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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

学級警察

 スタンフォード監獄実験って皆知っているだろうか?

 ちょっとリアルな監獄ごっこをした結果、囚人役はより囚人らしく、看守役はより看守らしくなってしまったので、2週間の予定がたった6日で中止になったという実験だ。

 閉鎖的な空間で強い権力を持った者は非理性的、暴力的に。

 与えられた役割を演じるために個人が無くなってしまう。


 そんなもの学校に通っていれば実験するまでもなくわかるんじゃないか?

 いじられ役はどこまでもいじられるし、なんたら委員長は優等生であることを演じるし、バカは何をやってもバカを演じる。

 誰もその事実に違和感を抱かないだろう。


 先生もその役割を演じているのだろうか?

 そういえば担任を持っている先生とそうでない先生では違うかも。

 いま教卓の裏でプリントをダラダラと読む公民の先生はとても教師としての自覚が無いように思える。

 彼は担任クラスを持っていない。


 この先生の授業はつまらないし、おかしい。

 まずシラバスの時点で教科書からかけ離れている。

 それなりの値段をする教科書は買わせといてほぼ一度も使わない。

 授業毎に配られるプリント配られるが、まるで犯行予告のように新聞や他人の著書の切り抜きを雑に貼ってあるので読みづらい。

 そのプリントの解説は支離滅裂な読経で、この時間のクラス平均座高は頭一つ分縮んでいる。

 今日はいつもいじめられっ子が休んでいるせいで余計に見晴らしがいい。

 そろそろ中間テストだが、はっきり言ってどう勉強すればいいものか……


 今は憲法の話をしているようだが、いびきすら聞こえる状況でそんな大事な話をしていいのか?

 いや、まぁ別に大事でもないか。

 どうせこの人は延々と前文や第1条の戦力不保持についての論説を垂れ流しているのだから。

 ドイツやコスタリカを引き合いに出して保安隊の違憲性をここで説いたところで誰もおぼえていないだろう。


 9条に書かれた「国民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」という条文こそ紹介してほしいものだ。

 プラスチックホルスターに収まったグロックをちらりと見て思った。


 権力の暴走は国民が抑止する権利と義務がある。

 先の大戦の原因は、国民に軍や政権の暴走を止める力がなかったからだ。

 帯銃は圧政や独裁から身を守るための、基本的人権と言っていい。


 おかげで学生運動などが活発だった頃は銃撃戦が多発してたくさん死者が出たようだが、幸いに内戦には発展しなかった。

 そしてその運動で学生自治という概念が一般化した頃、今度は不良学生が問題になったという。

 学校の運営を行う生徒会の手腕が問われるところ、ここである学校がこんなことを思いついた。


「学生が武装して警備すればいいのでは?」


 これは劇的な効果をもたらし、この学校では不良学生が一掃されたという。

 たちまち噂が広がり真似し始める他の学校達。

 大人の警察を追い出す理由にもちょうどいいからますます広まった。


 うちの高校でもこの制度は採用されていて、学級警察という名前になっている。

 今でこそ入学試験のレベルを上げることで不良学生予備軍を追い出しているが、決して仕事がなくなったわけではない。


 突然、教室後ろの扉が開くと、そこにはいつものいじめられっ子が立っていた。


 ホルスターからグロックを抜き、太ももと上半身に4発撃ち込んだ。

 いじめられっ子は倒れた。


 生徒たちは銃声に驚いてビクッとした後に頭を上げて、何が起こったのかと見回した。


 俺は銃口を向けたまま近づき、彼が手に持っていたAR-15を蹴って退かせた。

 心臓に一発当たって即死したようだ。


 先生に振り向いて言った。


「先生、今日の授業は中止してください。あとは学級警察と保健委員で処理します」


 これが今の仕事だ。

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