11〜20
#夢中風景 せやなが口癖の鼠と街ブラしてたんです。鼠っていってもちょっとした子供くらいの大きさなんですよ。十二国記の楽俊くらいだったのかな。でも楽俊みたいに可愛くて優しい鼠じゃない。私の書いた文字を片っ端から食べてく。見境なく悪口食べてお腹壊してた。ざまあみろ!...大人気なかったかな。
#夢中風景 それは何処か懐かしくて、胸がざわめいた。時折聴こえるのは何かの鳴き声。高く響くそれは獣だったか、鳥だったか。木々のざわめきに身を委ねる。体の輪郭がぼやける。ああ、溶けてゆく。きっと私はこうやって土に還り、風に混じり、空へと昇るのだ。いつの日か、遠くない未来に。必ず。
#夢中風景 命は繋がっていくんだ。ぼくがきみと出会ったように。彼等もまた誰かと出会って、果てしなく遠い未来まで繋がっていく。その光景の端っこを少しだけ追い掛けたぼくは、目覚めた瞬間に悲しくなって、隣で眠るきみに触れずにいられなかった。ねぇきみ。ぼくらの魂は確かにここに在るんだね。
#夢中風景 古びたゲームセンターに足を運んだ。以前来た時もそうだったが客は私以外誰もいない。何処か懐かしみのあるぴこぴことした音楽が鳴り重なっている。店員すらいない不思議な空間は次第に間延びしてゆき、私はいつの間にか宙を漂う亡霊となる。すると見えるのだ。今までいなかった客人達が。
#夢中風景 何処までも何処までも深い蒼の中で漂う快楽。私を捨てたあなたの面影もとうに忘却したはずだった。なのに何故。再びの邂逅。譲れない、この矜持。こっちから捨ててやったのだと声を大にして訴えたい。が、それすら叶わず邂逅の喜びなど何処へやら。私は更なる蒼へと飲み込まれて行くのだ。
#夢中風景 見えないあなたと旅をした。あなたは宙に浮くもんだから、私まで浮遊、寧ろ飛行と言った方が良いかもしれない速さで浮いていた。あなたは透明だから表情は分からない。けれどきっと笑っていたの。私が眼下の景色に声を上げる様やその速さに泣く姿を。何処かで見たことのある、優しい顔で。
#夢中風景 追われる。追われている。のに、君が差し出したのは小さく可愛らしい仔リスだった。混乱する。いま、このじょうきょうで、ちっちゃなリス?なぜ!?問い詰めようにも君は消えてしまった。残された仔リスは愛くるしい瞳を瞬かせる。ええい仕様がない。こいつを守る為の逃避行に変更しよう!
#夢中風景 ああ、またこの場所に来てしまったんだ。ここでは何にも触れることは出来ない。まるで私は存在していないが如く。人々のざわめきを聞きながら、雑踏にぶつかることはない。私をもみくちゃにする何かはいない。不可侵。それは快感であると同時に一抹の寂しさを覚え。帰りたい。そう願う。
#夢中風景 あなたは奇妙な姿をしていた。どうしてそうなったのかあなた自身も検討がついていないようだった。どろどろと溶けた箇所があるかと思えば、霧のように揺らいでいたりする。渦巻く風を纏った右手を差し出すあなた。私は黙って手を握る。不思議とそれは温かく、紛れもないあなたの腕だった。
#夢中風景 見たこともないようなとてつもなく大きな列車が駅に着いた。私はそれに乗らなければ。切符売り場は何処ですか。私の叫びは雑踏に揉まれて掻き消された。発車のベルが鳴り響く。待って。もう少しだけ。仕方ないですね。黒い影が私を包んだ。今回だけですよ。飲み込まれた先は車内だった。