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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第十二章 上手くなりたい!
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163th BASE

お読みいただきありがとうございます。


先日は今年初の台風が襲来しましたね。

世間では「ほんとに来てるの?」と言われてましたが、私の家の周りではちゃんと?猛威を振るっていました。

近年の大型なものに慣れすぎてほとんど怖さは感じませんでしたが(笑)

 週明け。月曜日の休みを挟み、火曜日からまた練習が始まった。私は土曜日に控えた東海大会に向けて調整を進める。楽師館戦ではスライダーを手応え良く投げられていたので、この感触を忘れないようにしたい。


「次、カーブ行きます」


 私の隣では祥ちゃんが投球練習を行っている。新チームになってから長くもがいている彼女だが、先日の試合後には投手に対する熱い想いが聞けた。まだまだ課題は多いけれど、あれだけの覚悟を持って努力し続けられるのなら、いつか花を咲かせてくれるだろう。祥ちゃんの今後には大いに期待だ。




 練習が終わり、今日はこれから背番号が配布される。私たちは監督の元に集合すると、横二列に並んで腰を下ろす。


「それではこれから東海大会のメンバーを発表していく。呼ばれた者は順にこちらへと出てきてくれ」

「はい!」


 今回の大会では二〇人までベンチ入りができる。私たち亀高野球部は現状十六人。したがって全員が大会に出場できることになる。そのためか、夏大の時ほどの張り詰めた空気は流れていない。


 それでも多少なりとも緊張感はあった。特に背番号一、つまりエースになれるかどうかは最初に発表されるので、既に私の心臓は強い鼓動を打っている。


「ではまずは背番号一、柳瀬真裕」

「は、はい」


 案外あっさりと名前を呼ばれた。私は若干拍子抜けしつつ立ち上がり、前に出る。


「夏大が終わってからここまで立派に投げてきてくれたな。この大会が、お前のエースとしての第一歩だ」

「はい。ありがとうございます」


 私は監督から背番号を受け取る。そこにはしっかりと「1」の文字が刻まれている。不意に嬉しさと使命感が込み上げ、私は背番号の端を堅く握りしめて元の位置に戻る。


「……背番号六、陽田京子」

「はい」


 この後順々にメンバー発表がされる。六番のところでは、京子ちゃんの名前が読み上げられる。


「京子、お前は練習試合できっちり結果を出してくれた。風の後釜は大変かもしれないが、お前ならやれると信じてるぞ」

「あ、ありがとうございます」


 京子ちゃんはショートのレギュラーの座を掴み取ったのだ。戻ってきて隣に座った彼女に、私はグータッチを要求する。


「ふふっ、やったね京子ちゃん。一緒に頑張ろうね」

「うん」


 互いの右拳がぶつかり、小さな音を立てる。私が投げて、その後ろを京子ちゃんが守る。入部の時から抱いていた細やかな願望が、早くも実現しそうだ。


「……背番号九、踽々莉紗愛蘭」


 ライトのレギュラーには紗愛蘭ちゃんが入る。こちらは順当と言えるだろう。


「……背番号十一、笠ヶ原祥」


 また、祥ちゃんは十一番を貰った。できることならこの大会のどこかで、自信を深められる機会が巡ってきてほしい。


「……以上十六名、東海大会はこのメンバーで戦うことになる」


 十六人全員の背番号発表が終わった。監督は漏れている人がいないか確認すると、改めて大会への意気込みを語る。


「新チームになってから初めての大会だ。一応背番号は登録しているが、チームの骨格はまだそこまで固まっているわけじゃない。だから大会の中でも色々と試していくことになると思う。一桁ではない者にも流動的に出番が回ってくることになるだろう。反対に一桁の者でもスタメン以外の役回りを務めてもらうことになるかもしれない。各人そのことをよく理解して、どんな場面でも役割を果たせるように準備を怠らないでほしい。良いな?」

「はい!」

「よし。では今日は終わろう」

「ありがとうございました!」


 私たちは締めの挨拶をし、解散となる。こうして東海大会のメンバーが出揃った。社会人チームが混ざっているとはいえ、目標は優勝。全員野球で勝ち進んでいきたい。




 迎えた土曜日。本日より東海大会が始まり、私たちは教知大学と対戦する。


「抜けた! 回れ回れ!」


 初回、一番の紗愛蘭ちゃんのヒットを皮切りに、三連打で一点を先制する。更に五番の逢依さんにもタイムリーが飛び出し、私たち亀高はいきなり三点のリードを奪う。


「ストライク、バッターアウト」


 先発投手は私が務める。点を入れてもらった一回表は、二者連続三振を含む三者凡退で切り抜ける。


 二回以降も私たちは得点を重ねた。紗愛ちゃんと京子ちゃんは揃って猛打賞を達成。この二人の活躍もあり、五回表を終える時点で八対〇まで点差が開く。


「バッターアウト、チェンジ」


 五回裏。私は空振り三振でスリーアウト目を取り、これにてお役御免となる。五イニングを投げて被安打三の無失点。奪三振は十個だった。二桁に乗ったのは高校に入って初なので、ちょっぴり嬉しい。


「ナイスピッチ。流石だね」

「ありがとう。祥ちゃんも頑張ってね」


 六回裏のマウンドに上がるのは祥ちゃん。私は有事に備えてレフトの守備に回る。


「ショート」

「オーライ」


 高く上がったフライを、京子ちゃんが周りを制して捕球する。これで攻守交替。祥ちゃんは四球を二つ出すも、得点を許さずに一イニングを投げ切る。大量リードにも守られ、臆することなく腕を振れているように見えた。


「ナイスピッチ! よく粘ったね」

「えへへ、ありがとうございます!」


 マウンドから引き揚げてきた祥ちゃんを、ベンチの皆が総出で迎える。ハイタッチを交わす祥ちゃんの顔に笑顔が弾ける。これで少しは、彼女が苦闘している恐怖も和らいだことだろうか。


「アウト。ゲームセット」


 七回表にも四点を加え、その裏は美輝さんが三人で締めて試合終了。私たちは十二対〇で教知大学を下し、二回戦へと駒を進めた。そして今大会の大一番、挙母レッドオルカとの一戦がやってくる。



See you next base……



★東海大会における主な選手の背番号


1.柳瀬真裕(1年、投手)

2.桐生優築(2年、捕手)

3.紅峰珠音(2年、一塁手)

4.江岬愛(2年、二塁手)

5.外羽杏玖(2年、三塁手、主将)

6.陽田京子(1年、遊撃手)

7.琉垣逢依(2年、左翼手)

8.増川洋子(2年、中堅手)

9.踽々莉紗愛蘭(1年、右翼手)

10.波多美輝(2年、投手、内野手)

11.笠ヶ原祥(1年、投手)

12.北本菜々花(1年、捕手)

15.西江ゆり(1年、外野手)


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