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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第二章 初試合!
27/181

26th BASE

お読みいただきありがとうございます。


試合を描くのは中々体力を使います。

終わると生気が抜けたような顔してます(笑)

 男子野球部との試合が終了した。他の人たちがグラウンド整備に向かう中、私は優築さんとダウンを兼ねてキャッチボールを行う。


「真裕、これくらいの距離で良い?」

「あ、はい」


 左の掌には、未だに最後の椎葉君の打球を捕った感触が残っており、刺されたような痛みを発している。


 今日の私は二イニングを投げ、被安打四、被本塁打一で一失点。それと三奪三振だった。この内容を、どう受け取れば良いのだろう。率直な自分の感想としては、とにかく色々あった、という印象が強い。


 良い球もあったし、悪い球もあった。打たれもしたし、抑えもした。残念な思いもあるけれど、充足感もある。試合で投げる楽しさも再確認できた。そう考えてみると、実りのある登板だったと言える。でもだからこそ、最後の一球が消化不良なのだ。


 スピンの効いた良いボールだった。コースも良かった。もしかしたら、今日投げた中で一番だったかもしれない。それくらいの手応えがあった。

 けれど完璧に打たれた。アウトになったのは偶然。咄嗟に出したグラブにボールが入っただけ。目では打球を追えていなかった。


「ありがとうございました」

「いえ。ナイスピッチングだったわ。しっかりアイシングしておいてね」

「……はい。分かりました」


ダウンを終え、私は鞄から自前のアイシングを取り出す。一人で付けるのは難しいため、近くにいた同級生、西江(にしえ)ゆりちゃんに手伝ってもらう。


「よし。これでオッケー」

「ありがとう、ゆりちゃん」

「どいたま。真裕っちもナイスピッチング。次も期待してるよ」

「うん。頑張るよ」


 私の背中を軽く叩くゆりちゃん。彼女はいつも朗らかで、出会って数日だけれどとても話しやすい。


「真裕、今からブルペン整備するから、一緒に来て」

「はい」


 その後空さんに呼ばれ、私はブルペンの方に走っていく。そこでは、鍬を持った葛葉さんが待っていた。


「お、来た来た。ナイピッチだったね。お疲れさん」

「ありがとうございます」


 私ははにかみ、帽子の(つば)を触る。


 ナイスピッチング。周りはそう言ってくれる。その言葉を素直に受け取りたい。でも、それをできない自分がいる。声を掛けられる度、脳裏にフラッシュバックする最後の一球。あの一打が抜けていれば、私は負け投手となっていた。


「あ、水が無くなった」

「それなら私、行ってきます」

「そう? じゃあお願い」


 ブルペンに()いていた水が切れる。私は空さんから如雨露(じょうろ)を受け取り、グラウンドの外にある手洗い場で補給する。


 蛇口を捻ると、透明な水が細々と流れ出す。ここはいくつかの蛇口が並んでいるが、どれも水の通りが悪く、全開まで回しても出る量は高が知れている。私は如雨露をその場に置き、頬杖をついて行く末を見守る。そこへ、右横に誰かがやってきて、隣の蛇口から水を出し始めた。

 私は反射的に振り向く。見覚えのある男子の顔が、私の目に映る。


「……って、ええ⁉」


 びっくりした私は変な声を上げてしまい、慌てて口を塞ぐ。目の前に立っていたのは、あの椎葉君だった。



See you next base……



WORDFILE.9:守備のタイム


 主に一呼吸置いたり、作戦を確認したりするために行われる。捕手を含めた二人以上の野手、または伝令や監督・コーチがマウンドに集まった時点で一回とカウントされ、一試合を通して三回まで許されている(選手交代の場合はカウントされない)。

 プロ野球等では、一人の投手に対して一イニングで二回、監督及びコーチがファウルラインを越えてマウンドに行った場合は投手の交代を宣告しなければならない。

 またタイム時に野手陣がグラブで口元を隠しながら話すのは、読唇術で相手に会話の内容を悟られないようにするため。因みに若かりし頃のドラらんはその仕草に憧れており、自分がやる際に頑張ってかっこつけていたことは公然の秘密である。


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