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逆転不可思議世界  作者: さいとうももこ
19/24

困惑

 ラブホテルである。

 誰が何と言おうがラブホテルである。



 わたしより身体のおおきいけーちゃんに肩を貸すようにして、適当に選んだ部屋に入室した。

 けーちゃんに声かけてもまともな返事はないが、ふらつきながらも歩いてくれるので助かった。



 デンと圧倒的な存在感を主張している大きなベッドにけーちゃんを降ろして寝かせる。

 抵抗することなくベッドに収まるけーちゃん。警戒心の欠片もなく無防備に寝ている姿は可愛らしさすら覚えそうだ。



「はぁ……もう疲れたぁ」



 けーちゃんしかいない密室で思わず大きく息を吐く。ほんとに緊張した。ラブホテルを利用するなんて初めてだし、相手は従弟とはいえ、わたしより若い男の子を連れ込むなんて、どんな目で見られるかわかったもんじゃない。



 大体このラブホテルはややこしいんだ。フロントに誰もいないのはいいけど、一杯ボタンの並ぶパネルの前でどうしたらいいか分からず固まってしまったじゃないか。鍵かなにか出てくるものだと思ったら、自動で部屋が開くシステムだし、素人感丸出しで恥ずかしい。いや、初めての素人なんだけども。



 部屋に視線を這わせると、枕元にゴムや小型マッサージ機(意訳)が設置されてるし、羽まで置いてある。

 外観はシンプルだけどでかでかとネオンが輝いていて、専用プレイルームもあるらしいし、わたしの知っている世界とのギャップがすごい。怪しい色で輝く電飾もあるし、まるで別世界みたい。



 さて、これからどうしようか考えないと。

 まだ夜遅いわけじゃないけど、けーちゃんの酔いが醒めそうにないから帰れそうにない。わたしは一晩帰らなくても何も言われないが、けーちゃんは別だ。

 わたしの家に泊まってる事にすれば自然だが、確認の電話でもされたら一発でバレる。友達の家に泊まったことにでもしようか。

 けーちゃんが泊まるような交友関係は知らないけど、その辺りはけーちゃん本人に任せるとしてラインだけでも送っておかなくちゃ。



 けーちゃんのスマホにパスは……かかってない。不用心すぎるけど、今回は都合がいい。叔母さんに友達の家に泊まるとだけ送っておく。これでなんとかなるだろう。

 勢いでそのまま会場を出てきてしまったから小腹が空いているんだけど、なにか頼んでスタッフと会うのは避けたい。

 部屋に備えてあるサーバーでコーヒーを入れながらテレビを付ける。アダルトチャンネルしかないかと思ったけど、普通のも映るみたいだ。



「人気芸能人が青少年の健全な育成に関する条例違反容疑で逮捕されました」

「ぶっ!! いやぁああ!! 熱い熱い!!」



 あまりにもタイムリーなニュースに思わず吹き出してしまい、コーヒーを浴びてしまう。

 やってしまった。情けないけどスカートまで汚れちゃったし、冷やさないと火傷になってしまうかもしれない。



 ……シャワー行こう。










 替えの服がない。

 浴室のドライヤーで髪を乾かしながら、そのことにわたしは気が付いた。



 汚したスカートはベッドの枕元に設置されているティッシュで拭き取ったが、濡らしてしまっているため着れない。自宅に帰ったらまた洗濯するとはいえ、応急処置しなきゃシミが残るから適切な判断だったと思う。



 だが、もう一度言おう。替えの服がない。

 普通のホテルなら浴衣やガウンなど準備されているだろう。だが、ここは普通のホテルではない。ピンクでハートが浮かんでいるようなホテルなのである。



 とてもじゃないが外に出られる恰好じゃない。外に出られる恰好じゃないということは、けーちゃんの前に出られる恰好じゃないということである。主にセクハラ的な意味で。



 どんな格好でもラブホに入っている時点でアウトなのだが、それを考えたらなにもかもアウトなので気にしちゃ負けだ。従弟だし人助けだしこれぐらい許してほしい。



 ちらと浴室の扉を開けてけーちゃんの様子を確認する。まだ寝ているようだ。これなら出ても大丈夫かな。

 悪いことをしている気になりながら扉を出る。けーちゃんが目覚めて帰るのは朝になるだろう、なら一度寝たいところだが、当たり前だがベッドは一つしかない。

 そしてそのベッドはけーちゃんが使っている。しかしながらまだまだベッドのスペースは余裕があり、わたしが入ったところで何の問題も(スペース的には)ない。



 鏡に映る自分の姿を眺めてみる。



 上、膨らみ過ぎてはいないものの、忌々しくも確かなたわわが包み込まれている花形のブラ。

 下、お揃いの花が可愛くプリントされたお気にのパンツ一丁。



 下着姿である。いくらなんでもこれでけーちゃんの横で寝るわけにはいかない。

 この姿はギリギリ許されない線だ。全裸だと間違いなく許されない線を超えるのでギリギリ許される線まで持ち直さなくてはならない。ソファーはあるが固くて小さくて、とてもじゃないが眠れそうにないし……



 これだけは使いたくなかったけど……わたしがベッドで寝るにはこれしかない。





 後日、わたしはなんでこんな馬鹿なことを考えたり、やってるんだろうと自己嫌悪に陥ることになるのだが、今の私には知る余地もなかった。たぶんわたしも酔ってたし、けーちゃんのことで混乱してたから、変になったんだと思いたい。

MHWが楽しくて……

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