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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第一章 野球女子!
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15th BASE

お読みいただきありがとうございます。


お気づきの方もいるかもしれませんが、タイトルに野球ボールを入れました。

一応これが正規の表記となります。文字化けしてしまうサイトもあるので、使い方には注意が必要です(笑)。

 入部してから数日が経ち、男子野球部との練習試合は明日に迫っていた。太陽が西に傾き、淡い黄金色が遠くに浮かび上がる。そんな空模様の下、私は今日も女子野球部の活動で汗を流している。


「ラスト、真っ直ぐ!」


 右打者の外角低めを目掛け、全力のストレートを投じる。指にかかったボールがキャッチャーミットに吸い込まれる。私はブルペンで軽めの投げ込みを行い、明日の試合に向けて調整していた。


「ありがとう菜々花(ななか)ちゃん」

「どういたしまして。最後まで良い感じで投げられてるね。明日もこの調子で頑張って」

「うん、頑張るよ」


 ボールを受けてもらった同級生の北本(きたもと)菜々花ちゃんと少し言葉を交わし、私は全体練習に合流する。


「それじゃシートノックやるぞ。ピッチャーも入れよ」

「はい!」


 私と空さん、葛葉さんの三人がマウンドに登る。他のメンバーも各ポジションに就き、シートノックの準備が整う。


「ランナー無し!」

「ランナー無し!」


 キャッチャーからの声を全員で復唱し、私たちは状況設定を確認する。そうしてノッカーを務める監督がランダムにノックを打ち始めた。一球毎にどこへ打球が飛ぶか分からないので、常に自分の動きを頭に入れ、臨機応変に対応する必要がある。


「ファースト!」


 例えばファースト方向に打球が飛んだ時。ピッチャーは一塁ベースのカバーに行かなければならない。打球を捕ったファーストが自分でベースを踏むことができれば問題無いが、距離があって間に合わないこともある。その場合はピッチャーが代わりに一塁ベースをケアするのだ。ただ、これが案外難しい。


「あ、すみません」


 私はファーストからトスされたボールを取り損ねてしまう。走りながらボールを捕るので距離感が掴みにくい上、ベースを踏むことも考えなければならない。ボールがベース上から僅かに逸れただけでもミスの可能性が大きくなる。


「二人とも息が合ってない。どうしてか確認しておけよ! ミスした後が大事だぞ」


 監督から大きな声が飛ぶ。監督は私たちがミスをすると怒鳴ることはしないが、当事者を一度ノックから外して原因を考えさせる。


「すみません、私がちゃんと捕っていれば」

「いや、私もボールが内側に逸れちゃったからね。次はベースの上に投げるよ」


 私たちは互いに改善点を指摘してプレーに戻る。シートノック中にこうした意思疎通を図ることは中学までしていなかった。しかしこれをすることにより、その後のプレーに取り組みやすくなる。


「ファースト、もう一回!」


 再び同じような打球が飛ぶ。今度はファーストが投げやすくなるよう、私は一歩でも早く一塁ベースに向かう。


「オッケー、ナイスボールです」


 ボールはしっかりとベース上に投げられ、私もキャッチすることができた。


「ナイスプレー。次行くぞ」


 監督にも声を掛けられ、私は心の中で安堵する。ミスの後が大切だと監督は言ったが、まさにその通りだと思う。ミスが続けばどんどん身体が委縮し、更にミスを重ねるという悪循環に陥りやすい。できるだけ早く良いプレーをして悪いイメージを払拭し、次のプレーに快く向かうという意味でも、ミスした直後のプレーはとても重要になると言える。


「ノーアウト二塁、一塁!」

「ノーアウト二塁、一塁!」


 順々にシチュエーションが変わっていき、シートノックが(こな)されていく。明日は試合といっても練習試合のためか、チームに特別な緊張感は流れていない。


 けれども、私は密かに胸を躍らせていた。いくら練習試合、しかも対戦相手が男子野球部一年生といっても、私にとってはこのチームで初めての試合となる。先輩たちがどんなプレーをするのか、自分にどんなピッチングが出来るのか、楽しみで仕方が無い。自分では分からないが、おそらく今日の私は一段と声が弾んでおり、動きも軽やかなことだろう。


「ショート行ったよ、ゲッツー!」


 シートノックは続く。夕暮れ時、群青(ぐんじょう)色の見え始めた空に、甲高い私の声が幾度となく溶けていった。



See you next base……


PLAYERFILE.13:宮河(みやかわ)玲雄(れお)

学年:高校三年生

誕生日:11/26

投/打:右/左

守備位置:左翼手

身長/体重:163/55

好きな食べ物:おでん(特に大根)


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