私と姉と、視線の先
よくあるさっくりとした軽い恋愛もの。王道オチ。
見ているだけの恋はただの自己満足だと姉は言った。
『本当に欲しいのなら、自分の手で掴み取らなければならない』
私はその言葉を聞いてそういうものか、と納得したけれど、言葉通りに行動することがどうにも出来なくて、きっと私の想いはその程度のものでしかないのだと理解した。本当に欲しいものではないと。
けれど視線というのは素直なもので、手に入らないとわかっていても焦がれるものに目線を送ることをやめられないでいた。
見ていることを相手に気付かれて気持ち悪がられるのは本意ではない。不快にさせたいわけじゃないから。無意識に見てしまっているとき以外は出来るだけ遠くからか回数を決めて見ることにした。眺めているだけの恋は臆病者の私にはとてもドキドキして楽しかった。
姉の言っていることは確かなのだろうし、恋をものにするには見ているだけではダメなんだろうこともよくわかる。
だけどどうしたって相手に近付いたり話したりすることが出来なくて、そのうち私の想いが見ているだけでいい程度のものだと自覚すると、なんだか気が楽になった。開き直ったともいう。
それからは相手が気付こうが気づきまいがどうでもよくなってしまった。だって自己満足の恋なのだ。相手の都合なんて関係ない。ただ一応、人として目が合ったら会釈をする、とか、ちょっと微笑んでみたりとか、その程度のアクションをして「見ててごめんなさい」と自分なりに表現してみた。もちろんこれも自己満足。
そういう生活を始めて一ヶ月もすると、相手に罪悪感だとか羞恥心だとかが剥がれて消えた。
別に後を付けるとか、相手の行動を逐一把握するとかストーカーみたいな行為をしているわけじゃなくて、同じ空間にいるときだけチラリと眺める。自己満足が出来てそれでいて誰も傷つけない恋。ああ、なんて楽しいんだろう。
昔、姉からタイトルだけで借りた恋愛小説は二人の男とか一人の女が繰り広げる愛憎劇だった。カップルだった男女に横恋慕した男。情熱的な愛を浴びせられた女は元の男を捨てて間男を選んだ。穏やかな愛を育んでいたはずの女に裏切られた男は愛に狂って女に病的なまでに執着するようになる。結末は悲惨なもので最終的には間男が元の男を刺し殺しそのショックによって女は自殺。間男は愛するものを永遠に失い獄中で病死して、誰も幸せになれないまま終わった。
それに比べると私のこの淡い恋は、なんて平和なんだろう。紙面に向かう凛とした横顔を見ているだけで幸せになれる。もっとなんて欲張らない。
斜め前の席に座る彼がふっと顔を上げた。周りはプリントに夢中で顔を上げているのは私と彼くらい。先生は黒板とランデブー。誰も見ていないその最中、彼はこちらを向いた。
最近増えたその偶然にドキリとしないわけじゃなかったけど、だんだん慣れてきたこともあって私はふっと息をついて笑った。緊張すると頬が強ばって笑うどころではないのだ。
私はやっぱり「いつも見ていてごめんね」の気持ちを込めて笑う。笑顔は世界共通言語だと思う。仕事だったら謝るときに笑顔なんてふざけてると思われるだろうけど、私的な言葉を交わさないやりとりなのだから怒って見える真顔よりも笑顔の方がいいだろう。なんて。結局これも自己満足だ。
彼はどこかぼけた顔で笑う私を見てさっと顔を逸らした。
…………ああ、やっぱり嫌だよね。
そうと自覚するのは、勇気がいった。
ここのところよく目が合う代わりに、あんなふうに顔を背けられることが多くなっていたのには気付いていた。少し前までは会釈を返してくれたり、気付いていないようだったから、今まで自己満足の恋を続けてきたのだけど。やはりあの反応は、“嫌がっている”ということだ。
実のところ、目が合うようになって浮かれている部分もあった。横からじゃなくて正面から彼を見れるなんてどんな幸運だろうと思っていた。
でも、それもここで終わりにしないといけない。
決めていたのだ。この恋が自分のためだけだと気付いた時に。
相手の迷惑になったとわかったら、すっぱりとやめると。それが礼儀でありストーカー化を回避するためのルールだと。
さあ、私は私が許せないことをしてしまう前に、しっかりくっきりけじめをつけなければ。
そのあとから授業中はひらすら黒板とノートを追った。視線が飛びそうになると教師か時計を見た。結果当てられることが増えて、答えられるようにするため地味に成績が伸びた。
廊下のすれ違いは下を向いて、グラウンドでの体育は友達とおしゃべりに興じた。体育の成績は当然落ちた。
帰宅部の私はいつもグラウンドで走る彼を見ながら読書をしていだけど、まっすぐ帰るようになった。たまには友達とカラオケに行ったりもして、お互いの知らない音楽の趣味を知ってもっと仲良くなったりもした。
恋を諦めたら、いや、期待なんてしていなかったはずなのに。彼を視界に入れないようにするのは、思いのほか辛かった。想いに反比例するようにほかの物事が上手くいくのも皮肉がかっていて惨めな気持ちにさせた。
案外人の心は上手く出来ていない。感情を操るなど傲慢にも程がある。にわか哲学者みたいなことを考えて落ち込む。頭と心は分離出来ても、コントロールなんて出来るもんじゃなかった。
「ばかねぇ」
平気なふりをしているつもりだったけれど、姉にはそそうはに見えなかったらしい。社会人で忙しい姉とは同じ家に住んでいるのにちゃんと会うのは三日ぶりになる。
開口一番「どうしたの、何があったの」と仁王立ちで目の前にいる姉は相応の迫力で私はゴクリと唾を飲んだ。普通にびっくりした。
そのまま有無を言わせず姉の部屋に連れていかれて私は根掘り葉掘り、原因を聞かれた。そして言われたのがあれ。
「ホントにばかねぇ」
「……二回はキツイよお姉ちゃん」
「だってばかだもの」
「自分でもそう思うけど、そんなに何回も言わないでよ……」
「あんた。そんだけ落ち込むってことはそんだけ彼が好きだったってことでしょ?」
思ってもみない事を言われて私は瞠目した。
「え? いや、そんなこと……だって見ているだけでいい恋だったから……」
「あのね、見ているだけでいい恋は自己満足とは確かに言ったけど。そのあとあたしなんて言った?」
「えっと……あ、欲しいのなら自分で掴み取らなければならない、って」
「そう。それってね、回り回って自分のためなのよ」
「……どういうこと?」
姉の言葉はわかりそうでわからなかった。好きになったらとことん一途で一直線、猪突猛進といえる恋愛スタイルの姉は私とは正反対のタイプだ。保身に走って自己満足の恋で良しとしている私とは全然違った。上手くいく恋もあれば、いかない恋もあって、それでも姉はくよくよせずにいつも輝いている。私の自慢の姉だ。
「見ているだけの恋って明確な始まりがない分、終わりも曖昧なの。それってね、意外と尾を引くのよ。
真理香にあたしと同じような恋の仕方をしろなんて言わないけど、終わりだけはちゃんとしておいた方がいい」
「どうして?」
「言ったでしょ、尾を引くって。いつまでもズルズル忘れられないまま同じことを考え続けるのはかなり苦痛よ。現実逃避は優秀だけど万能薬じゃない。夢中になれることがなくなったら真理香は自分を責めなくちゃいけなくなる。“どうしてもっと何かしなかったんだろう”って」
心のなかを覗かれているのかと思った。姉の言葉はあまりにも今の私の感情を的確に表していた。
「なんでわかるのかって?」
エスパーの姉はそう言う。私が口も聞けないままポカンと頷くと、
「経験者は語る、ってやつね」
ぱっちり朗らかにウィンクした。
「あたしもね、初めて人を好きになった時、恥ずかしくて恥ずかしくてなんにも出来なかったの。チラチラ見てはため息ついて。それはそれで楽しかったけど、いざ卒業ってことになってさ。あ、相手は当時のクラスメイトね」
「私と同じ……。……それで?」
「向こうは県外の大学に受かっててそのまま一人暮らし。あたしはここに残った。卒業しちゃって、もう見ることさえ出来ないんだって初めて気付いて、現実に向き合ったら辛くて辛くて仕方なかった。そこに至るまで、恥ずかしくてまともに喋ったこともないから気軽に電話もメッセージも送れないしそもそもアドレスなんて知らなくて、それでも好きって気持ちはなくならなくてどうしようもなかったの。卒業後までに告白してれば何らかの終わりを迎えられたのにそうしなかったから、吹っ切れるまで二年かかったわ」
「どうやって吹っ切たの?」
初めて聞く姉の初恋話は驚きと姉妹の類似性といろいろ思わせたけれど、私が一番気になったのはまさにそこ。
どうしたら、忘れられるんだろう。
「よく言うでしょ、“失恋を癒すには新しい恋が一番”ってさ。彼を忘れたくて大学でいくつか入ったサークルの人を好きになってようやく彼を忘れられた。……新しい現実逃避の種を見つけたともいうんだけど。でもそのサークルの人と付き合うことになって、一緒に過ごすうちに自然と彼を忘れてた。結局トータル三年かかって彼を忘れられたの。ね、すごい尾を引くでしょう?」
ま、最終的にサークルの人ともお別れちしちゃったけどさ。
あっけらかんと言う姉に迷いはなかった。実に姉らしい態度である。
私は新しい恋とやらを想像してみて、それがどうにもよくわからず、首を傾げた。
「でもさ、」
そんな私を見つめながら姉は言った。こころなしさっきとは違う光を帯びた瞳に、私は背すじをピンとはる。姉が何か大事なことを言うのだと思った。
「真理香の恋ってまだ終わってないよね?」
「え、でも」
「でももだってもないよ。卒業もまだだし、直接言われたわけじゃないんでしょ。こっち見んなー! とか」
彼はそんな子供っぽい喋り方はしない、なんて反論しかけて、果たしてそれが正解かもわからないことに気付いて私は愕然とした。
姉の言葉は続く。
「目を逸らすのってはねえ……何かあると思う。なかったら軽く会釈でもすればいいんだから。その子はわざわざ真理香の方を向いたら目が合ったから、びっくりしたか恥ずかしくて逸らしたんじゃない?」
「びっくり、は、ないと思う……。最近はよく目が合うから」
「……ふぅん?」
私の言葉を聞いて途端ににやにやしだした姉はチェシャ猫のように笑う。もったいぶるくせに大事なことは教えてくれない、でもヒントをくれる、そんな感じのときの顔だ。
「それに、恥ずかしいも、ないと思う。今まで何回か顔を合わせたけど、はじめの頃はあんなふうに逸らされたことなかったし……軽く会釈してくれてて」
「ほうほう。それで?」
「それでって、それだけだよ。ただ目がよく合うようになって逸らされる回数が増えて、もうダメなんだなって思ったの」
「あー……なるほどねぇ……なんとなーくわかったわ。真理香。その恋諦めるの一旦ストップね。お姉ちゃんとしてはけじめつけてもらいたいから告白して砕けてこい! って言おうと思ってたんだけど」
「なんか何気にひどい事言ってない?」
「いいから。とりあえず諦めないで、でも見るのはやめること。期間は、んー……一週間、かな。一週間何も変化なかったら、あんたは潔く告白して玉砕しなさい」
「や、やっぱりひどい!」
「何がひどいの。お姉ちゃんアドバイスしてるだけ。あんただって言ったじゃない、見ているだけでいい恋だって。その恋の仕方を変えろとは言わない。だけど
、もう諦めようとしてたんだから。諦めるにはきっぱり振られるのが一番よ。グズグズしているよりも振られてさっぱりして新しい恋探す方がずっと健全だし楽しいし、何より自分が楽よ。自分とは一生付き合っていくんだから、些細なことでうじうじして自分を嫌いになるより好きでいられるようにした方がいいと思うの」
「……お姉ちゃんの言いたいことはわかるよ、でも、」
「うん。傷つくことは怖いよね。わかる。わかるからこそ今のうちの方がいいの。傷が浅く済むから。ずっと治らない傷を抱えてるよりはマシ」
「…………ちょっと、考える」
「そうしてほしい。期限一週間はあるから納得できる答えを出してほしいと思うよ」
私は立ち上がってぐるぐるする頭の中と心のなかとに立ち向かいながら部屋を出ようとした。扉を開いた私の背中に、姉の声が当たる。
「言い忘れてた。あんたが砕けて帰ってきたら、お姉ちゃんが責任もってセロハンテープでくっつけてあげるね」
「…………、ふっ……お姉ちゃん、図工の成績悪かったでしょ。しかもなんでセロテープなのよ」
「わかってるから扱い易いセロハンテープなんじゃない! もー! 姉の優しい心遣いがわからないの?!」
私は姉らしい励ましの言葉にこみ上げる笑いと嗚咽を噛み殺しながら、「……じゃあ、そのときはよろしくね。歪でも、許してあげる」と言った。
姉は「あんたが泣いても泣いても壊れないくらいにはちゃんと治してあげるから」と優しい音で伝えてくれた。
一週間か……。自己満足の恋に向き合うときがきたようだ。
自室のベッドであーでもないこーでもないと思っているうちに私は眠ってしまった。
土日を挟んで一週間。私は悩みに悩んだ。告白することは怖い。でもずっと抱えたままでいるのが辛いというのもなんとなく想像できた。顔も見れない状態で思いばかりが募るのは今の私にはもちろん完璧に想像できたわけではないけど、少なくとも楽しいことではなさそうなのはよくわかった。そこまで行くと自己満足というよりは自己愛もしくは自己憐憫だなと再びにわか哲学者になってみる。
彼とは偶然視線を合わせることのないようにした。これが意外と難しくて、クラスでの用事とか、どうしてもの時はオッケーとする妥協案を姉と相談して決めた。クラスという限られた空間にいてことさら無視をするのはおかしいし妙な誤解も避けたい。
つまり私が自己満足ルールで行っていたことを禁止するだけ。これも結構ハートにダメージが大きかったけど仕方がない。ボロボロになったら姉が不器用な手つきで治してくれるのだ。少しは我慢しないと。
今日はその最終日だった。私は昨日書いた手紙を持って登校した。時を見て彼に渡してミッションコンプリート。突然ただのクラスメートからラブレターなんてもらっても困ると思うけど、顔を突き合わせて振られるのは勇気が出なかった。──手紙なら証拠は残るけど本人さえ言わなければ誰にも知られずに済むと思ったっていうのが本音だったりする。
入った教室の中は閑散としていてまだ二、三人ほどしか登校していない。私はこの静かな教室で本を読むのを日課にしていたので、ああいつものメンバーだなと思いながら座ると斜め前の席にカバンが掛かっていて驚いた。
普段ならこの時間はまだ登校していないのに、と思った瞬間、頭上に影が落ちる。間髪つかずにその影はしゃべった。
「あのさ。今日、放課後暇? ちょっと話があるんだけど」
…………え? お呼び出ししようと思っていた相手からお呼び出しされたんだけど、どういうこと?
「ひ、ひまですけど、なにか」
混乱のあまりロボットみたいなしゃべり方になる。
「いや大したことじゃない……………………俺にはたいしたことだけど」
「えっ、と……?」
「まあ気にしないで。じゃあ放課後、教室に残っててください」
「……はい」
どういうことかよくわからなかったけど、何故か脳内でお姉ちゃんがドヤ顔している姿が唐突に浮かんだ。なんか頬をつねりたくなるからすぐに打ち消す。
兎にも角にも私も自分の目的が変則的にだけど叶えられそうでほっとした。
黄昏の空、沈む夕日。放課後の教室。なんだか少女漫画みたいなシチュエーション。私はこれから自分が行おうとしていることとも相まってヒロインみたいな気分になっていた。おそらく三流くらいの。
好きな人から呼び出されれば少しはヒロイックな気持ちになっても許されると思う。なんて自分に都合のいいことを思っていると、がらんとした教室に彼がやってきた。
「ごめん待たせた。顧問から呼び出されて」
「平気です。用は終わったんですか?」
「ああ、連絡事項聞いただけだから。それよりなんで敬語?」
「いやだって、その私たち、あんまりしゃべったことないから……」
「…………目を合わせるだけだもんね」
「ヒェ!?」
「プッ。相馬さん反応おもしろ」
「えええなんといいますかそのねあの」
急に核心的なところをついてくるものだから私は動揺を隠せない。壊れたキーボードみたいに意味のない言葉を羅列する。きっと顔は真っ赤だ。
「一ヶ月とちょっと前くらいからさ」
笑っていた彼は、声のトーンを変えて話し出した。壊れたキーボードはすぐさまフリーズ。瞬きもできない。
「なんか視線感じるなーと思っててさ。初めは全然気にしてなかったんだけど、ふと気になってなんとなくその視線の先を探したんだ。そしたらそこに相馬さんがいて、目が合うとぺこって会釈してくれたじゃん」
覚えてる、あれが記念すべきファーストコンタクトというやつだ。もうそのころには開き直り期に入っていて、少しドギマギしつつも会釈してみたんだ。「眼福ありがとうございます」って。
「そんときさ、なんかいいなって思って。そのあとも何回かそういうアイコンタクトして、楽しいなって思い始めた矢先、ぱったりとなくなった」
沈んでいく夕日を見つめる彼の目は遠い。なくなったのは、あのとき。顔を逸らされてしまったときから。
理由を言おうか迷った。でも私がここにいるのはあれがきっかけなのだ。たぶん一緒に言ってしまったほうが良いと思う。
室内に流れる沈黙を破ったのは僅差で彼の方だった。私は行き場をなくした呼気を飲む。
「それから全然視線も感じないし目も合わなくなって、俺思ってた以上にショックでさ……気付いたんだ」
「………………何に、でしょう」
彼が言わんとすることが、わかるような、わかっていいのか、自意識過剰なのか、軽いパニックになりながら言葉を促す。
「相馬さんともっと仲良くなりたいなって。出来れば恋愛的な意味で」
口から心臓が出るかと思った。
「あ、あ、あ、………………あい!」
「……くっ、なにそれ、“はい”ってこと? どうしよう相馬さん思ってた以上に面白い……!」
「あ、お気に召しませんでしたか、出来ればクーリングオフは早めにお願いします……」
「するわけないじゃん! この上なくお気に召しましたので、これからどうぞよろしく」
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
それから夢見こごちで彼と帰路につき、夜になって姉が帰ってくると私は真っ先に報告した。
「お姉ちゃん! 私セロハンテープいらなかった!」
たったそれだけで状況を理解したらしい姉はどうやらこうなることを予期していたみたいだ。
「ふふふ、やっぱりね。うまくいくと思ってたのよ。あたしのゴールデンアームが炸裂できなかったのは残念だけど」
「それは炸裂しなくて良いやつだよお姉ちゃん」
「あんたも自分で掴み取ったね。欲しいもの」
「……うん、ありがとう。お姉ちゃんのアドバイスのおかげ」
「どういたしまして。セロハンテープとゴールデンアームが必要になったらいつでも言うのよ!」
「使わなくて済むように頑張ります」
「うむよく言った妹よ。……なんてね。おめでとう。今度その彼、連れてきてね」
「お姉ちゃんに彼氏が出来たらね!」
「なんですってー! リア充一日目のくせに生意気な子!」
「あはははは」
私は彼を紹介する日を楽しみに思った。今はフリーの姉にも幸せになってほしいから。
でも早く自慢したいから“なるはや”でお願いします。
おしまい
お読みくださりありがとうございました。