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その十一 (笑)は記号ですか?

 最近、他の方の書いている「小説の書き方」エッセイで、ちょっと気になる記述がありました。


 『(かぎかっことじ)の前には(くてん)を付けてはならない』

 『(クエスチョンマーク)の後には空白(スペース)を入れなければならない』


 こんなルール、日本語にありましたか?


 日本語には、ルールがあります。『その二 ……守破離?』で引用した、「公用文書作成の要領」が一つの基準になっていますけれど、この他にも文部省(文部科学省)その他が定めた様々なルールがあります。けれど、そのどこにも、上記のようなルールは存在しないのです。


 日本語は、まず「文章を終わらせるときには(くてん)を付ける」というルールがあります。

 そして、()(かっこ)「」(かぎかっこ)の使い方としては、「文章(或いは単語)の置き換え・解説」を記述する場合と、「独立した文章を補足」する場合に分かれるのです。

 つまり、()(かっこ)「」(かぎかっこ)の中で文章が完結する場合、(かっことじ)(かぎかっことじ)の前に(くてん)を付けなければならないのです。


 実は、公用文書や法律文などを見てみると、


 ××(△△。)。


という、(かっことじ)の前後の両方に(くてん)が付くという、ちょっとうるさい文章も見受けられるのです。けれど、上述した理由から、(かっことじ)の前の(くてん)には意味があり、資格試験などで条文を記述しなければならない時、(くてん)をつけ忘れたというだけで減点され、それが合否を分けるなどということも別に珍しい話ではないのです。


 が、昨今の小説などでは『(かっことじ)(かぎかっことじ)の前に(くてん)を付けたらうるさい』という理由で、それを省略する場合も多くあり、むしろそれが「小説の作法」だ、と誤認してしまう人が多くいるというだけの事なのです。


 ところが、このルールを逆手に取ると、ちょっとした演出も可能になります。


 『(かぎかっことじ)の前の(くてん)は省略する』というルールを前提に於いて、では「」(かぎかっこ)の中に(くてん)が置かれる場合は、一体どんな時か。


 答、『「」(かぎかっこ)の中に二文以上ある』場合。


 なら、このルールを墨守するのであれば、


 「××。」


 という記述は、『「」(かぎかっこ)の中に二文以上ある』にもかかわらず、『第二文が丸ごと省略されている』ということになる訳です。


 具体的には。


 「いや」


 だと、ただの拒絶の言葉ですが、


 「いや。」


 だと、「おいおい、それで終わりかよ。せめて言い訳くらい続けろよな」と相手が思う、そんな台詞になる訳です。


 また、(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークも、ですが。

 これら、実は日本語じゃないってご存知でした?


 いや、おそらく誰もが知っているでしょう。言われてみるまでは実感しなかっただけで。


 これは、日本語じゃありません。だから、日本語に、(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークに対応するルールは、はじめから存在していないんです。


 そして、『(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークの後には空白(スペース)を入れなければならない』のは、英語のルールです。


 これを、日本語のルールに無理やり押し込んでみると、果たしてどうなるでしょう?


 ××(△△?。)。


 実は、こんな表記が最も正しい書き方になるのです。

 何故なら、(クエスチョンマーク)は記号であって、日本語の句読点ではありませんから。

 「文章を終わらせるときには(くてん)を付ける」というルールに則れば、(クエスチョンマーク)の後だろうと(くてん)を付けなければなりません。

 つまり、【△△?】という文を終わらせる為に(くてん)が付き、その文そのものを()(かっこ)が包み、その外側【××】という文章を終わらせる為に、(かっことじ)の外側にもう一つ(くてん)を付けなければならないのです。


 けど、流石にこれは、うるさすぎます。

 だからこそ、(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークなどは、英語のルールを流用して、『空白(スペース)を入れる』とか、『(かっことじ)(かぎかっことじ)の前では空白(スペース)は省略してよい』(これは、英語の“”クォーテーションマークのルールの流用)という形にしているに過ぎないのです。


 そうすると、(おんぷきごう)や最近流行りの絵文字などは、どうなるのでしょう?


 ここまで来ると、大体想像がつくでしょう。

 そう。(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークのルールを流用する。これが答えです。


 では、(笑)は?

 これは、日本語? それとも記号?


 (笑)の省略形である『w』は、明らかに記号です。ですので、(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークのルールの流用で構わないでしょう。

 が、(笑)はどうでしょう?


 これが日本語なら、(笑)で文章が終わることは許されません。『(笑)。』とすべきでしょう。

 これが記号なら、(笑)の後にはスペースを入れるべきでしょう。(クエスチョンマーク)エクスクラメーションマークのルールを流用して。


 ……ここから先は、解釈の話。「筆者は、日本語だと思う」。それだけです。

 けど、それが世間一般で通用するルールか、と問われると、答えに詰まるでしょう。


 もっとも、(笑)は決して公用語には出てこないモノですので、「公用語のルール」でそれが規定されることは、この先永遠にないでしょうけれど。

(2,316文字:2016/12/22初稿)

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