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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第三章 野球がしたい!
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31th BASE

お読みいただきありがとうございます。


パジャマ姿の女の子は大好物です。

《六組のさあらちゃんって分かる?》

踽々莉(くくり)のこと? あれ、さあらって読むんだ》


 学校から帰宅し、夕食と入浴を済ませた私は、居間のソファの上で体操座りをしながら椎葉君とメッセージのやりとりをしている。ここ数日で段々と夜の気温も上がってきており、長袖のパジャマだと(いささ)か暑いと感じるようになってきた。


《多分その子だと思う。どんな子?》

《話したことないから分からんけど、俺的には物静かなイメージ》

《ほうほう。他には?》


 メッセージを送信し、私は水玉パジャマの両袖を捲る。悩ませてしまったのか、返信が来るまでに数分掛かった。


《自己紹介の時、中学はソフトやってたって言ってた》

《気がする》

「え、そうなんだ。どうしてやめちゃったんだろう?」


 亀高は女子野球部こそあるものの、その一方でソフトボール部が無い。単純に考えれば、ソフト部が無かったからやめた、もしくは辞めたかったから敢えてソフト部の無い亀高を選んだかのどちらかだ。しかし今日の感じでは、どちらともと少し違っているように思える。紗愛蘭ちゃんはきっと、ソフトを続けたいという気持ちを持っている。けれどもそれを抑えている。ではその理由は一体何なのか。


「うーん……、怪我とかかなあ」


 私は首を傾げる。すると、椎葉君からもう一通メッセージが送られてきた。


《あいつがどうかしたの?》

「あー、そりゃ聞いてくるよね。せっかくだし、相談してみるかな」


 私は椎葉君に事情を説明する。


《それでまだ推測でしかないんけど、さあらちゃん野球やりたがってる気がするんだよね。どうしたら良いと思う?》

《柳瀬としては、あいつに野球部入ってほしい感じなの?》

《うん。やりたいと思ってるならぜひ!》


 また暫く間が空く。体勢が辛くなってきたので、私は抱えていた足を伸ばす。


《ふーん。それなら昼休みの時にでも、キャッチボールとかに誘ってみれば? それで上手く打ち解けられたら、入部のきっかけぐらいは作れるんじゃね?》

「はあ、なるほど。ありかも」


 良さげな案を貰い、私はスマホ越しに何度か頷く。


《それ採用! ありがとう》


 椎葉君にお礼の返信をする。ちょうどそのタイミングで、お父さんが仕事から帰ってきた。


「ただいま」

「あ、お父さん。おかえり」

「おかえりなさい」


 食卓で作業をしていたお母さんもそれに気付き、私と一緒に声を掛ける。お父さんは、ソファの後ろを通り過ぎようとする。


「ん?」

「どうしたの?」


 急に立ち止まったお父さん。振り返って尋ねると、妙に焦ったような表情をしている。「い、いや、何でもない……」


「ふーん」


 何か困ったことでもあったのかな。けど何でもないと言っているし、そこまで大したことではないのだろう。私は再びスマホの画面に目をやる。 


「よし、明日やってみよ。ふふっ」


 何はともあれ椎葉君に聞いてみて良かった。私は仄かな笑みを浮かべて立ち上がり、自分の部屋へと向かう。


「寝るわ。おやすみ」

「はい、おやすみ」 

「お、おやすみ……」


 お父さんは私を長々と見つめる。階段を上がっていく私の姿が見えなくなると、途端に頭を抱えた。


「お母さん、真裕が……、真裕が楽しそうに男と連絡取ってたよ。どうしよう……」

「いや、どうしたもこうしたもないから。高校生なんだし、男と連絡取るなんて普通のことでしょ」

「ええ……」


 気が気でない様子のお父さんを、お母さんが鼻であしらう。私はそんなやりとりがなされていることなど知らず、明日の朝練に備えて寝床に就くのだった。




 翌日の昼休み。私は早速、六組に訪問する。


「紗愛蘭ちゃーん」

「あ……」


 紗愛蘭ちゃんは友達四人で机を囲み、昼食の真っ最中だ。その中には“あっちゃん”もいたため私は一瞬怯んだが、紗愛蘭ちゃんはすんなりと席を立ち、こちらに来てくれた。


「どうしたの? えっと……」

「そういえば自己紹介してなかったね。私は柳瀬真裕。真裕で良いよ」

「そっか。それで真裕ちゃん、私に何か?」

「えへへ。紗愛蘭ちゃんと、二人でお話ししたいなと思って」

「私と?」

「うん」

「は、はあ……」 


 紗愛蘭ちゃんは少し気後れしたような顔をする。私は笑顔を保ちながら話を進める。


「こ、ここじゃなんだし、ご飯食べ終えてからで良いからさ、校舎裏に出てきてよ」


 不審な印象を与えてしまっただろうか。それでも紗愛蘭ちゃんは軽く相好を崩し、誘いに乗ってくれる。


「……良いよ。私はもうご飯食べ終わったし、いつでも行けるよ」

「ほんとに? じゃあ今から行こっか」

「分かった。ちょっと待ってて」


 紗愛蘭ちゃんは一旦自分の席に戻り、お弁当箱を片付ける。その間、私はふと椎葉君のことを探してみる。


「お、いたいた」


 椎葉君は反対側のドアの近くで、野球部の人たちと固まって座っていた。彼もこちらのことが分かったようなので、私は左頬の横で小さく手を振る。椎葉君は他の人と話していたためか、無表情で軽く手を上げて応えるだけ。もうちょっと手応えのある反応を示してもらいたいものだ。


「おまたせ」


 紗愛蘭ちゃんが支度を終えて戻ってくる。私は僅かに早歩きで、校舎裏へと向かった。



See you next base……



PLAYERFILE.18:柳瀬小雨(やなせこさめ)

続柄:真裕の父

職業:地方公務員

誕生日:2/15

投/打:右/右

身長/体重:173/68

好きな食べ物:イカ


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