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その五の2 オセロの使い方~著作権:固有名詞~

 さて。前話で著作権法が禁じる盗作と権利者が許可する流用があることがわかってもらえたと思います。しかも、「禁じているけど(違反を)指摘していないモノ」と「使用を認めているモノ」の違いは、ただ将来提訴される可能性があるか否かと言うだけ。やってみないとわからないというのが恐ろしいところ。加えて「禁じている」モノを提訴するか否かは、冗談抜きで、権利者の胸先三寸。権利侵害が一度スルーされたとしても、それが許可された訳ではないというのが現実なのです。


 さてその上で。実際に自分が扱うネタについて、もう一度見直してみましょう。


 著作権が関わるものとして、大きく分けて『内容』『固有名詞』『フレーズ』の三つあります。

 『内容』は、前話で触れました。

 残りの二つ、『固有名詞』と『フレーズ』。

 今回は『固有名詞』について、ちょっと細かく見ていきましょう。


 その前に、著作権が侵害されたと判定される要因というのは、最近ではほぼまとまっています。これは著作権法と数次の判例(実際の著作権裁判で出された判決の要旨)を集約したものです。筆者の2016年01月14日の活動報告でも述べているものの再掲となりますが。


 具体的には、以下の七点。


1. 既に公開されている資料からの引用であること。

2. 引用が「公正な慣行」に合致すること。

3. 引用の目的が正当な範囲に収まること。

4. 引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること。

5. 引用部分がカギカッコ等で明瞭に表示されていること。

6. 引用を行う必然性があること。

7. 出所の明示をすること。


 1.は、当然です。前話でも論じましたが、未公開の「アイディア」は、著作権が保護する内容には当たりません。

 2.は、即ち『引用のルール』です。一応学術論文の場合、一定範囲の引用は認められます。他方、商業キャッチフレーズに他人の著作権がある文言を用いることは、ルール違反です。

 では小説は? と言われた時、画一的な答えは出てきません。「論文」と「ラノベ」と言われたら「全然違う」と言えるでしょうが、「論文」と「文学」にはそれほど大きな差が無いからです(文豪の小説は、文学の論文に近しい扱いをされるから)。では「文学」と「小説」、「小説」と「ラノベ」は? 結論をいえば、権利者の異議申し立てが無い限りに於いて、論文のルールに準じるというのが現状のようです。

 3.は、あくまで必要最小限の引用に留まっていることが重要です。引用箇所が本文に必要であればそれを引用することは(やぶさ)かではないでしょうが、それと無関係な部分まで引用するのは法に許された範囲を逸脱します。

 4.は、本文の分量と引用箇所の分量とを比較して、明らかに引用箇所の分量の方が多いというのであれば、それは法が認めた引用の範囲から逸脱(いつだつ)してしまいます。

 5.は、引用箇所を明示(“”(クオーテーション)マークや『』(カギカッコ)でくくる、インデントで一段下げ、且つ前後一行空白行を置く、など)することで、それが引用である事実を読者に知らしめます。

 6.は、その本文の内容を(かんが)みて、その引用が必要であり、且つそれが必要最小限に収まっていることが条件となります。

 7.は、その出典の明示です。作者名、作品名(論文名)、発表年時、発表媒体。出来ればその出典元の(ページ)数。


 これらが全て出揃って、初めて合法的な『引用』になるのです。


 で、そこまで踏まえて、具体論。


 先程の分類による、『固有名詞』についてをまず論じましょう。

 固有名詞。地名や人名などの他に、物に附された名称があり、これには商標権を登録されいているモノと、されていないモノがあります。


 商標権が登録されていないモノは、自由に使用して良いか。

 否。駄目です。

 明らかに権利者がその権利を放棄し、一般名詞となっているものであれば、その使用は問題ありません(例:「ツンデレ」)。けど、権利者が明確になっている場合、権利者の動向を注視する必要があるでしょう。

 例えば、「ドラまた」。これは「ドラゴンも(また)いで通る」という意味で、〔神坂一『スレイヤーズ!』シリーズ、富士見ファンタジア文庫〕で初出となった言葉ですが、これに関して神坂一氏は一切の発言をしておりません。つまり、「前例がない」為、実際どちらに転ぶかはわかりません。


 次に、商標権が登録されているモノ。これは問答無用で使用は許されない。

 ……否。これもまた、色々複雑なのです。

 例えば、「ホッチキス」。これは日本でもマックス株式会社様が商標登録されています《登録番号第4082534号》。しかし、これは既に一般名詞化している為に使用が限定されることはありません。


 また、異世界転生物の定番の「オセロ」《商標登録番号第2287072号》。株式会社メガハウス様の登録商標です。ところが、メガハウス様はその名称使用に関し、以下のように条件を定めております。

 『 「オセロ・Othello」使用には下記の記載が必要です。

   オセロ・Othelloは登録商標です

   TM&© Othello,Co. and MegaHouse 』

そして名称使用に関しては、メガハウス様と個々に許諾契約を結ぶ必要は無いとHPに明記してあるのです。

 ならば、脚注掲記の方法でそれを記せば、特段の事情無く使用が可能ということになります。


 つまり、商標登録されているといっても、営利目的でない限りほぼ無条件で使用することが許されている物、一定の条件を満たした場合使用が許される物、または事実上無条件で使用が認められない物、がある訳です。何にしても、『何も考えずに使うこと』は絶対に許されない、と思った方が良いでしょう。


 他にも、「コミケ」《商標登録番号第4214641号》。これは有限会社コミケット様が商標登録されています。が、これはあくまで「第三者が主催する同人誌展示即売会については、これらの名称の使用許諾はしない」という差別化の為に行われた登録であり、つまり「商業目的でない限りこの言葉を使用することに制限はない」というのがコミケット様の見解です。……この使用制限に関する文言が昔コミケット様のHP内にあった筈なのですが、現在確認したところその文言は削除されておりました(現在は前段の禁止に関する文言のみ)。昔は逆提訴に対する対抗手段として登録した、という話がどこかにあった筈なのですが……。今は方針変更しているのかもしれません。


 ……これも、一つの事例ですね。前述の「オセロ」とて、「今は」脚注掲記で使用が許されていますけど、商標権者であるメガハウス様が方針変更したら、もう使用が認められなくなるかもしれません。


 権利者の胸先三寸。これは、笑えません。


 さて、「著作権」シリーズ第二回は、この辺で区切らせていただきます。

 第三回は『フレーズ・歌詞』。

 こっちも色々、面倒です。

(2,792文字:2016/05/08初稿 2016/05/09誤字修正)

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