表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女 小話集  作者: さん☆のりこ
23/29

ある冬の一日

それぞれの一日です。

 朝・・トデリのとある街角


「寒ぅ~~~~~」


オイ達が出港して早1月、トデリにとうとう冬将軍が進撃して来て街は白い雪で包み込まれていた。港はまだ凍り付いてはいないが結氷するのも時間の問題の様だ、トデリの街が陸の孤島になる冬ごもりの季節がやって来たのだ。トデリでは冬時間を採用していているので早朝に人影は殆どない、詩乃は安全を留意して(去年雪だまりに落ち自力では這い上がれず、街のオジサンの発見が遅かったら冷凍シ~ノンになる所だったのだ)人通りが出てから水配りをする事にしていた。別にオイにクドクドと説教された為では無い、安全を考えて自ら遅い時間に配る事にしたのだ。


『何だってあんなに怒るんだか、オイが寒い思いした訳でもあるまいに。背が伸びたからって年上ぶって・・生意気なんだよ』


去年のオイの説教を思い出して、新たに生意気認定をしている詩乃だった。

さて今シーズン、時間が遅くなった事で詩乃は新たなサービスを始めていた。

足元がおぼつかなくなった故に、冬場の外出が困難になってしまった婆達へのチョッとした心遣いでデリバリーサービスを始めたのだ。詩乃が背中に負っている大きな籠の中には婆達の<お裾分け>のお届け物が入っている、会いたくても会いに行けない茶飲み友達への差し入れの品達だ。石板みたいな板に蝋石で書いた手紙?なんかもあって、これが結構婆達の楽しみになっている様なのだ。



「靴下の婆さぁ~おはよ~届けぇあるぞぃ」


婆達は個性的なオリジナリティ溢れる手作りのファッションを楽しんでいるので、均一的な親父達より余程覚えやすい。靴下の婆は寒がりやさんで、厚手の靴下を何足も重ねて履いているので靴下の婆なのである。


「あぁシ~ノンちゃん、有難うね良く来てくれたね」

「船通りの赤帽子の婆から、咳に良いてリンカの蜂蜜漬け預かってるぞい」

「あらぁ~有難い事。あの人のリンカ漬けは良く効くからねぇ」


勿論<咳>の情報は詩乃が流したのだ、赤帽子の婆は民間療法的な薬酒や漬物が得意な婆なので、不調の出やすい冬場には何かと頼られる婆なのだ。詩乃は背負い籠の中からお届け物を取り出すとテーブルに置き、サッサと水甕に向かいお湯(冬場のサービスだ)を出し始める。

此処は時間との勝負なのだ・・何故ならば。


「いま茶でも入れるからねぇ~寒かったろう」

「いやぁ~嬉しけど、余所にも回らければいけなんで遠慮・・」

「ほれ、これ婆さんが漬けたクピルス、美味いから茶請けに~」


だいたい年寄りと言うのは人の話は聞いていない(聞かない)し、自分の話はえらく長々とする生き物なのだ。靴下の婆、その話は昨日も一昨日も聞きましたよ、お孫さんが優しくて掃除を手伝ってくれたんだけど、大事な皿を割ってしまったんでしょう・・リプレーされる話が延々と続いてしまう。この時期、話し相手が不足しているのは解るけど、あちこちで届け物を渡す度に話し相手になっていたら午前中が潰れてしまう。

それだけならまだ許せるのだが、話し込んでいるうちに皆さん判で押したようにオイの子供の頃の話や家族思いの良い子だとかの・・所謂オイ上げの・・あんた、このままオイに決めちゃえよーみたいなオイ推しの流れになって来るのだ。

何でや!オイのばーちゃんが何やら画策しているに違いない。


『男も女も、結婚して子供が出来て一人前だからねぇ』

『シ~ノンちゃん嫁にはね、乞われて行くのが一番なのよ』

『いくら惚れ込んでもね2年もすりゃぁ子供も出来て、亭主なんぞはどうでも良くなるになるモノなのよ。それより相手に惚れられて、自分を大事にしてくれる男を選ぶ方が長い目で見て断然お買い得よ?』

『若い内の方が無理が効くからね、子供は早くパパパッと産んじまったほうが身体も楽よ、今なら私も手伝えるし』

『シ~ノンちゃんには色々教えてくれるお母さんがいないものね、大丈夫よ、オイに任せておけば良いの。騒ぐほど大したモンでもないからさぁ』


何を任せろってーー!!何をだよ!!何をお任せするの?ねぇ、何??

・・そうなんだ、たいした事無いんですね・・婆の旦那さん、そうなんだ。


・・・・・・・・・そんな話ばかりされると正直ウンザリするもので。


お節介も極まれり!モラハラ・マタハラ・セクハラのオンパレード!

『あーあー聞こえないーー、聞きたくないーー』

恐るべし婆の老害パワー、いい加減に詩乃だってキレるんだよ。ムキーッ!



    ******



 お昼時・・領都の波止場近くの屋台通り。


「腹減った~~~]

午前中の作業が終わり、オイ達平船員は美味そうな匂いに釣られて屋台通りにやって来ていた。


オイ達の船は領都の港に停泊したまま、領主様が動くのを待っている。

舟が動かないと言ってもノンビリとはしていられず、人手不足である港の荷運びの手伝いなどをして稼いでいるのだ。国際港でもある領都の港は常に大型船が停泊していて、大量の貨物が行き来している。その為、荷の積み下ろしや倉庫に運ぶ仕事の手間賃だけでも、平船員にとっては良い稼ぎになるのだった。

ちなみにそれらの仕事の求人は船長が受け、自分の所の船員を貸し出す格好になっている。酷い船長になると仲介料をガッポリ中引きしたりするらしいが、オイの船は父さんが船長なので安心と信頼の雇用関係なのだった。そんな訳で少々懐が温かいオイ達は機嫌よく波止場の屋台に繰り出して、今日の昼食は何にするかなぁとなどと考えている所だった。


「良いよなぁ領都~トデリより温かいしさぁ今頃トデリは雪の中だ」

「飯も美味いよな、俺今日も肉パンにする何回食べても美味いよな」


肉パンの屋台も沢山あるのだが、オイ達はやはり腹持ちの良いボリュームのある(しかも店主さんが熟女系美人さんだ)屋台に向かう。


「おや、お兄さん達今日も来てくれたんだね、お姉さん嬉しいからオマケしちゃう」

『お姉さん・・・?』


オイ達はまだ知らなかったが、屋台の店主はいかなる年齢でも女性ならお姉さん、男性ならお兄さんと呼称するのだそうだ・・此処で迂闊に年齢に関する質問などしない事がその後のサービスに繋がる。


「なぁ、領都でこれだけ旨いんだから、王都に行ったら嘸かし美味いものが有るんだろうなぁ。俺、早く王都に行きたいぜ~」

「あらま、お兄さん夢を壊しちゃぁ悪いけど、此処と王都だったら此方の方が断然良い物が揃っているよ」


お姉さんは自慢気に、山盛りに肉を盛ったパンを差し出しながらそう言った。


「王都なんか貴族の残り物しか平民には回っちゃ来ないからね、碌なモノは無いよ、この島国で一番豊かで飯の美味いのは此処ポンテェアナクだよ。物価も安いし品物も手に入りやすいから、私ら屋台の者でも十分商売が成り立つってもんさ」

「えーー、王都は立派で凄いって聞いてたのにな」

「立派な場所は貴族専用さ、ヘタに近づくんじゃないよ?命がいくつあっても足りないからね、おっかない騎士が沢山いて田舎者の首を撥ねちまうからね」

「悪かったな田舎者でぇー」


お姉さんはカラカラと笑うと、

「訛りが有るからすぐに解ったよ。あんたらずっと北の方からだろう?好い子にお土産を買うなら王都じゃなくて此処で買いな、海岸通りに飾り物の店が出ているよ、可愛い娘が売っているから買ってやっておくれ」

「何だよ、宣伝かよ」


ディは怒っていたが、可愛い子ってどんなかな~見て見るだけはタダだよな・・と、見物に行く気満々の様だった。肉パンを食べながらお姉さんが教えてくれた海岸通りに行ってみる、冬なのに寒さが緩いせいか道に敷物を敷いて品物を並べている露天商が多い。


「へぇ~、耳飾りに首飾りか、女ってこう言うの好きだもんなぁ」

「お兄さん、好い子に御土産なの?お安くしておきますよ~」


楽し気に会話しているディを見ながらオイは暫し考える・・

『こう言う飾りはシ~ノンが自分で創るからなぁ、よく見るとシ~ノンの飾りの方が意匠も凝っていて、石もお守りって感じだし』

シ~ノンが喜ぶものは・・もっと違う様に思える、見た事も無い様な珍しい物とか奇麗な物とか。

『俺が見て綺麗だと感動して、シ~ノンにも見せたいなぁ・・と思った物をお土産にしよう。でも海で見る星空や夕焼け空は持って帰れないし』

考え抜いた結果、海の男であるオイ君は冬の海岸で貝殻拾いをするのでありました。ヘクション!



     ******



 夜・・・人通りの無い王宮の廊下


プマタシアンタルは疲れ切っていた、王妃様に振られた仕事が思う様に進んでいないからだ。人に隠れてコソコソと、陰謀を隠密に遂行するような策を練れる様な頭は元々持ち合わせていない男だ。王妃様もたまには人選ミスをするのだろうか、当の本人は人選ミスを疑っていない・・全くもって畑違いも甚だしい。


『まったく、机から一歩も動かず身体を動かしていないのに、何だってこんなに疲労困憊しているのだ俺は・・疲れた。へとへとだ』


プウは魔剣を振り回す様なきつい鍛錬をするよりも、頭脳労働の方が余程堪えるらしい・・つくづくデスクワークの向かない男である。

今、プウの灰色の脳細胞は切実にブドウ糖を欲していた。


『甘いものが欲しい、今すぐ食べたい、何故なんだ甘い物など好きでは無かったのに。昼間は食堂で軽食のパンケーキを出している様だが、夜にも売っているだろうか?』


王太子の狂犬と言われている男が王宮の食堂でパンケーキを注文しウマウマと食べる、そんな不気味な絵面を人はどう思うだろうか・・と、そんな些細な事を気にするような、繊細な神経を持つ男ではプウは無かった。競歩の様な勢いで廊下を歩いていると、見知った男に出会った。


「ジャンビ・・」


聖女事件では第1王子派に組していて、プウとは袂を別っていた腹違いの弟に行き会った、事件からすぐにジャンビは対魔獣の遊撃隊を率いて王宮を去っていたからプウとは久々の再会である。


「ジャンビ・・お前は頭が良かったよな。

策を練って人を陥れるくらいに、難しい事を熟せる頭がある男だよな。聖女様には出し抜かれたが、あれは仕方がない異世界の知恵はある意味反則技だからな」

「褒めているのか、貶しているのか解りませんが・・お久しぶりですねプマタシアンタル様。今は部隊の予算交渉の為に王宮に来ているんです」


ジャンビは色白かった肌も褐色に日焼けして、身体も一回り大きくなって逞しくなっていた。対魔獣の遊撃隊<虎の目部隊>の体調として日々頑張っているからだろう。


「お前は以前、この後は聖女様に尽くすと言っていたよな。

その志は今も変わりないか・・変わりが無いなら相談したい事が有るのだが・・正直に言うと、大変に、切実に、非常にメチャクチャ困っている」


どうやらプウは頭脳労働を丸投げするつもりの様だ、機密事項なのに・・王妃様はジャンビ込みでプウを選んでいたのだろうか?


挿絵(By みてみん)


その頃、後宮では・・・。


「お母様、ご本読んで下さい」

「~さい~~」

「お前達、本は乳母に読んでもらえ。お母様はこれからお父様と大事な話が有るから・・早く寝なさい。子供はもう寝る時刻だ。おい、乳母ども早く王子達を子供部屋に連れて行け」

「まだ眠く無いです、お母様とお話ししたいんです。お父様は昼間お母様といられるんでしょう、子供の邪魔をしないで下さい」

「おとー じゃまじゃまじゃまじゃまままぁーーーー」

「あぁああああぁーー五月蠅い!お前達、我儘言うな。お母様はお父様のなの、お父様が一番なの」

「横暴です」

「おーぼーおーぼーぼぼぼーーーーーー」


王太子と王子達の聖女様争奪戦が日夜繰り広げられていた。


「仕事に戻ります」

「いやーーーー」×3



     *******



 夜も更けて・・再びトデリ。


「うわ~吹雪いて来たねぇ」


天候が悪化して今夜は吹雪となった、腹の底に響く様な海鳴りも響いて半分凍り付いた海も時化ている様だ。こんな恐ろしい夜は・・涙が出ちゃう、だって女の子なんだもん・・等とは言わず、詩乃は中庭の作業机を片寄せて動けるスペースを作っていた。


「これだけビュービュー風が五月蠅けりゃ、騒音なんか気にしないでパーッとやっても良いよね」


元から歌好きで、カラオケなんかも友達と行っていた詩乃だ振りだって完璧に踊れる。今まで人目を気にして我慢していたのだ、何たってトデリのダンスはフォークダンスだし?余りに激しい踊りだと気が触れたと思われてしまいそうでとても出来なかったのだ。


「元地元のガールズグループは人数で勝負みたいに、メンバーが大勢いたからね」


だから振りを完璧にコピーして踊りたかったら、詩乃の様なオタクちゃんにも声は掛かっていたのだ。


「・・センターは踊った事は無かったけどね、

     さぁ、誰も見ていない事だし、張り切って踊りましょー」


歌って踊れるB級魔法少女・・にしてはトウが立って来た詩乃だったが、一人ぼっちの吹雪の夜は賑やかに更けて行くのでありました。


「あい ぅおん ちゅううぅ~~~~~」

婆のお嬢ちゃんの頃は桃色レディーの全盛期でしたかね、久々に<未確認飛行物体>を踊ろうとしたら(アホ)肩が痛くて腕が上げらない・・ムキーーッ(。-`ω-)

誤字情報、有難う御座います、助かります( *´艸`)

昔から校正は苦手でしたが、何回見直してもこのザマだぃ(*´Д`)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ