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43/55

43:捜索するも絡まれる 2

短いです

前回のお話

 

艦を抜け出たダルクヴェルとアイナクラィナは都市を満喫

捜索を始めるアレクスとレイリンは何故か色々と絡まれる

 

 

 この中継都市の構造としては全部で3層に分かれている。

 すなわち、港湾部分及び商業工業施設の上層部。

 次に多くの平民と貴族が居住している中層部。

 そしてエネルギー関連の施設が多くある下層部である。

 

 アレクスは現在その下層部へと足を進めていた。

 結局ガートライトからの許可を貰い彼女達5人に状況を説明し危険に及ぶ恐れがあると言ったのだが、少尉だけでは心配ですと言われてやむ無く同行を許したのだが………。

 

「ふぇっ、へぇへっへ。馬鹿な奴等だ。こんなとこに来るなんざ、ちぃとは勉強代にはなるだろうぜ?」

 

 目標の後を追うように、この下層部ばしょに降りたのだが、早々にこのようなならず者(やから)に絡まれてしまった。

 全部で7人。

 

 リーダー格の男はそれなりに大柄な体格ではあるものの、ただの腕力バカとアレクスは判断する。

 おもむろに腰に収めている電雷棒スタナロッダを右手で掴む。

 何があったとしても彼女達は守らねば。そんな決意をアレクスは固める。

 背後の彼女達は小さくある声音で辛辣な話を交わしている。

 

「3点」「4点」「1点」「−1点」「0点?」

「え〜?あれで4点って高くないですか?たしかに肉付きは良さそうですけど、野生ワイルダ系にしては崩れてますよ、顔」

うちの男共基準だもん。これがアレクス様基準なら−10点だよ、もちろん」

「あの目だけで失格アウタだと思います。存在を疑います」

 

 そんな男達への批評に、余裕ぶっていた男達がいきり立つ。

 

「てめぇら、下手に出てりゃ、付け上がりやがって!」

 

 彼女達5人も全員が武器ロッダを手に準備万端であった。

 リーダー男の言葉を合図に全員が得物を手に構えを取る。

 一触即発という雰囲気の中、そこに年若い女性の掛け声が響いてきた。

 

「とぉ――――――――うっっ!!」

 

 上空から飛び降りてきたその影は、リーダー男の頭を蹴り飛ばす。 

 

「ギッばっ!」

 

 蹴られた男は、そのまま壁にぶつかり気を失い仰臥する。

 アレクス達はただそれを呆然として見る。

 

「はっはー、久々だねっ!そりゃ!だりゃ!どぉ〜〜りゃっ!」 

 

 揺れる髪を靡かせ、その女性はその一瞬で他の6人を無力化していった。

 

「ぎゃぼっっ!」

 

 最後の1人が倒されドサリと音を立て崩れ落ちた後、その女性は手をパパンと払ってこちらへと向き直る。

 

「大丈夫だった?」

 

 アレクスはその姿に見を瞠るも、心中を表すことなく平静を装って彼女へと答える。

 

「ええ、助かりました。僕はアレスクと言います。あなたは?」

「あたし?えーと………モーツェルテって名乗ってる」

 

 彼女―――モーツェルテは少しだけ焦りながらそう名乗る。名乗ってるね。アレクスは胸中で頷く。

 

「そうですか。実は僕達は道に迷ってしまってここのようなまで来てしまいまして、本当に助かりました」

 

 実際は貴女を追いかけて来たですが。

 アレクスは適当な理由を述べてモーツェルテへと話していく。

 だが、アイナクラィナ・ムハマンディ―――本人が目の前に現れるというのは想定外であった。

 

「そっかー、そりゃ災難だったね。ここまで来たんだし、良かったらさちょっと行ってみない?」

「?どこへですか?」


 イタズラっ子のようなそんな表情でニカリと笑顔でアイナクラィナが言って来る。

 

「闘技場。この先にあるんだ。けっこー面白いよ」

 

 屈託のない笑顔を見せてアイナクラィナが先を進む。

 アレクスはとりあえず艦へ一報を入れて、その後を追うことにする。 

 

 

 

 目標を追いながら進んで行くと、一軒の食事処をレイリンとエルクレイドは発見する。

 すでに相手はそこを出ているのだが、ちょうど昼時ということで2人は食事を摂ることにした。

 ここに来る迄すでに都合3回男達に囲まれ、その都度撃退していた。

 ちょっとだけ精神的に疲れたこともそんな気分になった理由だろう。

 

「ラシャ~~っ」

 

 何やら古めかしい木造性の引き戸を開けて中に入るとL字になったカウンターの前で数人の客が、器に入った長細いものを美味そうに啜っていた。

 

「……………こくり」

「へぇ………」

 

 コクリとレイリンが喉を鳴らし、エルクレイドは何やら感嘆の声を小さく上げる。

 1人はその匂いに、1人は見たことのない料理に視線を注いだ。

 

「ラ・ウメ―?」

「なんだろうね。まぁ頼めば分かるだろう」

了解(I.K)

 

 壁に貼られた細長い板に料理の名前らしきものがいくつも並んでおり、その中の1つをレイリンが口にしエルクレイドが首を傾げつつも取り敢えず注文をしてみることにする。

 

「えー………ラ・ウメー1つ」

「アイヨー!ラ・ウメーいっちょ!」

「チャース・ウメー特盛、ギョザー3つ」

「アイヨー!特チャー・メーいっちょ。ギョザさんちょー」

 

 エルクレイドが慎重に値段の安く無難そうなものを頼み、レイリンが挑戦するかのように別のものを頼む。

 

「えっ?特盛りなんてあるのか?」

「あそこ………」

「………確かに。まぁ、今はいいか」

 

 エルクレイドがレイリンに気になったことを訊ねると、レイリンが指差したところには確かに“大盛り”“小盛り”“特盛り”と表示されその下には料金が示されていた。

 食に関してはチャレンジャーなレイリンである。

 

「おマチどー」

 

 程なく目の前に料理が置かれる。

 エルクレイドの前には通常の大きさの、そしてレイリンの前にはそれよりかなりの大きさの洗面器ワッシュバケタ程の深皿に入ったものが置かれる。

 

「ふぉおお………」

「これは………食べ切れるのかい?君」

問題無し(N.P)、です」

 

 その量の多さにレイリンへ訊ねるも、本人は意にも介さず平然と答える。

 本人が問題ないというのだからと、エルクレイドも気にするのをやめる。

 そして支払いを済ませたエルクレイドは、改めてラ・ウメーの入った器を見やる。


 深皿の中には、パスタのような細長い麺に薄切り肉と葉野菜、渦巻状の白い物体が載せられたもの。

 目の前に無造作に置いてあるスプーンとフォークを手に取ろうとして、他に何本もの棒が立てかけられているのが目に入る。

 一体なんだろうとエルクレイドが首を傾げると、レイリンがそれを手に取りパチンと2つに割って料理を食べ始めた。

 

「それもカテラリーなのかい?」

「ずっずっず………。そう、艦長に教わった。早く食べないと麺が伸びる。」

 

 レイリンのその言葉に、エルクレイドは慌てて麺を掬い口へと入れていく。

 

「おおっ!美味いなっ!艦長の料理にも引けを取らない」

「同意。ずっずっずぅ」

 

 エルクレイドがスープを啜る。その茶色い汁は滋味深く、」あっさりとしてるのに深みと味わいがあるものだった。

 2人は夢中になって貪るように食べていく。

 

「ギョザさんちょ、おマチ!」

 

 カウンターに置かれた皿に載せられた料理は、5個3列に並んでいて焼き立てのいい匂いで2人の鼻腔をくすぐって来る。

 5つ並んだ白い三日月型のそれは、焦げた場所でさえ艶めいた彩りを感じさせた。

 思わずそれを凝視し思わず喉を鳴らしてしまったエルクレイドに対して、レイリンは無言で1列分を分けエルクレイドの方へと位置を変える。

 

「………どうぞ」

 

 眉間に皺を作りながらもエルクレイドへとそれを勧めていっった。

 

「ありがとう。いただくよ」


 遠慮すべきとも思ったものの、その匂いには抗えず礼を述べてその1つを口にと入れる。

 

「あっつ、!はふっ、はっふっ!!」

 

 口に入れ噛むと、カリカリとした皮を破り熱々の汁が口の中へと広がって肉の食感を感じ取ることができた。そして咀嚼していくと、熱が収まり汁と肉、そして野菜のシャキシャキが入り混じり頬がきゅうと締まる。

 

「これは、美味いな!」

 

 エルクレイドは夢中になってそれを食べていく。残り1つとなったところで、レイリンが黒い汁のようなものを着けて食べているのが目に入って来た。

 

「少尉、それは?」

「これをつけると、また格別です。はぐはぐ」

 

 2本の棒で器用にギョザを挟み、汁につけて頬張る。

 すでにメインの料理を平らげて、ゆっくりと堪能すようにギョザーをレイリンが食べる。

 エルクレイドが視線を移すと、たしかにテーブルの上には小皿と各種調味料が容器に入れられ並べられていた。

 

「これとこれ、あとそれ。適量入れてください」

了解(I.K)。では」

 

 エルクレイドはレイリンが指差したものを少量小皿へと落とし軽くかき混ぜギョザーをそれにつけて食する。

 

「はぁ〜………。コレは………」

 

 エルクレイドは溜め息を吐きながらしばしその余韻に浸り、つい皿へと手を伸ばすもそこには何もなかった。

 

「…………くっ!」

 

 食べたりなさを感じ改めて注文しようと顔を上げるも、それをレイリンに止められる。

 

「中尉、お急ぎを。来てます」

 

 ちっ、あいつ等しつこいな。エルクレイドはそれに少しばかり壁癖してしまう。

 先程からよくこちらの位置を特定してくる。

 エルクレイドは急いでラ・ウメーを食べながら、合間に小声でレイテへと訊ねる。

 

「何かこちらを特定する術があるのかな?レイテ、ちょっと調べて欲しいんだが?」

『はい、アーエンデルト少尉の背中に発振パルスが先ほど1時間前から機能しています』

「なっ!マジっ!?」

『マジです』

 

 厨房の中をまじまじと覗き込む表現をしていたレイテとジョナサンズは、カウンターにやって来てあっさりと原因を示唆する。

 エルクレイドは慌ててレイリンの背中を見て検める。

 

「んー………っと、これか?」

 

 エルクレイドは背中の下辺りにくっついている何かをつまんで取り剥がす。

 

『はい、それです』

 

 それは丸いボタンのように平たいものに虫のような脚が6本左右対称についているものだった。

 エルクレイドは手近にあったゴミ箱へとそれを投げ入れ、外の様子を見てみる。

 

「十数人ってとこかな」

 

 そんな呟きを漏らすと、端の方にいた客2人が慌てたようlに言い合いを始める。 

 

「おいっ!プルゥティアム一家ファミルムの奴等が集まってんぞ?お前何やった!?」

「お、俺は何もやってねぇよっ!この前若頭(サブリズ)の女寝取ったって、お前自慢してたろうがっ!」

「ばっ!あれはあの女のふかしだよっ!俺の有り金全部持ってかれたんだぜっ!ちくしょっ………」

 

 ちらりと会話を耳に挟むと、エルクレイドはなる程なと納得の顔をする。

 どうやら裏社会ドラフクープの人間が爵位を手に入れたという話かと。

 

 爵位を手に入れる方法としは蛇の道(スエェグ)野道は何とやらと言うもので、衰退寸前の爵家を婚姻関係を結び係累を得るというものだ。

 そもそも貴族社会に対してそれほど興味のないエルクレイドではあるが、そのような話を耳にすると流石に穏やかではいられない。

 に対しはそれなりに愛着はあるのだからだ。

 少しばかり眉間に皺を寄せつつ、それでも任務を思い出しそれを優先すべく店の人間へと訊ねる。

 

「裏口どこです?」

「コッチー、スグ行ってー」

 

 追い立てるように店員が指し示す方へとレイリンを伴いエルクレイドは移動を始めた。

 まぁ彼等にはこのあたりを右往左往してもらうことにしよう。エルクレイドはそんな事を思いながら店を出る。

 こうしてエルクレイドとレイリンは何事も揉めることもなくマーカーへと向かって行った。

 

 食事処の前で待ち構えていた男達は、しばらく経ってゴミ箱に捨てられた発信機見つけいなくなっていることに気づき大慌てでエルクレイド達を宛てどなく探し始めることになる。

 そして意地になったロイオンは、更に人員を動員して捜索するのだった。

 


 



(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

次話はなるべく早めに更新したいと思います m(_ _)m

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