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B級聖女 小話集  作者: さん☆のりこ
4/29

虎の目部隊    

青護衛のギイさんの、その後いかがですか?です。

 神殿騎士の筆頭、布団騎士ことジャンビが神殿を離れて②の元に下ったのは例の事件の直後だった。


当然神殿は抗議して来たが、肝心の聖女様が神殿に戻って来たので、彼の事は些細な雑事として処理された。神殿の白騎士は今回の事件に係っていた者が多かった、その中心人物だったジャンビを王都には置いてはおけない、彼は地方の魔獣との最前線に派遣される事になるだろうと言うのが大方の見方だった。


 昔の様に神殿を守る騎士が居なくなってしまったが、聖女様がおられる今、神殿を手薄にしておくのは不用心すぎる。そこで年配者ジジイの退役騎士を中心に白騎士の募集が懸けられた、傷痍騎士でも出来るお役目は有るとの事で、仕事にあぶれた騎士達には大変に評判が良い求人だった。

これもひとえに聖女様の御蔭であると、聖女人気は天井知らずの様相だ。


王都は良い感じに治まってきているが、地方には依然魔獣は出没するし、注力が必要な事には変わりなかった。


「行ってくれるか?」

「この命、喜んで王国と聖女様に捧げましょう」

②の命令で、ジャンビは50名の遊撃隊を率い、魔獣討伐の任を受け王都を出発する事となった。


遊撃隊とは・・今までに無かった部隊で、魔力が強い者だけが入れる精鋭部隊だ。

転移の魔術陣に適応できる魔力を有し、どこにでも短時間に駆け付ける事が出来るのがウリだ。隊員の半分はA級の平民騎士で、魔力自慢の精鋭・・つまりは脳筋達だった。討伐任務の過激さから任期と給料は格段に増額されており、2年間頑張ればそれなりの資産を残せる様になっていた。

また聖女様は各種保険制度も導入し、王都に残る家族のフォローも忘れてはいなかった。傷痍騎士年金や・騎士恩給などの手厚い福祉制度は、騎士に成りたい若者を劇的に増やした。

・・残りの隊員は、武闘派の変わり者の貴族の坊ちゃん達である。

貴族と言えども、社交が嫌いで、おべんちゃらが言えない者もいると言う事だ。

騎士の家系を誇る代々の脳筋たちが集い、なかなか暑苦しい部隊となっていた。

これらの癖の強い人員を指揮し、動かして行くのは大変に骨の折れる仕事だろう。

事実①王子は部隊の隊長職を打診され、心をポッキリ折られ逃亡している。今回隊長に抜擢されたジャンビにしたって、例の聖女様の事件が有った為、一種の懲罰人事と言う見方もされていた。



「ジャンビよ、遊撃隊で結果が残せれば、軍の指揮権は我々が掌握出来るであろう。俺の・・新しい王の右腕となれるよう、精進して戻って来てくれ」

②はもっともらしい・・まあ、その思惑も有るのだろうが・・事を言ってはいるが実のところ。誠実そうでカッコいい男を、少しでも聖女様から離しておきたいのが本音であった。ジャンビが聖女をこれ見よがしにエスコートしていた事を、しつこく覚えていて面白くない➁なのである。

②は嫉妬深く執念深く、〇ツの穴がコンマイ男であった。



    ****



 国が改革を断行し、A級平民の扱いも大きな変化が有った。

10歳の判定でA級に選別されても、その後更に適正試験が有り、王都に招かれ教育を授けられ王都の市民になるのは大変に狭き門となった。本当に優秀な平民だけが辿れる道になったのである、一見不公平で差別的な施行の様に思われるが、弾かれたA級達は地元に残り、地元で教育を受け故郷を支える要員にと成長していく。地元を重視した改革なのだった、親子が無理やりに離れ離れにされる事も無くなったので、この措置は地方の平民には大変に好評だった。力あるA級平民が地元に残る事で、魔獣の襲撃時にも避難し救援を待つ、時間稼ぎの余裕が生まれる事となった。


    ******


カン・カカン・カン・カカン・カン・・・・・・


「逃げろ~~~魔獣が来たぞ~~~!!!」


風雲急を告げる鐘の音を聞いて、平民達は岩盤をくり抜いて造った、魔獣でも破られない様な分厚い扉を付けた避難場所に逃げ込んで行く。村の全員が逃げ込んでも3日間は過ごせる程の、頑丈で大掛かりな避難施設だった。各家で重要な物は、予め避難部屋に設置済みだ。


皆、命一つで逃げ込んで行く。


そんな村人達と逆走して、魔獣に向かって行く数人の男たちが居た。

A級の平民達だ、白髪の爺様や年若い男達が多い、壮年期の働き盛りはいない、王都に根こそぎ拉致られてしまった年代だ。


「虎の目部隊が来るまでの時間稼ぎだ、決して無理はするな。俺たちが倒せる相手では無い!」

歯抜けの爺様が檄を飛ばす!

「敵は一頭だ、同士討ちしない様前方から当たれ。村に侵入させるな、空地に誘い込むのだ!!」

爺様は風を操るのが得意だ、魔獣の目に向かって細かい砂を叩きつける。

目つぶしされた魔獣は咆哮を上げ、大気をビリビリと振るわせる。他の男がブーメランの様な飛び道具で魔獣の足を狙って攻撃する、しかし魔獣の皮が厚い為に軽く弾かれてしまった。


爺様は渾身の魔力で、突風を巻き起こし魔獣を抑え込もうと頑張る。

魔獣は飛ばされまいと、足を突っ張って堪えている、こうなれば我慢比べだ・・どちらが先にへたばるか。


『・・・まだか・・・虎の目部隊は・・・』

どのくらい頑張っていただろう・・・。


「待たせた!良く持ち堪えていたな。後は任せろ!平民は巻き込まれない様に避難しろ!!」

魔獣の咆哮に勝るとも劣らない大声が、突然空間から降って湧いた。


・・・虎のタイガーズアイ部隊・・・


②王子の結成した遊撃隊は、いつの頃から虎の目部隊と呼ばれる様になっていた。

それは甲冑の右胸の部分に虎の装飾が付いていて、その虎の目の部分に、妖しく力強い光を湛えた茶色い目の様な模様の石がはめ込まれていたからだ。

不思議な事にその石は、戦闘中には生きている目の様にギラギラと輝き魔獣をも威圧するのだ。そして騎士達はその石に力を授けられたかの様に、鬼神の如くな活躍をしていた。


今回の魔獣は鬼狼おにおおかみ・・家の様に大きく、猛々しく非常に危険な魔獣だった。

その魔獣を、ものの数分で屠ってしまう・・。


挿絵(By みてみん)


・・実に恐ろしくも頼もしい・・虎の目部隊タイガーズアイ・・



   ****



 その恐ろしい遊撃隊の隊長は、事が済めば住民の被害を心配し労わる優しい男だった。初めはビクビクと遠目に伺っていた村人も、避難部屋からオズオズと出て騎士達の元にやって来る。

魔獣は倒せば利用価値の高い、お宝に化ける優れものだ。

隊長は倒した魔獣で得られる金を、村と隊の半々で分ける提案をしてきた。


「そんな、魔獣を倒しなすったのは騎士様達ですじゃぁ、わしらが頂ける所以は有りませんが」

村長が腰を低くしてそう言うと。


「この村も、生活の為に先立つ物は必要でしょう。本来なら全額を村の資産にするべきところなんですが、我々も装備は自前でそろえている物ですから」

なんと、一流の部隊で有りながら貧乏らしい・・・。


「国から支給される武器は、まぁ・・その、二流品でして。拘りの多い隊員が多いものですから、食事と武器には五月蠅くて・・」

貧乏と拘りは共生出来ないものの様だ、隊長ジャンビとしては頭が痛い事だろう。



 そんな様子を端で見ていた爺様だったが、隊員の中にふと見知った顔が居るのに気が付いた。


「騎士様、間違っていたら申し訳ないが。騎士様は、王宮であのチンチクリンのお嬢に付いていた、護衛の騎士様なのでは?」

振り向いた騎士は、確かに詩乃に付けられていた護衛騎士のギイだった。


「おぉ、王宮の庭師の爺様では無いか、こっちに戻って来ていたのかい?」

「ええ、儂は去年の冬を待たずに、秋には王宮を出ていましたもので。失礼ですがお胸に飾られている石は、もしかしてお嬢の・・」


そう言うと爺はポケットから石を取り出してギィに見せた、それは虎の目部隊に贈った<タイガーズアイ>と同じ、詩乃の造ったパワーストーンだった。


「王宮を去る時に餞別だと言って、毛糸で作った輪っかとこの石をくれました。危険を回避し、戦う力を授ける石だと言って、もしかして騎士様の胸の石も・・」


「あぁ、あれからいくつもの騒動が有ってな。魔獣と闘う者に危険が無いようにと願い、石を沢山くれたのだ。造るのも大変だったろうにな。この石を持って居ると、不思議に勘が働いたりして、危険から逃れられる事が多いのだ、今では隊の二つ名にもなっている」


「そうでしたか・・そういえば、この爺も随分と石に助けられた様な気がしますな。偶然にしては、回数が多い気がしていました」


・・・それで、あのお嬢は元気にしているのでしょうか?


「俺が王宮を出た時には王妃の預かりになっていた、あのお嬢さんの事だマイペースに元気にしているだろうよ」



・・噂されている詩乃は、その時すでに王妃の元にはおらず、ボコール公爵領に向かう船の中だった。

護衛のギイの言う通り、船酔いもせず元気だった。


今日も一人船のお風呂で、

「私は可愛いオキゴンドウ~~」と、揺れていた。


誰も風呂に来ないのを不思議に思っていたが、実はかなりの時化状態で船が揺れに揺れ、ほかの乗客は風呂どころの騒ぎでは無かったのだった。

前に知り合った船員の青年は、〇〇の後始末に奔走していた。



・・・そんな些細な事は、オキゴンドウの詩乃は全然知らない事だった。


ギイさんは、詩乃的にはオジサンでしたが。まだ27歳の独身です。

彼女用に貰った石は、いつか彼女にあげようと部隊員全員大事にとって有ります。

案外乙女な虎の目部隊(笑)です。

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