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ベース⚾ガール!  作者: ドラらん
第八章 控えの意地
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108th BASE

お読みいただきありがとうございます。


プロ野球のキャンプも始まり、徐々に野球の季節も近づいてきました。

楽しみも増え、私の日々のテンションも上がってきました(笑)

 午後四時。私たちは宿舎へと戻ってくる。皆が一段落着いてから今日と次の試合についてのミーティングを行うという予定だが、私はその前に監督の部屋に呼び出しを受けた。


「失礼します」

「お、来たか。適当に腰掛けてくれ。ちょっと狭いかもしれんが我慢してな」


 部屋に入った私は、監督に言われるがまま、用意されていた椅子に座る。監督はチーム内で唯一の男性になるため、この部屋には一人で泊まっている。別に何も悪いことはしていないけれど、こうして監督と二人だけの空間というのは非常に緊張感が高まる。


「そんなにかしこまらなくても良いぞ。ほい、とりあえずお茶でも飲んでリラックスしな」

「あ、ありがとうございます」


 監督が手元にあった緑色の湯呑ゆのみにお茶をみ、私に差し出す。


「空たちが来たら話を始めようか」

「え? 空さんも来るんですか?」

「ああ、そうだ。もうそろそろ来るだろ」


 監督は腕時計に目をやり、時間を確認する。私と空さんを呼んでいるということは、おそらく投手陣についての話になるのだろう。


 私はお茶を一口飲んだ。この暑さにぴったりの冷感が、喉を潤していく。そこへ、部屋のドアを誰かがノックする。


「噂をすれば何とやらだな。鍵は空いてるから入ってくれ」

「はい。失礼します」


 ドアを開けて入ってきたのは空さんだ。その後ろには優築さんもおり、二人は私の隣で腰を下ろす。


「これで全員揃ったな。お疲れのところ集まってもらって申し訳ない。早速本題を話そう。何となく察しているとは思うが、今後の投手起用に関してだ。明後日の準決勝は、真裕、お前を先発にしようと思っている」

「は、はい」


 監督は溜を作ることなく淡々と私に告げる。私は戸惑いを見せながら、咄嗟に返事だけはする。心臓が一拍、強い音を鳴らした。


「ふっ、何とも言えないって感じの顔だな。やってもらえるか?」

「も、もちろんです! やります!」

「それは良かった。大会ということは意識せず、普段通り投げてくれれば良い。といっても力が入るだろうから、優築は上手にサポートしてやってくれ」

「分かりました」

「そして決勝の先発は、空に務めてもらう」

「はい」


 空さんの目元が引き締まる。その瞳にはくっきりと、決勝で投げる自分の姿が映し出されているように見える。


「ただ真裕がどこまで投げられるか分からないし、葛葉も万全の状態で行くには厳しいものがある。だから明後日の試合でも準備は怠らないでほしい」

「もちろんです。任せてください」


 快く頷く空さん。これぞエースとしての心構えなのだろうか。とても頼もしい。監督も満足気に、頬を軽く緩める。


「うむ。伝えたかったことは以上だ。ここからはより一層厳しい戦いになるが、二人共期待しているぞ。絶対に優勝しよう」

「はい!」


 かくして、準決勝での私の先発登板が決まった。相手は奥州大付属高校。舞泉ちゃんとも対戦することになる。


「失礼しました」


 私たちは監督の部屋を後にする。外に出たところで、唐突に空さんの鼻息が荒くなる。


「うおお、遂にここまで来たねえ」

「うるさいですよ。他の人もいるんですから、配慮してください」

「えへへ、悪い悪い」


 優築さんから冷静に注意され、空さんは苦笑い。この二人のやりとりを見ていると、偶にどちらが先輩か分からなくなる。


「けどこれで、ほんとに私たちが優勝できるんじゃないかって思えてきたよ」

「なんか今まではそう思えなかったって感じの言い方ですね」

「いやいや、そりゃここまでも優勝しようと思ってやってきたさ。ただそう言って二年とも三回戦が限度だったから、いまいちピンと来てなかった。けど今日でそれを越えて、一気に優勝へ向かう実感が湧いてきたんだよ」

「なるほど。そんなもんなんですかね」

「そんなもんだよ」


 空さんは少しだけ虚ろな笑みを浮かべる。私たちと違い、空さんは二回も夏の敗戦を経験している。だから私たちには分からない、優勝への見えない壁みたいなものも感じていたのかもしれない。けれども今日でそれは破られた。空さんたちが破ったのだ。そう考えると、空さんがここまで興奮するのも分かる気がする。


「何にしてもあと二つ。まずは奥州を倒さないとね。良いピッチング頼むよ後輩」

「はい、頑張ります」


 空さんが私の肩を揉み解す。ほんのりとしたこそばゆさが、何となく心地良い。


 亀ヶ崎高校は今日、一つの限界を突破した。これまで紡がれてきた想いが一歩前進し、夢の実現へと近づいた。そしてその想いは、一旦私に託されることとなる。渡された想いのバトンを繋ぎ止め、再び空さんたちに返す。それが私に課せられた役目だ。


 私は期待されている。監督も空さんたちも、私が投げられると思ったから先発を任せてくれたのだ。その期待に応えて、このチームを決勝に連れていく。敵は強大。だけど、必ず倒してみせる。



See you next base……





ベスト四まで進んだチーム


・亀ヶ崎高校(愛知)…三回戦で花月高校との死闘を制し、初の準決勝進出。高い結束力と堅守が光る。


・奥州大学付属高校(岩手)…彗星の如く現れた“怪物”一年生、小山舞泉を擁する。こちらも初の準決勝進出。


・楽師館高校(愛知)…三年連続で準決勝まで進んでいる実力校。真裕たちと同じ一年生、円川万里香がレギュラーとして出ている。


・浦和明誠高校(埼玉)…昨年の夏の大会優勝校。ここまで一度もリードを許さない安定した戦いで勝ち上がってきた。


★準決勝の対戦表★

①亀ヶ崎高校vs奥州大学付属高校

②楽師館高校vs浦和明誠高校

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