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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第二章 初試合!
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16th BASE

お読みいただきありがとうございます。


今回から試合に入ります。やっとです(笑)。

普段とはまた違った様相になるので、その辺りもお楽しみください!

 雲一つ無い快晴の下、白球が飛び交う。本日、真裕たち亀ヶ崎高校女子野球部は、同じ亀ヶ崎の男子野球部一年生と練習試合を行う。彼女たちは試合用のユニフォームに身を包み、ウォーミングアップに取り組んでいた。


「そろそろ戻りましょうか、バック!」


 主将の糸地晴香の指示に従い、ベンチ前に選手の輪ができる。晴香は手元のメンバー表を読み上げ、スターティングオーダーを発表する。


「一番セカンド、光毅」

「はい!」


 ブルペンで調整中のバッテリーを除き、呼ばれた者は大きな声で返事をしていく。真裕たち一年生の名前は出てこず、まずは全員がベンチで戦況を見守る立場となる。スタメンの確認を終えると、監督の木場隆浯が前に立ち、選手たちに発破を掛ける。


「今日は新メンバーを迎えて最初の試合だ。しかし普段の試合とやることは変わらない。チームが勝つために自分がその場で何をすべきなのか、それを考えながらプレーしてくれ。それと各々、この試合の中での課題を設定して、失敗してもいいから貪欲に挑戦していってほしい。一年生は先輩たちのプレーを観察して学ぶと共に、自分だったらどうするかを考えながら試合を見るんだ。良いな?」

「はい!」

「俺からは以上だ。準備が整ったらすぐにノックに入るぞ」

「はい!」


 隆浯はノックバットを手にする。晴香たちはノックに移る前に、全員で気合を入れる。


「今日も全員で一丸となって戦いましょう。亀高行くぞー!」

「おー!」


 皆それぞれのポジションに散っていく。投手である真裕はノックには参加せず、ノッカーへのボール渡しを手伝う。そんな彼女に、隆浯が軽く素振りを行いながら一声掛ける。


「真裕」

「はい」

「お前には八回から投げてもらう予定だ。そのつもりで準備しておくように」

「分かりました」


 僅かに表情を緩ませて頷く真裕。女子野球は基本七イニング制だが、今回は男子野球に合わせて九イニングで行われる。


 両チームが試合前のノックを終え、いよいよ試合開始となる。選手たちがホームベースを介して整列する。


「それではただいまより、男子野球部一年生対女子野球部の試合を始めます。礼!」

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」


 透き通った声と野太い声が混じり合う。野球をやっている者から見れば、少し奇妙な光景だ。


 女子野球部は先攻。ベンチに戻って攻撃前の円陣を組み、男子野球部の先発ピッチャーに目をやる。


「先発、椎葉(しいば)君じゃないんだよね。そりゃあうち相手に、将来のエースなんて出してこないか」


 空が意地の悪い声で言う。マウンド上にいたのは大型ルーキーの椎葉(たけし)ではなく、背の低い右投手、高木(たかぎ)だった。


「甘く見られたものね。それならこっちからどんどん仕掛けて、椎葉君を引きずり出してやりましょう!」

「おー!」


 高木の投球練習が終わった。女子野球部の一番バッター、戸鞠光毅が右打席に立つ。


「お願いします!」


 審判に挨拶し、光毅は足場を均す。その後バットの先で一度ホームベースを叩いてから、構えに入る。


「プレイ!」

 試合が始まった。キャッチャーのサインに頷いた高木が、ノーワインドアップから一球目を投じる。


「ストライク!」


 アウトコース低めにストレートが決まる。


「結構速いな」


 ベンチで見ていた真裕は率直な印象を述べる。見たところ、初球の球速は一二〇キロ前後。椎葉丈の一四〇キロには程遠いが、女子野球に換算すればプロ並みの速さである。


「ふむ、なるほど」


 光毅はバッターボックスから片足を外し、三塁ベンチのサインを覗う。先頭打者ということもあり、何のサインも出ていない。彼女は一球目と同様、バットの先でベースを軽く叩き、構え直す。


 二球目。またもストレート。さっきよりはやや内側に入ってきた。光毅は積極的にバットを出し、芯で捉える。


「しゃあ!」


 快音を残した打球はピッチャーの足元を抜けて転がっていく。センター前へのヒットだ。


「ナイバッチ!」


 女子野球部ベンチから声が上がる。早くもチャンスが巡ってきた。


「おー! あの球を二球で捉えるなんて」


 真裕が目を見張る。すると隣にいた二年生、外羽杏玖は得意気に微笑む。


「ふふ、一応速い球の対策は練習でやってるからね。これくらいなら対応できるよ」

「え、そうなんですか。凄い!」

「うん。けど、光毅さんの見せ場はここからだから」


 杏玖は一塁ベースに視線を向ける。その先では、光毅が小さく拳を握っていた。次のバッターである城下風が打席に入ると、光毅は素早くリードを取り始める。


(さてと、ひとっ走り付き合ってもらうよ)


 高木がセットポジションに入る。光毅は、その足元を注視する。


 風への初球、ストレートがアウトコースに外れてワンボールとなる。光毅は一旦ベースに戻ると、相手に分からないように口角を持ち上げた。隆浯からのサインに目を通し、再び彼女はリードを取る。


 二球目。高木は足を大きく上げて投球モーションを起こす。それと同時に、光毅は二塁に向かって走り出した。


「えっ、まじ⁉」


 しまったという顔をする高木だったが、時すでに遅し。投球を受けたキャッチャーも二塁に投げることができず、光毅は楽々と盗塁を成功させる。


「ナイスラン!」

「イエーイ!」


 してやったりの光毅。試合開始早々から、彼女のユニフォームは真っ黒に染まる。


 この後風が送りバントを決めてチャンスを広げる。ワンナウトランナー三塁となり、打順は三番の晴香に回る。


「晴香さん、先制点お願いします!」


 仲間の声援を受けて打席に入った晴香は、マウンド上の高木に鋭い眼光をぶつける。委縮してしまったのか、高木は一球目、二球目とストライクゾーンから大きく外す。

 カウントはツーボールノーストライク。バッターにとっては絶好のバッティングカウントだ。晴香は集中力を高める。


「ふう……」


 彼女の吐息が空気に溶け込んでいく中、迎えた三球目。ストレートが真ん中に入ってきた。晴香がそれを弾き返す。


「おお!」


 打球はレフトの前に落ちる。サードランナーの光毅はそれを見て走り出し、ゆっくりとホームベースを踏む。


「やったー! いきなり点が入った!」


 真裕は喜びの声と共に、ベンチに戻ってきた光毅を出迎える。


「光毅さん、ナイススタートでしたね」

「ありがと。ていうか相手さん、無警戒過ぎだよ。モーションも大きかったし、舐められてるみたいだからひと泡吹かせてあげた」


 光毅は意気揚々と白い歯を溢す。ヘルメットから見え隠れするポニーテールも愉快気だ。


 上位打線の活躍により、女子野球部は初回から先制点を奪う。幸先の良いスタートとなった。




See you next base……


STARTING LINEUP


女子野球部

1.戸鞠 光毅  右/右  セカンド

2.城下 風   右/右  ショート

3.糸地 晴香  右/右  センター

4.宮河 玲雄  右/左  レフト

5.紅峰 珠音  右/右  ファースト

6.外羽 杏玖  右/右  サード

7.天寺 空   左/左  ピッチャー

8.桐生 優築  右/右  キャッチャー

9.増川 洋子  右/右  ライト


男子野球部

1.宮藤 碧来  右/左  セカンド

2.真田 健人  右/右  ショート

3.四ノ宮 辰月 右/右  ファースト

4.北条 巧   右/右  サード

5.中川 啓示  右/右  ライト

6.勝俣 了   右/左  レフト

7.坂田 蓮   右/右  センター

8.小谷 勇輝  右/右  キャッチャー

9.高木 透也  右/右  ピッチャー


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