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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第九章 想いを繋いで
118/181

116th BASE

お読みいただきありがとうございます。


先日は友人の結婚式に参加してきました。

自分たちがもうそういう歳になったということを痛感させられましたね。

ただ私の場合は全く目途が立っていませんが……(泣)

《二回裏、奥州大学付属高校の攻撃は、六番レフト、中村さん》


 この回の先頭バッター、六番の中村が左打席に入る。その初球、真裕はアウトコースのストレートでストライクを取る。


(小山のことを変に意識し過ぎてないか心配だったけど、今のボールを受ける限りそれは大丈夫そうね。ならここからは、真裕のいつものペースで投げてもらおう)


 二球目、優築はカーブを要求する。これも真裕はストライクゾーンに投げ込み、すんなりと中村を追い込む。


 内角へのボール球を一球挟み、続く四球目、真裕は低めにツーシームを投じる。中村は手を出すも芯を外され、平凡なゴロがセカンドの光毅の元へ転がる。


「オーライ」


 光毅が危なげなく打球を処理し、一塁をアウトにする。まずはワンナウト目を取った。


「ナイスピッチ。良い感じだよ」

「はい」


 これで真裕はリズムに乗る。続く七番の山下も打ち取ると、八番の白間に対してはツーシームでファールを打たせ、三球で追い込む。


 四球目はアウトコースのカーブ。ストライクゾーンの外へと逃げていく球だったが、白間はバットを止めることができず、サードゴロに打ち取られる。嫌な流れをもろともせず、真裕は三者凡退で片付けた。沸騰しかけていた球場の騒めきも、ひとまずは沈静化する。


(へえ、やるじゃん。けど、その投球がいつまで続くかな。次の回の対決、楽しみにしてるよ)


 ネクストバッターズサークルにいた舞泉は、白間がアウトになったのを見届け、何も言わずにベンチへ引き返す。ただその顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。


 攻守が入れ替わり、三回表の亀ヶ崎の攻撃に移る。この回は三番の晴香から。風は舞泉について、自身の打席で感じたことを晴香に伝える。


「ストレートは速いけど、晴香なら全然追えると思う。それよりも厄介なのがスローカーブ。タイミングも狂わされるだけじゃなく、変化も大きいから捉えにくいかも」

「ありがとう。だけど、今はその情報は必要無さそうね」

「え? どういうこと?」

「ほら見て」


 風はマウンドに目を向ける。だがそこに、舞泉の姿は無い。


《レフトの中村さんに代わりまして、ピッチャー、源さん。ピッチャーの小山さんがレフト。以上に代わります》


 奥州のピッチャーは源に交代。舞泉はレフトの守備に回っていた。


「残り全部投げるのかと思ったけど、そういうわけじゃないんだ」

「そうね。まだ一年生だし、長い回は投げさせられないんじゃないかしら。でも守備に就いてるってことは、展開次第で再登板してくるかもしれない。まあいいわ。誰が相手でも、私は自分の仕事をするのみだから」


 晴香はヘルメットを被って打席に向かう。投手が代わったとはいえ、彼女のやるべきことは変わらない。奥州を突き放すための足掛かりを作るだけである。


《三回表、亀ヶ崎高校の攻撃は、三番センター、糸地さん》


 初球、晴香は外角に来た直球を見送る。ストライクとなった。


(まずまずの球威はあるみたい。だけどじっくり見ていくようなボールでもない。次のストライクは手を出す)


 二球目、源はストレートを続けてきた。予め決めていた通り打ちにいった晴香は、バットの芯で捉える。


「レフト!」


 打球がショートの頭を越え、左中間の深部に弾む。晴香は俊足を飛ばし、二塁に向かおうとする。


「おっと……」


 だが途中で急ブレーキを掛け、一塁へとUターン。回り込んで捕球したレフトの舞泉から、矢のような送球が返ってきたのだ。もしあのまま晴香が走っていれば、間違いなくアウトになっていただろう。


(なるほど。そういう応用もできるのね。打球の追い方も上手だったし、守備の面でもセンスが感じられるわ)


 舞泉のプレーに晴香も素直に感心する。この回の亀ヶ崎は無得点。奥州にとっては、結果的に晴香を二塁に進ませなかったことが活きた。


 試合は三回裏に入る。前の回が八番の白間で終わったため、真裕は九番の舞泉を先頭打者として迎え撃つこととなる。


(投げて良し、守って良し。勝ってるのはこっちなのに、ずっと舞泉ちゃんが活躍してるように思えてくる。それでバットの方でも活躍され始めたら、本格的に舞泉ちゃん劇場が始まっちゃうよ。対戦するのが楽しみだったとか、そんな悠長なことは言ってられない。チームのために、ここは全力で抑えにいく)


 真裕が投球練習を終えたのを確認し、舞泉は左打席へと歩を進める。互いに熱望していた一年生対決。その第一ラウンドが、早くもやってきた。


(さてと、真裕ちゃんの球、じっくり拝ませてもらうよ)


 空を照らす太陽に似つかわしいオレンジのグラブを高々と掲げ、真裕が舞泉への一球目を投げる。低めのストレート。舞泉は打ち返すが、左方向へのファールとなる。


(良い振りしてる。侮ってるつもりはなかったけど、これまで打ててきたのはまぐれじゃないようね。だったら厳しく攻めさせてもらう)


 舞泉のスイングを間近で見て、優築は能力の高さを再確認する。二球目は膝元のボール球を使い、舞泉の足を払う。


 三球目もインコース。今度は胸元に行き、舞泉は少し仰け反る仕草を見せる。


(真裕ちゃんってば遠慮が無いねえ。まあ、キャッチャーの指示なんだろうけど)


 四球目。真裕は真ん中から内へと入っていくカーブでストライクを取る。これでツーボールツーストライクとなった。


(三球連続で内角か。強気だね。勝負球はアウトコースかな?)

(これだけインコースを見せれば、外には踏み込みにくくなってるでしょう。だけどここは二打席目以降のことを考えて、徹底的に内を突きたい。真裕、いける?)

(もちろんです)


 優築のサインに真裕が頷く。初回に垣間見えた弱気はとうに消え去り、非常に充実した顔つきになっている。


(舞泉ちゃんを相手にしてるのに、そんなに怖いと思わない。このまま押し切る)


 真裕が大きく振りかぶり、五球目を投げる。投球はきっちりと、優築の構えたミットへと向かう。


(うおっ、これは予想外)


 舞泉は驚きながらスイングする。それでも上手に腕を畳み、バットの芯に当てる。


「えい!」


 球場に響く快音。舞泉劇場開演の鐘となるのか。



See you next base……




PLAYERFILE.44:棚橋(たなはし)(はるか)

学年:高校三年生

誕生日:10/16

投/打:右/左

守備位置:三塁手

身長/体重:160/54

好きな食べ物:ベーコンアスパラ、ナスのはさみ揚げ


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