんは立て続けに長打を放っていた。


「いやー、それにしてもよう打つわ」


 マウンド上で額の汗を拭い、藤原さんは参りましたという表情を見せる。晴香さんと珠音さんに対しては他の人よりも力を入れて投げているみたいだったが、それでも打ち返す二人は本当に凄い。


「よろしくお願いします」


 続いて紗愛蘭ちゃんがバッターボックスに立つ。ここまでの二打席は前に飛ばすことはできているものの、いずれも凡退。最後の打席、厳しいかもしれないけどぜひ打ってほしい。私はそう願いながらレフトの守備に就く。


 初球、紗愛蘭ちゃんは空振りを喫する。遠目からなので確実には分からないが、球種はおそらくカーブだろう。速い球に意識があるからか、かなり体を前に出されたスイングになった。


 二球目も緩い球だったが、これは外れる。


 そして三球目。藤原さんは一転してストレートを投げていった。ここから見てもかなりの球速差があり、緩急が効いている。だが、紗愛蘭ちゃんはこれを打ち返す。


「ライト」


 ライナー性の打球がライト線に弾む。判定はフェアだ。守っていた洋子さんが懸命に追いかけるも、三人のランナーがホームインし、紗愛蘭ちゃんも三塁まで到達する。


「おお! ナイバッチ紗愛蘭ちゃん」

「ありがとう。けど偶々だよ」


 サードのカバーに入った私が一声掛けると、紗愛蘭ちゃんは謙遜しながらも嬉しそうに白い歯を溢す。彼女の中でも手応えがあったみたいだ。


「上手く打ったなあ。あの子一年生だよね? 綺麗なスイングしとるわ。夏大でも出られるでしょ」


 藤原さんも紗愛蘭ちゃんを称賛している。それだけ良いバッティングをしたということだろう。この時私は、紗愛蘭ちゃんのこの一打が後に大きな意味を持つであろうことを、漠然とだが察していた。


 それから残りの二人のバッターが打席に立ち、シートバッティングは終了。野手陣は内外野に分かれてのノック、私たち投手陣は投球練習に切り替わる。


「あ、ごめんなさい」


 投球がワンバウンドになり、祥ちゃんは帽子を取って謝る。話し合いの結果、ブルペンに入る順番は私と祥ちゃんが先、終わり次第三年生の二人と交代することになった。


「まだまだリリースポイントがばらばらだね。どの辺でボールを離したいか、自分の中で固まってる?」

「うーん……、正直はっきりとここだっていうのは分かってないです」

「そっか。野球始めて一ヵ月なんだっけ?」

「はい」

「ふむ。じゃあまずリリースポイントを定めていこうか」


 藤原さんは私たちのピッチングを観察し、気付いた点をアドバイスしてくれる。


「そんなに難しく考えなくて良いから、まずは同じフォームで投げ続ける感覚を掴もう。キャッチャーにミットを真ん中に構えてもらって、そこ目掛けて強い球を放るんだ」

「は、はい」


 祥ちゃんは藤原さんの指示通りに投げようとする。ところが、ボールが大きくすっぽ抜けてしまう。


「す、すみません」

「大丈夫。コントロールは気にしなくて良いよ。それより手で制球しようとせず、下半身を使って投げることを意識して」

「は、はい」

「キャッチャーの子も少し大変だけど、我慢してね」

「分かりました」


 祥ちゃんがもう一球投じる。今度はストライクゾーンに行く。


「うん。まだちょっと手投げだけど、リリースポイントは悪くなかったよ。とりあえずこの練習を続けてみよう。隆さんにも言われてると思うけど、焦らずじっくり慣れさせれば良いから。一年生なんだし、先は長いよ」

「はい。ありがとうございます」


 祥ちゃんは一礼して投球に戻る。藤原さんは「頑張って」と言うと、今度は私の方に目を移す。


「カーブ行きます」 


 私は気を散らさずに投げ続ける。その姿を、藤原さんは暫く黙って見守っていた。


「なるほどね」


 十球程度投げ終えたところで、藤原さんはそう呟いて何度か頷く。


「柳瀬だっけ? 一旦止めても良いかな?」

「あ、はい」

「隆さんが良いピッチャーが入ったって言ってたけど、それだけのことはあるね。どの球種も質がしっかりしてるし、コントロールも纏まってる。ずっと投手やってきたの?」

「はい。小学生の時から」

「ほう、道理で良い球が投げられるはずだ。可愛くて野球もできる。これは相当モテるんじゃないの?」

「い、いや、そんなことないですよ」


 私は困惑しながらはにかむ。お世辞で言っているのだろうが、思わず照れてしまった。


「所々直せそうな箇所があるんだけど、君の場合は夏の大会で投げなきゃいけないだろうし、フォームを弄るのは止めておこう。その代わりと言っては何だけど、投球術について一つ教えてあげるよ」

「おお。ありがとうございます」

「柳瀬はさ、投球間隔を気にしたことはあるかい?」

「一応あります。ランナーやバッターを焦らしたいですから」

「良いねえ。ならそういう時って、どういうタイミングで投げてる?」

「自分の気持ちが落ち着いたタイミングですね。心の中で「よし、勝負しよう」ってなった時です」

「ふむふむ……」


 私の回答に対し、藤原さんは微妙に腑に落ちていないような素振りを見せる。


「もちろん自分の間を作って投げることは大切だね。でもせっかく相手を焦らすためにやってるんだから、バッターの反応とかを見ながら投げた方が良いと思わないかい?」

「それはそうですけど……。そんなのできるんですか?」

「練習すればね。一度実践してみようか。耳で聞くだけじゃ限界があるし。柳瀬、バット持ってバッターボックスに立ってくれる?」

「は、はい」


 唐突な流れに戸惑いつつも、私は倉庫からバットを持ち出す。そうして、藤原さんに言われるがまま右打席に構えるのだった。



See you next base……

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