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47:大准将はダメ出しす(だってかっちょ悪ぃんだもん)

遅くなりました <(_ _)>

 

前回のお話

洗脳されてた機関士長の娘さん

ガートライトの発案でわずかに回復

そしてようやく開発試験場へと帰還する

 

 

 

 ガートライト達が第35開発試験場を粛々と離れていく様子を見ながら大准将と渾名されるゴードウェイイルは、少々頭を抱えていた。

 傍らにはまさに幸福を体現したような表情を見せるハイネッゼを横目で見つつ、ゴードウェイイルはしばし回想する。

 それはそうであろう。本来であるのなら、形式的なはずの婚約が実際の質を持って台頭したという事だったからだ。

 

 全部ガートライト(ぼう)が悪い。

 去り際にあんなものを渡されれば、呑まずにいられぬのが人情というものだ。

 そして屋敷に戻り灯りを消して、いわゆる成人指定(X18)といわれるPictvを見ながら渡された酒を堪能していると、私室のドアがすぅと開きハイネッゼが入って来たのだ。

 

 ゴードウェイイルとハイネッゼは婚約者という事もあり身分も上位であるゆえに、開発試験場内の一等地の屋敷を宛がわれていたのである。(もちろん同居とはいえ、貴族である彼等には従僕が何人もいる訳で2人きりという訳ではない)

 だがあくまで形だけの婚約であるので、互いの部屋の行き来などと言うものは今まで皆無であった。

 なのに今日に限ってハイネッゼはドアをロックしていたにも拘らず、入って来たのだ。

 

「………ハイネ、その恰好は………」

「ふふっ。似合いませんか?」

 

 ひらりと広がる裾を摘まみ軽めにカーティシィを尽くすハイネッゼに、ゴードウェイイルは思わず目を奪われる。

 そう。ハイネッゼがその身に纏うのは、チャコールイエローのスケスケのネグリジェ1枚であったからだ。

 それはちょうどいま現在見ていたベッドの上で悶えるPictvのヒロインと同じ姿であったのだ。

 誰の差し金やらと酔いのまわった頭で考えるものの、ハイネッゼがいきなり抱き着いてきたことで中断させられてしまう。

 

「………このようなはしたない女はお嫌いですか?」

 

 身体を微かに震わせながらこちらを上目遣いで窺がい見るハイネッゼに、ゴードウェイイルは拒絶することが出来なかった。

 それはPictvと彼女―――ハイネッゼが同調リンクした故の事でもあった。実際ゴードウェイイルにとってどストライクだったのだ。豊満な肉体と妖艶な表情を魅せたハイネッゼは。

 

 つまりこの時点から、形だけの婚約ではなくなったという訳だ。

 

 ゴードウェイイルの腹積もりとしては、ある程度時間が過ぎたところで婚約を解消して自身の伝手で有力貴族の若者を紹介する予定だったのだ。

 どの道あとの祭りである。

 ゴードウェイイルは妻を娶る事はなかったが、それなりに女性遍歴は多々ある。

 それこそ美人局まがいの者や暗殺目的の者まで含めると、枚挙に暇がない程であったのだ。

 

 そして高齢であるにも拘らず、ゴードウェイイルの性欲それは20代あるいは10代のそれに比肩しうるものだった。つまりとても激しい。

 それはとても処女はじめての女性では耐えられないであろうな、常日頃は抑え込んだその情欲を酔いと雰囲気に呑まれてやってしまった訳である。合掌。

 目覚めた時に同衾していたハイネッゼを、見て思わずゴードウェイイルは思わず頭を抱えてしまった。

 当の本人は満足そうにそのゴードウェイイルの逞しい腕を抱きしめながら、安らかに笑顔を見せて眠っていたのだった。

 

 その後従者達の満面の笑みを見て、ようやく嵌められたことに考えが及び改めて頭を抱える事になるのだが、既成事実を作られてしまった以上ゴードウェイイルとて腹を括る外なかったという話である。

 そして何より貴族子女であるにもかかわらず、ハイネッゼの行動力に舌を巻くしかなかったゴードウェイイルであった。

 

 そんな一幕もあったが、現在成すべきことは新たな戦艦ふねの建造なのである。

 そうそう色事ばかりにかまけていられぬゴードウェイイルであった。(だがタガが外れると、という話もある)

 事ある度に人気のない部屋や場所にしけ込むのはやめてほしいと、ヴィニオとジョナサンズ達が思った程だ。(決して口には出さないが)

 

 とりもなおさずガートライトが率いる試作第1号戦艦を見送ったゴードウェイイルは、さっそく仕事に取り掛かる事とする。

 移動工廠艦ムーンヴェイスは、同型の戦艦クラスの艦船を同時に2隻の改修と修繕が可能となっている。

 現在は試作1号戦艦の同型艦がロールアウトし、これからはガートライトから託された人型機動戦艦の着工に入るところであった。

 

 フラワーズヘヴンからサルベージし(あさっ)てきた艦船の選別を行い、使用できるものから順に改修と補修をしてから本格的な建造へと入る予定ではある。

 いまだ前準備段階であるので、ゴードウェイイルも資料を見ながら確認作業をしているところであった。

 

「う~ん………」

 

 そしてゴードウェイイルはホロウィンドウに映し出される船体の三面図を、顎に手を当てて唸り見ていた。

 

「どうかされたのですか?旦………准将」

「今は誰もおらん、好きに呼ぶといい」

「………はい!旦那様」

 

 ハイネッゼに声を掛けられ目尻を下げながら、甘々な声音でゴードウェイイルは言い諭す。

 それに対し笑顔で返事をするハイネッゼ。なんとも甘々しい空気が漂い出す。

 

「それでどうされたのですか?」

「ああ。ちぃーとふねデザイン(かっこう)がなぁ………」

 

 現在の作業行程としては、各関節部の作製と強度と耐性の確認テスタを繰り返し行っており、全体の建造自体はまだまだ先の話となっている。

 だからこそゴードウェイイルは、アレクスが設計したこの船体が気に障ってしまった。

 

「なぁ~んかよぉ~恰好(かっちょ)良くねぇんだよなぁ~、こいつ」

 

 ゴードウェイイルは画面を指差し、人型のデザインをなぞりそう言う。

 

「そうなんですの?」

「ああ、まるで“シンセツな前屈くんだ”」

 

 艦橋部分が頭部になるように、人型時に後方へと少しだけ倒れるような形態になる訳なのだが、確かに少しばかり人としての形としては違和感を持つだろうものであった。

 ちなみに“シンセツな前屈くん”とは、背中の骨が変化し盛り上がるという身体的特徴を持つ青年が親切をモットーに人々と温かな交流を持つというコメディヌPictvである。

 その前屈くんの姿と艦の形がとても似ているのだ。

 

「船の性能と形状をかんがみると、やはりこういうものなのではないのですか?」

 

 ハイネッゼの指摘するように確かのその通りではあるのだが、一部納得のいかない感情もゴードウェイイルにはあったのだ。

 

「だってこいつ恰好(かっちょ)悪ぃんだもんン………」

 

 口を尖らせながらそう言うゴードウェイイルを見て、まるで子供みたいな素の姿を見せる様子にハイネッゼは思わず抱き着いてしまうのであった。

 

「おっ、こら、ハイネ」

「ふふふ~、旦那様ぁ~」

 

 

 

 

「つー訳で、こいつを何とかしたい。何かいい案はねぇか?」

 

 翌日緊急会議と称して呼び出されたザーレンヴァッハと第35開発試験場の面々と移動工廠艦ムーンヴェイスのスタッフ達は、突然のゴードウェイイルの発言に目を剥く。

 確かに目の前に映し出される艦の姿は、あまり見映えのするものではなかった。

 ただこれ以上この艦をどうすればいいという考えも、全員が思い浮かばなかった。

 

「これ以上は耐久性等を考慮しても、致し方ないかと………」

 

 そして皆を代表してザーレンヴァッハが、ゴードウェイイルへと具申する。

 

「う~ん。………お前等はどうだ?何かねぇか?」

 

 ハイネッゼと同様の言葉を言って来るザーレンヴァッハを見つつ、それから視線を移し視点と意識の切り替えのつもりでそちらに聞いてみる。


『『『『『ボク達ですか?』』』』』

 

 ホロウィンドウに表示されたもう一群の、15、6才程の少年少女がゴードウェイイルへと言葉を返す。

 

「おう!どんな素っ頓狂なもんでもいいぞ。なんせ艦長が艦長だから、どんな突拍子なもんでも俺が許可してやる」

 

 ガートライトがいないことをいい事に、言いたい放題のゴードウェイイルである。(その後やりたい放題になるのだが)

 

『それならメインバーニア部分に頭を作ればいいのでは?』

『そもそも頭いるんでしょうか・腕と足が有りさえすれば充分だと考えます』

「う~ん、でもなぁ~」

 

 彼等の言もにべもない。それでもゴードウェイイルは諦めきれないのか唸るばかりだ。

 彼等第3世代とも言えるジョナサンズ―――ニュービーズ達は、他のジョナサンズと一風変わったシステムを用いている。

 この十数体のAI達は、個々で存在し(あり)ながら全員の思考を接続リンカしているのだ。

 であるから個であると同時に1つの集合体による総体という、人間ではありえない存在ものとなっていた。

 他者に自身の考えや思いが筒抜けな状態など、人間であればとても耐えられない状況をシステムとしてこのニュービーズ達は気にすることもなく認識しているのだ。

 

 とは言ってもそれぞれの個性はもちろんあり、発言する者とそうでない者などと色々と特徴があったりする。

 それらの意見を聞きながらも、ゴードウェイイルは眉間に皺を寄せ腕を組んで唸る。

 確かにそう言う手法もあるだろうが、それをホロウィンドウの人型を見ながら想像してもどうにも得心できないものがゴードウェイイルにはあった。

 

「それ、かっちょ悪くねぇか?なぁ」

『『『『『………………』』』』』

 

 あくまで格好良さを求めるゴードウェイイルに、周囲の人間は(ザーレンヴァッハと研究員、ニュービーズ含め)言葉が出なかった。

 一体これ以上どうしろと言うのかとザーレンヴァッハが口を開こうとした時、ニュービーズの1人から意見が出る。

 

『………変形させるのはどうですか?えーと、こんな感じです』

『おおっ』『あ、いいんじゃね』『うんうん、これなら~』『やれるかも』

 

 思考の共通認識自体は少しばかりのタイムラグを用いているので、それほどあからさまに個体の意識が阻害されるものではない為、このような会話も成立する。

 そして新たに表示されたホロウィンドウには、簡易な船の形である部分(・・・・)が変形する様子を再現していた。

 

「おおっ!こいつはいいなっ!何よりかっちょ良いっ!!」

 

 それを見たゴードウェイイルは思わず破顔し絶賛する。

 だがザーレンヴァッハと研究員達は、疑念の目を向ける。

 

「………しかし、これですと更に耐久性に難が出て来ると考えますが」

 

 ザーレンヴァイスが見るに、少しばかり現実を見てないと言ってもいいものであったのだ。

 それに予算の都合もある。さすがにこれはどう見ても予算を大幅に超える恐れがある。

 

「まぁ確かに、これを見て必ずやれるとは断言できねぇが、それでもやってみる価値はある。つーか俺がやってみてぇんだ。所長!予算については俺の方からも打診してみる。やらしてみちゃあくれねぇかな?」

 

 艦船建造の責任者はゴードウェイイルではあるが、この第35開発試験場の最高責任者はザーレンヴァイスである。

 大准将と言えど、そのあたりの機微は心得ているのだ。

 

「………まずは艦長たるグギリア大佐に確認と了承を取りましょう。………まぁ、すぐに了承するでしょうがね」

「よっしゃ!じゃあ、こっちはこっちで作業を進めとくからな」

 

 すでに了承されと認識したゴードウェイイルは、すぐさま席を立ち移動工廠艦へとスタッフ共々行ってしまった。

 全員が全員、新しいいオモチャを与えられた子供のようであった。

 ザーレンヴァッハは溜め息を吐いて、ニュービーズ達へと指示する。

 

「君達AI(ニュービーズ)は、ヒルハート准将の指揮下に入り行動してほしい。まずは例の部分の構造計算と耐久性の確認を厳にして作業してくれ。あとあんまり無茶な事はしてくれるなよ?」

『『『『『了解(I.K)。ボク達ニュービーズはこれより作業に入ります』』』』』

 

 ちょうどその時、ガートライト達試作第1号戦艦はエイディアルス航路を外れ豪華客船マリィ・セレストン号を発見したと報告があり、ザーレンヴァッハは生半に驚かされたものであった。

 もちろん艦の改造にあっては二つ返事で了承され、アレクスは変形に則したデザインと構造設計に追われる事となる。

 やがてそれに追随して各関節部の構造等も見直されることとなり、それにより費用も膨れ上がる事になった。

 

 その増えた費用に関しては、参謀本部からザーレンヴァイス公爵名義で予算の追加が為されることとなり、ザーレンヴァッハは心底安堵したのであった。

 たまたまジェネレイターが完成したことで、予算を申請した降りたモノがこれほどの規模になるとは思ってもみなかったからだ。(全部ガートライトが悪い)

 だがその時の参謀本部長ケィフト・ザーレンヴァイスの物言いに、ザーレンヴァッハはガートライトにスマンと心の中で詫びた。

 

『“予算の追加の分はガートライトに働いて返してもらうので、貴君は気にしないでいい”』

 

 嫌われてるのか信頼されているのか。なんとも判断に迷うザーレンヴァッハであった。

 

 

 

 そして3か月後。

 第35開発試験場に帰還した翌日。ガートライト達試作第1号戦艦等クルーは、さっそく新型試作戦艦の起動運用試験に駆り出されるのであった。

 

 

 

 


(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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