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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第九章 想いを繋いで
113/181

111th BASE

お読みいただきありがとうございます。


先日、競泳の池江璃花子が白血病であることが発表されました。

非常に厳しい現実ですが、池江選手は今よりも強くなって帰ってくると仰っており、彼女の人間としての強さを感じました。


私たちにできることは応援することだけ。

ゆっくり治療していただき、また元気な姿を見せてくれることを願っています。

 前日降っていた雨は完全に止み、外には晴れ間も覗いている。夏の大会は最終盤を迎え、残るは三試合のみとなった。今日は準決勝として二試合が行われる予定で、その一つ目が亀ヶ崎高校対奥州大学付属高校である。試合開始に向け、グラウンドでは各人が準備を始めていた。


「真裕、ボールは持った?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ行こうか」


 先発を任されている真裕は、優築と共にブルペンへと向かう。ブルペンはスタンドと隣接するように設置されているため、自チームの応援団の目の前で投球練習をすることになる。今日は吹奏楽部も来ているということもあり、観客席はこれまでと比べてかなり賑わっている。


「見て見て、ピッチング始まるよ。あれ? 今日は天寺さんじゃないんだね」

「ほんとだ。勝てば明日が決勝だから、そこら辺を考えてるんじゃない」

「なるほどね。ということはあの子、光毅が言ってた凄い一年生かな。可愛い」

「名前は確か真裕ちゃんだったっけ。応援してあげないと。頑張れ真裕ちゃん!」


 ブルペンに真裕が立つと、観客席にいた何人かの女子生徒から声援が送られる。それに気づいた真裕は帽子を取り、はにかみながら会釈する。


(結構たくさんの人が入ってるんだな。吹奏楽部もいる。だけど……)


 真裕は観客席を見回す。しかし、兄の飛翔かけるの姿は見つからない。


(お兄ちゃん、来てくれなかったのか……。残念だけど、急に誘ったことだから仕方ないよね。切り替えて試合に集中しよ)


 真裕は投球練習を始める。大舞台での初先発に多少の不安を抱えながらも、真裕はそこまでナーバスになっていなかった。投げるボールにも悪い部分は見られず、身体の調子自体は良さそうだ。


 対する奥州の注目はやはり、“怪物”一年生の小山舞泉。こちらは三回戦まで全ての試合に途中出場し、投打両面でチームを牽引している。


「舞泉、キャッチボール一緒にやらない?」

「はい。お願いします」


 舞泉は今日もベンチでの待機となる。そのため試合前はブルペンには入らず、野手陣に混ざってウォーミングアップをする。


(今日の亀ヶ崎の先発、真裕ちゃんなのか。対戦できたら良いな)


 キャッチボールの最中、一塁側のブルペンにいる真裕の姿を見つけ、舞泉は胸を弾ませる。普段は凛々しい彼女の顔つきの中に、幼げな笑みが仄かに浮かび上がる。


 先発マウンドに上がる真裕と、中盤の競った場面での起用が予想される舞泉。両チームの勝利の鍵は、この二人の一年生が握っているのかもしれない。果たしてこの試合、二人はどんな活躍を見せるのか。そして直接対決はあるのか。決勝の切符を懸け、絶対に負けられない戦いの火蓋が今、切られようとしていた。




「ただいまより、夏の大会準決勝第一試合、亀ヶ崎高校対奥州大学付属高校の試合を始めます」

「よろしくお願いします!」


 これまでにない数の観客が見守る中、両チームがホームベースを介して整列し、大きな声で挨拶をする。試合開始。後攻の奥州ナインが守備位置に散っていく一方で、亀ヶ崎ナインはベンチ前で円陣を組む。


「私たちは先攻という立場。だから先制点を取って、優位に試合を進めていくわよ」

「おー!」


《一回表、亀ヶ崎高校の攻撃は、一番セカンド、戸鞠さん》


 今や御馴染となった亀ヶ崎のトップバッター、光毅が打席に向かう。一塁側スタンドからは、迫力あるブラスバンドの演奏が鳴り響く。曲はもちろん、光毅の大好きな“アラキ”選手の応援歌だ。


「かっとばせ、光毅!」

「うっほお、やっぱり吹奏楽部の演奏はテンション上がるわあ。頼んで良かった」


 満足そうに笑みを浮かべ、光毅はバットを構える。マウンド上には奥州の先発右腕、西村にしむらが上がっている。


「プレイ!」


 球審のコールを聞いた西村が、ノーワインドアップポジションからこの試合の第一球を投じる。真ん中高めのストレート。光毅は果敢にバットを出し、真っ直ぐに弾き返す。


「うわっ」


 打球は西村の頭上を越え、センターの前に弾む。いきなりのヒット。光毅は一塁をオーバーランしたところで止まる。


「ナイスバッチ光毅!」

「えへへ、よっしゃ」


 軽く拳を握り、スタンドの歓声に応える光毅。のっけから応援の効果が出た。


《二番ショート、城下さん》


 続いて二番の風が打席に立つ。スタンドから流れてくるのは、彼女の好きな女性アイドルグループのヒット曲。それを応援歌風にアレンジしたものだ。


「かっせかっせ、風!」

(う、嬉しいけど、何だか恥ずかしい……)


 風は背中に仄かなこそばゆさを感じる。しかし彼女は一度大きく息を吐き、気持ちを落ち着けてプレーに集中。そうして監督の隆浯からのサインを覗う。ノーアウトで出たランナーを如何にして活かすのか。


(西村は良い投手だが、花月の辻本のような緻密さは無い。ここまでの試合でも早い回に複数点を取られている。ここは送りバントで簡単にアウトを上げることはぜず、打って繋いでいこう。だが焦りは禁物だぞ)


 隆浯は風を自由に打たせる。ただし光毅に対しては、無理して走らないように釘を刺す。


(ちぇ、行っちゃ駄目なのか。なら走る雰囲気出して、プレッシャー掛けよ)


 西村がセットポジションに入ったのを確認し、光毅は素早くリードを取る。その幅は平均的な選手に比べて一歩以上大きい。このリードを見せられたら、投手は否が応でも警戒してしまう。


(リードがでかい。何か仕掛けてくるか?)


 西村は様子見の牽制をする。光毅は頭から滑り込んで帰塁する。


(楽々戻ったな。もう一球入れてみよう)


 西村が牽制を続ける。今度は少しモーションを速くして投げる。


「セーフ」


 ファーストの小野が腕にタッチするも、光毅はそれよりも先にベースを触る。まだ余裕はありそうだ。


(良いね良いね。どんどん頂戴)


 光毅は心の中でほくそ笑む。この場面では牽制が来れば来るほど、彼女の狙い通りに事が進んでいることになる。


 再びセットポジションに入る西村。長い間を取ってから、風に対しての一球目を投じる。それに合わせて光毅はスタートを切る素振りを見せる。


「ボール」


 外角へのストレートが外れた。牽制を一球挟み、西村は二球目も同じ球を続ける。これもボールとなる。


 三球目でようやくストライクを取り、カウントはツーボールワンストライク。ここでも西村は牽制球を入れる。


(ランナーに走りたがっている感じはある。スチールするならここか?)

(エンドランもあるかも。いずれにせよ、どうにかしてかわさなくちゃ)


 考えを巡らせる奥州バッテリー。けれどもここは何の作戦も出ていない。完全に光毅たち亀ヶ崎側の術中に嵌っている。バッターの風にしてみれば、相手の注意が散漫になっている分、くみしやすくなる。


(相手は勝手に色々と考えてくれてるみたい。これを利用して良い形で晴香に繋ぎたい。次は甘い球が来るかも)


 四球目、アウトコース高めを狙った直球が、少し中に入ってくる。風はそれを見逃さず、右方向へと鋭い当たりを放つ。


「セカン!」


 セカンドの織田が飛びつくも、打球は一二塁間を破っていく。光毅は二塁でストップ。一、二番コンビの連打が飛び出し、亀ヶ崎は初回からチャンスメークする。


《三番センター、糸地さん》


 そして打席には、三番の晴香を迎えるのであった。



See you next base……




STARTING LINEUP


亀ヶ崎高校

1.戸鞠 光毅    右/右 セカンド

2.城下 風     右/右 ショート

3.糸地 晴香    右/右 センター

4.宮河 玲雄    右/左 レフト

5.紅峰 珠音    右/右 ファースト

6.外羽 杏玖    右/右 サード

7.踽々莉 紗愛蘭  右/左 ライト

8.桐生 優築    右/右 キャッチャー

9.柳瀬 真裕    右/右 ピッチャー


奥州大学付属高校

1.棚橋たなはし   右/左 サード

2.織田おだ   右/右 セカンド

3.原田はらだ   右/右 センター

4.小野おの   右/右 ファースト

5.島谷しまたに   右/右 ライト

6.中村なかむら   右/左 レフト

7.山下やました   右/右 ショート

8.白間しらま   右/右 キャッチャー

9.西村にしむら   右/右 ピッチャー

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