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その五の4 「“海賊王”に!!!、俺はなるっ!!!!」~著作権:引用総括~

 著作権シリーズ全三回。

 掲載してみたところで、ちょっと自分で違和感が。まだ、言い足りない部分があるのに気付いたのです。


 他者の著作物の流用(引用)には、ルールがある。それを守らなければ、罰せられても文句は言えない。

 なら初めからそんなことはしなきゃ良いじゃん。


 何故、皆それがわかっているだろうに、それをするの?


 ていうか、「小説家になろう」で小説を書く、小説家になろうと志す少年少女、紳士淑女の皆。他人様の作品をパクってそれで好評(ポイント)博した(かせげた)として、それって嬉しいモノなの?

 パクった作品が評価されるってことは、裏を返すとあなた自身には評価に値するモノが何も無い、って言われているのと同じだよ?


 それがプロならまだわかる。「バレなきゃ良いじゃん」で、莫大なカネが動くこともあるから。実際、日本人なら誰でも知っている童謡に関して「俺が作詞作曲した!」と届け出て、天文学的な著作権料を受け取った挙句、実はそれが外国の俗謡だったということが後になって判明し、作曲に関する既に支払われた著作権料に利息と罰金を上乗せしてJASRACに返還請求されたという事件もあった(邦詞に関してもその人が作詞したものじゃないと強硬に主張する人もいますが、違うという証拠が無いので邦詞の著作権は未だ留保されているようです)。

 けど、「なろう」で幾ら書いたって一円の原稿料も貰えないし、どれだけの人に読まれたって一円の印税も振り込まれない。ランキング入りすれば書籍化の道が開かれるっていったって、出版社や編集部だって莫迦じゃないんだから、それがパクリならすぐバレる。寧ろ出版後にバレた時の方がヤバイ(人生終了するレベルのペナルティーが科せられる)。ならどうして?


 話は変わりますが、学術論文の場合。

 もし一件の参照も無く一行の引用も無く、そのまま論文を書き上げた場合、その執筆者は「全てあなたのオリジナル理論なのだから、とても素晴らしい」と評価されるでしょうか?

 ……有り得ません。

 一件の引用も無ければ、それは即ち独り善がりな駄文、書き散らかしただけの妄想文として、落第評価されるでしょう。

 先人の言葉を引用し、先人がその言葉に込めた想いや考え方などを取り込んだうえで、それを肯定するなり否定するなりした上で、且つ執筆者自身の考えを表明する。それが論文なのですから。


 筆者は『その五の2 オセロの使い方~著作権:固有名詞~』で、「小説は論文に準じて扱われる」と述べました。そう考えると、小説もまた論文と同じ。先人の言葉を引用することで、その想いや考え方をリスペクトし、そして自分の作品を完成させることが出来るのです。そしてその多くは引用という形ではなく、「テンプレ」とか「パターン」といった形でそれが行われるのでしょうが。


 ここに、一つの名言を引用します。


 「“海賊王”に!!!、俺はなるっ!!!!」


 おそらく誰もが知っている、〔尾田栄一郎著『ONE PIECE』集英社少年ジャンプコミックス〕の主人公ルフィの名言です。

 これが名言とされるのは、「世間一般の人たちが聞いたら嘲笑(ちょうしょう)(あたい)する大言壮語を、至極(しごく)大真面目に唱え、且つそれを大きな声で口にすることで周囲の人に自分の意思を表明し、挙句その目標に向かって実際に行動している」からです。


 自分の夢を口に出せる人って、どの程度いますか?

 それを大声で、それも見知らぬ人の前で言える人って、更に少ないのではないでしょうか?


 そんな『言葉』だからこそ、これは名言なんです。


 だからこの言葉を引用する場合、その引用の仕方は引用者によって完全に二つに分かれます。

 一つは、「莫迦が莫迦なことを言っている」という、つまりその言葉を聞いた人の立場で引用する場合。

 もう一つは、「自分の夢を口にすることで、自分で逃げ道を(ふさ)ぐ為」という、ルフィの立場で引用する場合。


 どちらであっても、あの紙面の、あの大ゴマの、あのシーンが脳裏に浮かぶでしょう。


 そしてその『引用』は、言葉ではありません。その言葉を聞いた周囲の人の気持ちを、或いはルフィの気持ちを。それを『引用』しているんです。

 「世間知らずが莫迦を言う。けど、同じことを自分が言えるか?

 自分はもう世間を少し知っていて莫迦じゃない。或いはそんな空言(そらごと)を言えるほど若くもない。

 だから、酒の入った席で、宴会芸の一端で、そういったことを放言することは出来るけど、素面じゃちょっと言えないよ」

 そんな気持ちが前提にあり、だからこそその『言葉』に二重三重の意味が生まれるんです。


 先人の言葉を引用する。

 否。『言葉』ではなく、それに込められた『想い』を引用する。

 そうすることで、その物語に深みを生み出すことが出来るんです。


 それはつまり、引用元である先人。その作者自身をリスペクトすることにも繋がります。

 ならちゃんと、その人に敬意を表し、その作品を自分の読者に紹介するべきでしょう。


 そう。引用とは、実はその程度の事なんです。


 そして著作権。

 「著作権の所為(せい)で自由な創作活動が阻害される」という意見をよく聞きます。

 けど、それはつまり他人の(ふんどし)で相撲が取れないと嘆いているだけなんです。

 自分の褌に他人の名札がついているのが我慢ならない。そう言っているだけなんです。


 ルールを守って正しく引用すれば、当然のことながら著作権問題など気にする必要もありません。

 『その五の2 オセロの使い方~著作権:固有名詞~』で述べた引用のルールなど、正しく引用する為の礼儀作法でしかないのですから。

 『小説家になろう』の引用の基準だとて、ただ単に「原著作者に対しして礼を失する行いをするのなら、運営側から相応の対処をしますよ」と言っているだけなんですから。


 「著作権を守る」っていうのは、別に創作活動を阻害する為のものではありません。

 著作権を守ったうえで引用すれば、それは原著作権者の評価を高め、同時にそれを引用した人の感性も評価されることでしょう。


 引用したくなるほどその作品を愛しているのなら、その原作者の権利と誇りを守ることを、拒む必要は無いのです。


 「“世界一の文豪”に!!!、俺はなるっ!!!!」


 あなたはそう、叫ぶことが出来ますか?

(2,547文字:2016/05/09初稿)

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