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#夢中風景 ああ。知っている。この場所を知っている。でもそれは何処か幻のようにぼやけた輪郭のまま、通り過ぎた途端に歪んでゆく。変形していく街並みがわたしを飲み込む。走る。やめて。逃げ場はない。わたしはまだ。押し潰され。と。それは現実に触れる感触。温かい。寝惚け眼を擦って微笑んだ。



#夢中風景 この角を曲がれば確か...ああ、そうだ、この焼肉屋。もう少し行けば映画館で、アイスクリーム屋、おもちゃ屋を通り過ぎた先の交差点を曲がれば駅に着くはず。ほら、あった。え?ここに住んでるのかって?いやいや、時々来るだけですよ。それも寝てる間の数時間だけ。記憶力いいんです。



#夢中風景 それは穏やかな流れの中。漂流という名の絶望に飲み込まれているというのに。心の中は凪いでいる。きっとこのまま死んでしまうのだな。そう思えば思うほどに体も軽く感じる。と、本当に体が浮いた。何かに呼ばれるように浮き上がる。飛んだ。真っ黒な波が遠くなる。ああ。また生き延びた。



#夢中風景 あ。と思う間もなく宙で体が踊った。束の間の自由。が、重力に逆らえる訳はない。一気に速度が上がる。このままだと待っているのは1つだけ。ところが突然に閃いた。そうだ、僕は飛べるのだ。つ、と力を入れる。翼など持っていない。何故飛べるのかは分からない。それでも僕は飛べたのだ。



#夢中風景 殺してしまった。血濡れた両手は不思議とそれが当たり前のように思えた。死んでしまった君には申し訳ないが、動かない君に興味はない。君に伝わっただろうか、どれほど理解されようか、この愛が。君への愛を示すいい方法を思い付いたよ。取り込んでしまうんだ。これで君は永遠に僕のもの。



#夢中風景 この電車に乗ればきっと辿り着ける。そう分かっている。でもそれが何処かは知らないの。きっとそれでよいのだろう。この揺れに身を任せて眠ってしまえば問題ない。きっと。ん?可笑しいな。これは夢の中。何故夢の中で夢を見る?どちらが夢?こちら?あちら?いつから現実と入れ替わった?



#夢中風景 それは酷く幸せな光景で、僕は耐えられずに逃げ出した。逃げても逃げても追い掛けてくるのは最早幸福ではなく、ただの怪物。僕を安寧に染めようとする化け物だ。だがそれは現実の僕が欲しくて欲しくて仕方なかったもの。馬鹿だなァ。夢の中でくらいぬるま湯に浸かっていれば良かったのに。



#夢中風景 夢を見ました。そこには顔も名前もない透明な人が沢山いて、でもその人達はみんな私のことが大好きなんです。みんな優しく声をかけて、一撫でしては去っていく。私から溢れ出る色とりどりの花を持って帰っていく。ごめんなさい。私にあげられたのはあんな花でしかない。まるでこの空間ね。



#夢中風景 あの小さかったあなたが、私が育てたあなたが、大きな翼で雲を裂き、優しい炎で空を彩るのを見て、自然と涙が溢れた。なんという幸福。今まで見たことのない絶景に私はただただ降伏する。有難う、生き抜いてくれたのね。首を撫でると立派な成龍となったのにあなたは幼い頃と同じ眼をした。



#夢中風景 もしもそれが真実だと言うのなら僕は満ち足りていなくとも良かった。歪で湿りきった囚われの日々が愛おしいとさえ思う。どうして死んでしまったの僕をおいて。復讐するならもっと方法はあっただろう。幾度も幾度も夢に現れる君はいつだって恨み言。もっと早く言ってくれたら良かったのに。

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