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3:懐かしき友人との再会

この人脇役のはずだったのに、あれ?

 

 

 出張事務所の所員さんについて行くと、応接室らしき部屋に眼鏡 (今どき)を付けたガートライトと同じ年頃の銀髪をなびかせたヤセ気味のイケメンが紅茶を静かに啜っていた。


「久しぶりだな。ガートライト」

「お、おまえは………ザーレンヴァッハか」

「………相変わらずか―――。十年来の友人にその態度」

「わりぃわりぃ。えーと1年、いや2年振りか。元気だったか?」

「1年7ヶ月と16日だ。まぁ、何とかやってるよ」


 キクオ・ザーレンヴァッハの対面のソファーに座るガートライト。


「ところで何でお前がこんな所にいるんだ?」

「んー、まぁお前がこれから向かう所の責任者が俺なんだ」

「はぁ〜?お前そんなに偉くなったん?」


 ザーレンヴァッハがおもむろに立ち上がり敬礼をする。


「エルファーガ帝国軍兵器開発局第35開発試験場所長技術大佐 キクオ・ザーレンヴァハだ。ようこそ第35開発試験場―――ハーベスタルフルートへ」


 えっらい出世しんたんだなぁーお前と思いながら返礼する。


「エルファーガ帝国軍試作型戦艦艦長としてガートライト・グギリア大尉、本日付けでこちらに着任いたします」


とたん2人で爆笑する。


「「あっはっはっはっはっは―――――――――っ」」


 似たもの同士の2人であろう。



   □


 その後、部屋を出て軍専用発着場から往還連絡船シャトルに乗り込み2時間程をかけて件の開発試験場へと向かう。


「でも、よく俺が今日ここに来るって分かったな」

「ん?あぁヴィニオ嬢からメールを貰ったからな」

「え?、ヴィニオお前そんなことしてたの?」

『そうですよガーティ。この1ヶ月開発試験場の人員、人間関係、システム等あらかた調べてあります。お久しぶりです。キクオ様』

「あぁ、久しぶりです。ヴィニオ嬢」


 ジトリと額に汗を感じながら挨拶するザーレンヴァッハ。


「程々にお願いしますよ。今のところさしたる問題はないんので………」

『そうですか?階級を自分の実力と勘違いしてる方の整理などは造作も無い事ですわよ?』


 ピクっと肩を揺らしガートライトの胸ポケットを凝視して、ザーレンヴァッハはヴィニオにお願いする。


「ぜひ、その辺のところは後ほど連絡をして頂ければ有難いのですが……」

『ええ、もちろんです』


 そんな様子を見てガートライトがくくっと口を歪ませて笑う。


「相変わらずヴィニオには頭があがんねぇんだな、お前」

「はん!お前だってあがんねぇだろうが、ヴィニオ嬢にかかれば誰もが丸裸にされるんだ。並みのサーヴァントAIじゃ何万台かかっても相手にならんだろう。もしかしたら帝国の中枢部まで入り込めるかもしれない逸材だ。どこで手に入れたんのやら……」

『全てはガーティのせいなのです』

「えー………」

『この子は小さい頃からどうして?どうして?と聞きたがり調べたがり問いたがりだったのです。その度に私がネットワークへ潜り込みあれこれ調べて教えてきました。 しかし、その“どちて”は際限のないものでした。そんな中で私に私という認識が確立しました。ありていに言えば、自我 (?)というものが芽生えたと言えばいいのでしょうか。普通のサーヴァントAIガーティの“どちて”によって変質したのが今の私です。ですから全てガーティのせいなのです』


 ザーレンヴァッハは今まで知らなかった事実に口をポカンと開け、ガートライトはそう言われ初めてそんなこともあったなぁーと思いを馳せる。



   □


 グギリア子爵家嫡男として生まれた当初から、両親にかまって貰った記憶があまりなかった。いつも側にいたのは、執事のトッチプスとメイドのリキャラルとサーヴァントAIのヴィニオだった気がする。仕事に忙殺されていた両親は帰ってくる度「ガーくんただいまーッ元気してたー?」「ガートライトほらほらちちだぞぉー。かわいいなぁーもー」などと言ってほっぺ同士をグリグリしたり、思いもよらぬ力でギューとハグされて苦しんだりと、年に両指で数える程はあったようなので、記憶にはあまりないのだが愛情はあったのだと思う。その分、ヴィニオやトッチプスらに甘えていた覚えがある。

 

 そんな生活を過ごしていた幼年学校8学年時のある日、放課後校舎の周りをランニングしていた時に、それに出会った。木々に隠れて見ていると、1人の人間を囲んで3人の人間が殴る蹴るをしていた。

 4人とも年の頃はガートライトと同じ位か、蹲り頭を庇うように抱えながら耐えている少年に、墓の3人は執拗に蹴りまくっている。ときおり「このやろう」「いうこときけよ!」「めかけのこが」という罵声が聞こえる。

 ガートライトは溜め息を吐くとヴィニオに問いかける。


「サージボールはどこら辺にいるんだ?ヴィニオ」

『1番近いのは校舎反対側100mといったところです』

「んじゃ、呼び出しちゃって」

『分かりました。ガーティ』


 しばらくすると、校舎を越えて|丸いボールのようなもの《サージカルアイボール》がこちらにやって来て、その現場を捉え警告を発する。


『生徒間の諍いは厳しく禁じております。ただちに整列して指名、学年時を申告しなさい』


 3人は蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げ出す。サージボールはそれを追い掛ける為に去っていった。


「おーい。だいじょぶかー?」


 蹲っていた人間は何とか体を起こすと、力弱く立ち上がりガートライトと向き合う。


「ありがとう。助かった」


 見たところガートライトと同年時かひとつ上といったところか。


「いや、俺は何もやってないよ。たまたまサージボールが通りかかったんだろう」


 訝しそうにガートライトを見つめる少年。


『致し方ありませんよガーティ。フォルトオレル伯爵家といえば帝国でも名だたる名家です。非嫡子でもそれなりの教育を受け、人品の選別を行うのです』

「はぁーそりゃ難儀なこって」


 しょせん男爵家の域を越えぬ己にとって対岸のなんとかなのだ。


「な、何だ今のは?」

「こいつはサーヴァントAIのヴィニオだよ。俺の相棒」


 胸ポケットに入れてある端末をポンポンと叩いてみせる。


「いや!そんなサーヴァントAIなんて俺は見たことも聞いたことも無い!」

「なら、君はひとつそういう物があるのを見て聞いたわけだ」

「ていうか、なぜ俺の出自を知っている。お前もハールノンの取り巻きか?」


 どうやら色々あり過ぎて猜疑心の塊になっているようだ。


「冗談だろ?こんな子爵家の一子などは歯牙にもかけないよ。君が伯爵家の人間だと分かったのは、奴等の言葉とヴィニオの力だよ」


 少年は力なく肩を落とし立ち去ろうとする。それをガートライトが呼び止める。


「時間あるなら、お茶でも飲まないか?」


 幼年学校を出て歩くこと10分。瀟洒な外観の建物に2人は入って行った。外の看板に掲げられている店名は喫茶オルダと見て取れる。


 店の奥にあるテーブルに腰掛け、マスターにいつもの2つとガートライトが注文する。

 少年はキョロキョロ辺りを見回している。


「何だ。こうゆうとこは初めてか?」


 ガートライトに問われた少年はピクリとして居住まいを正す。


「ああ、君は慣れてるみたいだな………。え、……」

「ガートライト。ガートライト・グギリアだ。よろしく」

「ああ。俺はキクオ・フォルトオレルだ」


 まだ眉間にシワを寄せてこちらを睨みつけている。


「こんな所に連れてきて、何の用があるんだ?おまえは」

「ひとつはあいつらが気に入らないってのと、もうひとつは君に選択できる道を教えられると思ったからだ」

「選択できる道?」


 そんなものがある訳がない。自分が飼い潰される道しか無いと思っている少年は口を歪ませて笑みを浮かべる。


「そう。このまま伯爵家の非嫡子で一生を送るか。もしくは平民となって己の才覚で生きていくかの道だ」

『ガーティ。言い方がカッコ良すぎです』


 ヴィニオが窘めるように口を挟む。その言葉にえーカッコイーかぁ?と口をとがらせルガーとライト。


『キクオ様。あなた様の現在の生活環境を鑑みると、平民よりも激烈な状態であると判明しました。なのに幼年学校での全ての科目に於いてA判定の成績。環境さえ変わればさらなる成績の上昇が見込まれるのではと予測が出ています。あくまで予測ですが。貴民法第4571条第51項の適用が有効であると判断しました』


 んだよ〜。おめ〜の方がかっこうつけだろがよぉ〜。とガートライトがブツクサ言い出す。私は説明しているだけですガーティとヴィニオが言い返す。

 椅子をガタタと揺らしキクオは混乱していた。何でこいつ等が俺の家の中のことを知っているのか。俺の立場を把握しているのか。


「お前らいつから俺のことを調べてたんだ?一体何をさせたいんだだ?」


 顔を真っ青にして、キクオは問いかける。


『いま先程調べました』

「さ、………え!?」


 ヴィニオの言葉に驚き呆然としてるところへマスターが注文の品を持ってくる。

 透き通った細長いグラスに黄色身かかった液体。その上には半円球の白い物体が蓋をするように乗っかっている。2つのグラスの横には長い柄のついたスプーンとストローが置かれる。

 どうですか売り上げは?なかなか良いよ。お客が女の子ばかりというのも悩みの種だけどね、とガートライトの言葉にマスターが笑顔で答える。今度はバイセンを試してみるよといってマスターが立ち去る。


「まぁ、溶ける前に食べちまおうぜ」

「溶ける?」

 

 よく見ると半円球の白い物体の表面が液体に変化していた。

 ガートライトが柄の長いスプーンでそれを掬い口に入れる。眉根を寄せてん~と嬉しそうに口を綻ばせる。

 キクオもそれに倣って、スプーンで掬い取って口に含む。冷たくて甘い。口に入れると滑らかな口触りの氷のような冷たさと何とも言えない香りと甘さが口いっぱいに広がり、ささくれ立った気持ちも消え去っていく気がする。キクオは続けざまにスプーンで掬って口に放り込む。


『キクオ様。続けて口にすると冷たいものは脳が過反応をしめすのでご注意下さい』


 時すでに遅し、キーンと頭を襲った痛みにこめかみを思わず抑えるキクオ。


「あっはははっ。慌てて食わなくてもアイスは逃げねぇーよ。果実炭酸水も飲んでみ、サッパリするぜ」


 ガートライトに言われたとおりにストローをさして飲んでみる。リモネンの酸味と炭酸の弾ける感触に眼を見張る。ズズズと半分ほどを思わず飲んでしまう。ホーと息を吐きガートライトに向き合う。


「俺は平民になることが出来るのか?平民になれば今も生活を抜け出ることが出来るのか?」

『身分返上の制度というものがあります。これは貴族当主ばかりでなく、その身分を有する一族にも適用することが出来ます』

「ならば身分を返上し、平民になることを選ぶ。君らにお願いできるだろうか」

『畏まりました』

「おう、まかせとけ。じゃマクセール先生に頼むことにして、あとはケィフト辺りも巻き込むか」

『地固めはすでに済んでいます。あとは実行に移すだけですガーティ』

「ほんじゃ、チャッチャとやっちまおうか」

『了解です。ガーティー』

「そちも悪よのぉーヴィニオ」

『ガーティー程ではありませんよ』


 2人 (?)でフフフと笑い合いながら、何やら作業をし始める。

 その日から、キクオ・フォルトオレルはキクオ・ザーレンヴァッハを名乗ることとなる。何の妨害も障害もなく、そしてその能力を更に花開くこととなった。



  □


 ザーレンヴァッハとの出会いと顛末を回想しながら、正面にいる当人に自分の仕事についての質問をする。

 この往還連絡船には、普通の客席とは別に将校用のVIPルームがついていて、2人はそこで到着まで寛いでいた。


「で、俺はどんな船に乗ることになるんだ?」


 その問いにザーレンヴァッハは眼鏡を杭と指で押し上げるとニヤリと笑って答えた。


「近接戦用格闘型戦闘艦だ」


 はぁ?






  




 


 

 

(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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