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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第一章 野球女子!
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1st BASE

お読みいただきありがとうございます。


初めまして、ドラらんと申します。

本日より女子野球をテーマにした作品を書かせていただきます。


自分の好きなものを存分に詰め込んだ作品です。

野球を知っている人も知らない人も、できるだけたくさんの方に読んでいただけたら幸いです。


よろしくお願いいたします。

 ――新たな芽吹きの季節。私は弾む心臓の音と共に、目を覚ます。アラームにセットした時間より少し早いが、私はベッドから起き上がり、スマホのメッセージを確認する。


「明日は八時に迎えに行くね……って、京子きょうこちゃんってば、夜中の三時に送ってきてるよ。流石に寝てるから」


 メッセージを読んだ私は小さく苦笑いを浮かべ、返信する。


真裕まひろ、そろそろ起きなくていいの? 遅刻しちゃうんじゃない?」

「大丈夫、もう起きてる」


 下の階からお母さんの声が聞こえてくる。それに反応し、私は壁にかけられた制服の前に立った。


「いよいよ始まるんだね」


 期待に胸を膨らませつつ、私は制服に手を掛ける。別に制服で学校を選んだわけではないけれど、初めて袖を通す高校の制服は非常に魅力的で、ときめきが止まらないものだ。普段の着替えに比べて少々手間取りながらも、私は制服を着終え、お母さんたちのいる一階へと降りる。


「おはよう」

「おはよう」

「お兄ちゃんは?」

「まだ寝てる。新学期の授業は来週からなんだとさ」


 お母さんは仕事に向かうための化粧をしていた。私の家は両親共働きで、二人揃って家を出る時間は早い。


「ごめんね、今日の入学式行けなくて」

「いいよそんなの。私ももう高校生なんだし。お兄ちゃんは文句言ってたけどね。何で俺の時は付いてきたのに、私の時は付いていかないんだ、俺だけ恥ずかしい思いをしたじゃないかってね」

「え、そんなこと言ってたの? ひどいなあ。いいじゃんそれくらい。親はいくつになったって、子どもの晴れ舞台は見たいもんなんだから」


 お母さんは口を尖らせる。ちょっと子どもっぽい人だけれど、そういうところが私は好きだ。


「おお! 真裕が制服に着替えてるじゃないか! 可愛いぞ」


 スーツ姿で居間に出てきたお父さん。お父さんは私を見るや否や、蒸かしたてのサツマイモのような笑顔をして頭を撫でてくる。


「あーもうお父さんってば、そういうのやめてよ」


 私はお父さんの手をどける。


「悲しいこと言うなよ。昔は喜んでくれたじゃないか」

「昔は昔。今は今!」

「ちぇ……」


 優しくて楽しいお父さんだけれど、こうした親ばかなところは玉に瑕だ。……いや、娘が高校生ともなれば、大きな欠点と言って良い。


「あ、やばい。そろそろ家出ないと」


 お父さんが時計を確認する。時刻は七時前を指していた。


「じゃあ行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃい」


 お父さんがお母さんとキスを交わす。傍から見たら華やかな光景なのかもしれないが、見慣れ過ぎてしまってもはや何も感じない。


「いいか真裕、高校生になったからって、変な男に引っかかるんじゃないぞ」

「余計なお世話だよ!」


 キスを終えたお父さんは私にそう言い残すと、足早に家を後にした。


「まったく、何なのあの人は」

「ふふふ。お父さんもお母さんと同じで、真裕のことが大好きなの」

「はいはい」


 お母さんは柔和に微笑む。私は背中がむず痒くなるのを感じながら、呆れ顔をする。


「あ、朝食のおかずは台所に置いてあるから、ご飯自分で注いで食べてね」

「了解」


 台所には、ラップの被せられた鮭の塩焼きと、鍋に入った味噌汁が用意されている。私は食器棚から取り出した茶碗にご飯をよそうと、おかずと共に食卓へ運び、お母さんの向かい側に座った。


「いただきます」


 別段変わった朝食のメニューでもないのに、今日は全く違った味わいがする。まるで駅前のサーティーンアイスクリームのポッピンサニー味を食べた時のような、爽やかな快感が身体に流れていく。それほどまでに、今の私の心は踊っていた。


「真裕、お母さんももう行くから。もしも真裕が家を出る時間になってもお兄ちゃんが起きてこなかったら、念のため戸締りをしておいて」

「分かった。行ってらっしゃい」

「行ってきます。真裕も気を付けてね」


 お母さんが出ていった後、朝食を食べ終えた私は残りの支度をすませる。ショートヘアの前髪を、猫のついたお気に入りのピンでばっちり留め、京子ちゃんが迎えに来るのを待つ。家の時計が八時五分前を示したところで、家のベルが鳴った。


「あ、京子ちゃんかな」


 私はインターフォンを取る。


《えへへ、私京子ちゃん。今あなたの家の前にいるの》

「あーそういうのいいから。今行くね」

《え、ちょっと……》


 京子ちゃんによるメリーの電話のネタを軽くあしらい、私は外に出る。


 高校生活の、第一歩を踏んだ。



See you next base……


PLAYERFILE.1:柳瀬真裕(やなせまひろ)

学年:高校一年生

誕生日:4/22

投/打:右/右

守備位置:投手

身長/体重:157/54

好きな食べ物:サーティーンアイスクリーム(ポッピンサニー味)


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― 新着の感想 ―
[良い点] twitterから来ました! 私はスポーツものってあまり読んだことがないので、新鮮です。 文章もとても読みやすくて良いと思いました。 続けて読ませて頂きます。 [一言] 頑張る女の子って良…
2021/11/04 02:21 退会済み
管理
[良い点] 野球×女の子 ベタですがじつに良く纏まっていて読みやすかったです! これからも応援しております!
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