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掌編小説集8 (351話~400話)

調査報告

作者: 蹴沢缶九郎

地球の遥か上空に、一機の宇宙船が静止している。その中では、地球人の生態調査から戻った、見た目が人間そっくりのピム星人による調査報告が行われていた。


「…私はまず、地球人の生活を知る為に、彼らの暮らす街に行き、そこで、高い建物の屋上に佇む一人の地球人の青年を見つけ、何をしているのかと尋ねた。すると、その地球人は、「自分は今から飛び降りるのだ」と答えた」


「建物から飛び降りるだと!? 一体なぜ!?」


調査員であるピム星人の報告に解せない様子の仲間達。


「ああ、私も聞いたよ。なぜそんな事をするのか…。しかし彼は、「こっちに来るな」と、答えを聞く前に飛び降りてしまった…。よっぽど邪魔されたくなかったようだ」


「…その後はどうなったんだ?」


「もちろん死んださ」


「自分で命を絶ったというのか…。全く訳がわからない…」


仲間のピム星人達は困惑を隠せない。


「自分で自分の命を絶つ行為、これを地球の言葉でジサツというらしい。…これは私の推測だが、彼らは快感や快楽を求めてジサツをするのかもしれない」


「…ジサツ」


宇宙船内を、重苦しさと地球人に対する興味の入り交じった不思議な空気が支配した。調査報告は続く。


「次に私は、地球人達が集まる駅という場所に行ってみた。ここで地球人は電車という乗り物を利用するのだ。しばらく駅で地球人の様子を観察していた、その時だった、突然女の地球人が電車の前に飛び出し…」


「まさか…」


「ああ、ジサツしたんだよ…。その後も私は様々な場所に行った。自然豊かな森で首を(くく)ってジサツする者もいたし、自動車という乗り物の中で、ガスを吸ってジサツしている者もいた。一番驚いたのは、センソウという集団のジサツ方法だ。これは、様々な兵器を用いて相手に自分を殺させるのだ。きっと効率を考えての事だろう…」


そこまでジサツという行為には、地球人を惹き付ける魅力があるのかとピム星人は考えるが、やはり理解はし難かった。

一通り報告を聞き終えた仲間のピム星人は言った。


「宇宙は本当に広い、まだまだ我々の知らない事ばかりだな…。しかし、今回の調査報告は大変興味深く面白かった」


調査員のピム星人は深く頷く。


「ああ、全くだ。こんな報告が出来たのも地球人のおかげだ。…そこでどうだろう、何か地球人達にお礼をしたいと思うのだが…」


「それはいい」


話は纏まり、ピム星人達は、ジサツ好きな地球人の為に、宇宙船から強力な毒ガスを撒いて地球を後にした。

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