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俺は月夜の女神に恋をした  作者: 安部野 馬瑠
3話 ダイヤモンドリング
18/19

新たな日常

 なお、その二人を後ろで見守っていた者たちは二人の会話に聞き耳を立て、やきもきしていた。


「へたれ馬鹿兄」

「……なんで言葉を変えたのかしら?」


「おまえら……」


 苛立つ空の妹、首を傾げる佐山。その二人を見て呆れる夜気。

 といった感じに個々の感想を抱きつつ、これ以上二人の邪魔をしないよう。佐山、空の妹、夜気は帰ることにした。

 しかし、佐山と空の妹は不満だったようだ。


「月が綺麗ですね……ていつの時代の人間よ。じれったい!私だったら姉さま(佐山舞)に好きって言えます!」


「あら嬉しい……て喜んでいいのかしら?それよりも。有栖はどうして死んでもいいわと言わなかったのかしら。定番の返しだと思うんだけど」


「それは……一回バカ兄が死にかけたからじゃないですか。しゃれになっていないですし」


「あぁ、なるほど……」


 納得して頷く佐山。


「それより姉さま(佐山舞)。久しぶりに一緒に遊びましょう」


「いいわね。夜気君はどうする?」


 佐山が尋ねると夜気は首を横に振った。


「俺は遠慮しとくよ」


 その返事を嬉しそうにする空の妹。しかし、それを気にする様子もなく、夜気は一人別の方向へと帰っていった。

 

 その翌日。


「このへたれ!さっさと起きろ」


「へたれでいいからあと五分……」


 相変わらずの早朝のやりとりは続いていた。

 ただ、今日は妹に起こされ、なぜか一緒に登校した。

 思わず状況に両親も驚いていたようだったが、兄妹仲良くしているのは別にいいと思ったのか、特に何も言わなかった。

 学校に着くといったん別れて部室で着替えをし、弓道場へときてみるとそこには矢をこれから引く佐山と妹、有栖が居た。


「増えてる……てかどうして」


「どうしてって全国近いからに決まっているでしょ」


 呆れたように答える佐山。


「私はその付き添い」

「同じく」


 戸惑った様子で答える新鮮な姿の有栖。一方、妹は空を睨んでいた。

 その様子を見る限りではどうやら三人共仲良くしているらしい。その様子をみてほっとする空。


「何デレデレしてんのよ!らだしないわね」


「……ごめんなさい」


 姉のように一々口出しする妹。

 もう少し、有栖のように優しくなってものいいんだよと思ったものの、今の妹でなければ朝起きれる自信はなかった。

 そんな、空を見てクスクスと笑う有栖。

 昨日まで無表情なときが多かったのにで笑う有栖に空は驚いた。

 そのことに気づいたのかちょうど矢を射終えた佐山が空のもとへやってくる。


「驚いた?でもあれが本当の彼女なのよ」


「本当の?」


「ええ、どう思った?」


「かわいい……」


 ぼんやりと呟いた空は我に返る。

 空の言葉が聞こえたのか顔を赤くする有栖と、呆れたをして空を見る佐山。


「……心配なさそうね。でも、弓道のほうもちゃんとしてね」


「ああ、わかっている」


「有栖の前ではみっともないとこ見せないようにね」


「それが目的か」


 そこから先はいつものように朝練をした。

 佐山は普通の的、有栖と空の妹はぼんやりと見学しているだけだったが、空はいつも一人の朝練よりも好調で、金的をいつもよりだいぶ早く的中できた。

 もっとも、その後なぜか競争心をだした佐山は、空がやめたのを見て、空の置いた金的で弓を引いていたものの、まったく当たらす空が射形から何から何までこつを教えていった。

 そうやってたちまちの内に朝練の時間は終わり、佐山と有栖は一緒に教室に行き、空と妹もそれぞれの教室へと戻った。

 

 なお、心配していた盗難の件については、何事もなかったように解決していた。

 それを知ったのはお昼時で、佐山、有栖、空、夜気、妹の五人でご飯を食べているときに佐山が話してくれた。昨日のあの後、自首した人がでたかららしい。その結果に有栖も空も首を傾げたが解決をしたことを受けてそれでおしまいとなっていた。

 もっとも、その点については誰も困ることはなく、その報告会を契機に五人でそれ以降一緒にご飯を食べるようになった。 

 当時、佐山と有栖、空の三人だったときから考えると、今は出来事のおかげでみんながより仲良くなれたような気がする。

 こうして平穏な日々が再び空たちに訪れた。


 なお、有栖はその後も髪が再び白銀に戻ることはなかった。

 もっとも、今の空たちにとって、それは些細な事でしかなかった。


 また、最後に弓道の大会結果がどうなったかについてはあえて語らないことにする。

ただ、大会前の波乱、二度のサボり、散々やきもきさせた空の過失は言うまでもなかったがなんとかレギュラーとして出場はした。

 こうして秋は過ぎ去り冬がくれば次は受験と多忙な日々は続くことになるだろう。

 ただ、もうこの幸せを崩すような出来事は起こらない。不思議とそんな気がした。


本編はこの話で終了となりますが、おまけの話があと一話あります。

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