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27/55

27:どこにでもヤな奴とイー奴はいる

 

 

 あれー……、アレィナの顔が無表情のそれへと変化していた。

 そうガートライトと初めて対面した時みたいにだ。

 角張った輪郭に薄茶の短髪。その中で揉み上げだけが妙に目につく。

 薄い眉の下の彫りの深い灰色の瞳は、ギラギラとアレィナを見ている。

 肉食獣の眼だな、とガートライトはその人物をそう評する。

 ただどうにもその眼以外はどこかで見たような記憶があるのを、ガートライトは不思議に思い首を捻る。

 

「お久し振りです。フェルデント大尉」

 

 棒読みに近い口調でアレィナが敬礼をする。本当に嫌そうだ。

 

「はっはっは。今は結婚してオーグュンデ大佐になっている。私に会いに来てくれたのだろう?歓迎するぞ!」

「いいえ、任務で寄港しただけです。こちらに赴任されていたとは知りませんでした」

「あ?そうか。では今から食事でもどうだ?いいところを知っているんだ」

 

 アレィナの態度に気付かないのか、それとも知ってて無視してるのか。何とも強引かつ自己中心的な人間のようだった。(さり気なく肩に触れようとして、アレィナに一歩下がられてる)

 そこへヴィニオが控えめに声をかけてきた。

 

『ガーティ。幼年学校時代のザーレンヴァッハ様を虐げていた三馬鹿の1人です』

 

 ヴィニオのその言葉に記憶が刺激され、過去の情景が思い浮かぶ。

 そこにザーレンヴァッハを蹴り倒している醜く歪んだ四角張った少年の顔を思い出す。

 

「ああっ!ゲジまゆのボルウィン!おたくボルウィン・フェルデントか!」

 

 ガートライトが思わず声を上げると、アレィナに向けていた視線を、眦を上げてガートライトへと向けて声を荒らげて問い質す。

 

「誰だっ!貴様はっ!!何故、俺のっ…………!!」

 

 ガートライトの方を声を荒げ見やると、寸の間驚き息を止める。

 

「きっ、きしゃま………っ!ガ、ガートライト・グギリアっっ!!」

 

 ガートライトを指差し、顔面を蒼白させるボルウィン。

 1歩2歩と後退り、および腰になりながらアレィナへとケルウィンは告げる。

 

「す、すまない。用事を思い出した。また次の機会にな」

 

 そして踵を返すと振り向きもせず逃げるように去って行った。

 

「………いったい何したんです?あれに」

 

 何ともボルウィンに対して辛辣な物言いのアレィナに、逆に問い質そうと思ったガートライトではあったが、そうだなぁと簡単に説明をする。

 

「幼年学校時代にザーレンヴァッハにちょっかいかけていた連中の1人で、色々恥ずかしいコトにあわせてた………かな?」

 

 ガートライトは記憶を辿りつつ、眉間を叩きながらアレィナへと話す。

 あの狼狽ぶりを見れば相当なコトにあわせたのだろうと納得しつつ、少しだけ口元をアレィナは綻ばせる。

 

「あれは前々任地での同僚です。しつこくて、しつこくて、しつこくて、しーつーこーくーてーっ!!」

 

 眉間に皺を刻み拳をぎゅぎゅっと握り締めて吐き捨てるかの如くアレィナは言葉を放つ。

 その話を聞いてガートライトはあれ?と首を傾げる。

 

 高学年時とは言え、ガートライトとアレィナは出会っている(本人は記憶がないが)のにアレィナがボルウィンと会っていないのは、少しばかりおかしいのではないのかと感じたのだ。

 その事に関しては、アレィナはあっさりとその答えを提示してきた。

 

 つまり自分は後から編入をして来て、それにそれ程クラスメートと交流を持っていなかったので、あまり分からないというのだ。

 ある種洗脳に近い学校の中で、我が道を進むアレィナらしいなと内心ほくそ笑みつつ、降りて来たエレベーターへと皆で乗り込み食堂へと向かった。 

 

 

   □ 

 

 

 しばらく早足で前へと進み、司令本部を出て後ろを気にする余裕が出て来たところで足を止める。

 何故あいつがここにいるのか、ボルウィンは理解でき―――いや、したくなかった。

 変な汗が吹き出て身体中に纏わり付く。

 久々に会った元同僚に相好を崩して話し掛けた筈なのに、身体の震えが止まらない。

 

 次女とは言え有力な門閥を有するオーグュンデ家に婿入りし、現在の大佐という地位を手にして順風満帆であった。

 いや、はずなのだ。

 

 はじめはこんな僻地にと多少の不満はあったが、それなりに旨味も有りある程度自由に振る舞うことが出来ていた。

 義父の地位を後ろ盾に好き勝手やれている。

 このまま行けば准将、いや中将の地位も夢ではない。ちゃんと仕事(、、)をこなせば。

 

 今回の仕事も根回しは終わっている。全ては順調だ。

 だからあの女も自分の下に、わざわざこんな僻地まで来たのだろうと歓迎してやろうと思っていたのに、その側に奴がいた。

 

 ガートライト・グギリア。

 

 忌々しい名前。いや、そら恐ろしい名前。ゲジまゆなどとボルウィンが自慢していた眉を虫ケラと呼び表す失礼極まりないヤツ。年を経ているにも関わらず何故かあの顔を見て分かってしまった。

 直接奴に何かされた訳ではない、はずだ。

 ハーノルンと自分達の行動(平民への脅し、カンニングなど)が露見する度、人の輪の中で見かけていただけだった。

 

 そもそもキクオ―――ハーノルンの異母弟を虐げるように指示したのは、ハーノルンの母親即ち伯爵夫人その人である。

 休みの日にハーノルンに呼び出され屋敷で遊んでいると、ハーノルンを守る為にはあなた達の力が必要なのですと、甘く美味しい菓子を与えられながら言われた言葉は、何故か頭へと染み込まされる感覚に陥っていた。

 その言葉に従いしばらくはハーノルンと共にキクオを虐げていたが、ある日から何かしようとするとサージボールや教師がやって来ることでそれが露見し、ボルウィン達の立場が次第に悪化して行く。 

 

 そう、ボルウィン達は気づかなかったのだが当時彼等の行動は全て、全員(これは幼年学校の平民と一部の貴族子弟)に知らされていたのだ。

 貴族、平民に関わらず、いやだからこそ周囲の態度に居た堪れなくなってきたところで、キクオが特例により別の家名を綬けることに至る。

 それを知ったフォルトオレイル伯爵はその原因を糾明し、やがてハーノルンとその母親にたどり着くこととなり、そして2人は秘密裏に処分されてしまった。

 

 彼には第3夫人まで伴侶がおり後を継ぐ事の出来る子供等も幾人もいたので、彼には特に何の痛痒もなく始末をしていったのだ。

 当時何もその背景を知りえもしなかったボルウィンは、いきなり放り出されて当惑したものだった。

 結局自身も地方の幼年学校編入することになるのだが、その時すれ違いざまにガートライトに脅される。

 

「ゲジまゆボルウィン。今後キク―――ザーレンヴァッハに手を出したら、今以上に酷いことになるから覚悟しろよ」

 

 その幼い声は、ボルウィンの記憶に怖れと痛みを伴うほどに心底刻まれたのであった。

 あの目をしばらく忘れることはなかった。恐怖とともに。

 ボルウィン達に降りかかった全ての事柄が、奴の仕業だと理解するのは容易かった。

 何の証拠もないにもかかわらず、ボルウィンの心は理解わかってしまったのである。

 

 あれから十数年が経ち、全てを記憶の奥底へと沈め去っていたものが、また浮き上がって来た。

 あれはボルウィンにとって疫病神というものに違いない。

 どうすれば祓えるのか。

 

 脂汗を身体に滲ませながら、ボルウィンははたと思い返す。

 いや、待て。今の自分は軍での地位もそれなりのものだ。奴がよもやボルウィンより上位の人間とは思えない。

 なら、まずは奴の身の上を調査をして、あわよくばひと泡吹かせられるかもしれない。

 

 その考えはボルウィンの心身を回復させることに役立ち、次の行動へと移させる原動力となる。

 以前の借りを今返してやろう。少しだけ冷えた精神状態の中、ボルウィンは端末を取り出し部下へとガートライト・グギリアの調査を命じる。

 ボルウィンは踵を返すと、自身が艦長を務める戦艦ふねへと向かう。

 ある意味復讐の機会を得たと理解したボルウィンは口元を醜く歪めほくそ笑む。

 見てるがいい、ガートライト・グギリア。

 

   □ 

 


 受付に教えられたフロアへエレベーターで降りたガートライト達は、その様相に身を丸くする。

 食堂とは聞いていたのだが、その規模は彼らの想像をあっさりと越えたものだったからだ。

 

「ひっろいな~、ここ………」

「で、すねぇ~………。はぁ」

『興味深いですね』

『でもあの船程ではないかと』

 

 ワンフロアをほぼまるまる食堂にしたらしいその光景に驚きつつも、周囲の人間の行動を見てどの様にすればいいのかガートライトはすぐに察する。

 

「どうやらあそこの端末でチェックするみたいだ。行こうか」

 

 ガートライトがそう言って、職員らしき人間が数人並んでいるところへと足を進める。

 物怖じせぬその態度にアレィナは半ば感心しつつその後に続く。

 モートロイドであるマルクスとレイテは他のモートロイドと同様に待機場所に移動させて、ガートライト達は注文した料理を手にテーブルへと着く。

 昼前でそれほど人も少ないせいか、簡単に席に着くことが出来食事をとり始める。

 

「はぁー……これで補給を終えれば問題なく出航れますね」

 

 ミートソースパスタをフォークで絡めつつ、やっと安堵したようにアレィナが言葉を漏らす。

 

「だと良いけどなぁ………」

「なによ、その言い方」

 

 カツレツセットを切り分けつつ、アレィナの言にガートライトが反論する。その言葉にアレィナが不満を込めて聞き返す。

 

「ん~、俺が昔やらかしたことを根に持って、きっと誰かさんがなんかやって来そうな気がするわけよ」

 

 溜め息を吐き出すガートライトを見て、ほんとに何をやったのかとジト目をアレィナが向ける。

 

「俺の身上なんざすぐ判明するしアレィナに執着してるところを見ると必ず、間違いなくちょっかいかけてくると思うぞ?」

 

 その言葉にアレィナは少なからず眉を顰め嫌悪の表情を見せる。

 

『ですね。オーグュンデ伯爵家といえば、近頃権力(ちから)を付け始めているようですし、その女婿の人間であれば、何かをしてくる可能性は間違いなくあると思われます』

 

 ヴィニオが口を挟んできて、そんな事を言い出してくる。

 それを聞いて好物の筈のミートパスタも、あまり美味しく感じなくなる感覚をアレィナはもってしまう。

 

「まぁ、多分何をやるにしても、俺達がこの基地を去った後のことだと思うし気にする事もないよ」

 

 安心させるようにガートライトがそう言うが、ケルウィンの人と為りを知っているアレィナはその楽観的な考えに同意できずに無言でずるずるパスタを頬張る。

 

「ガー!ガーじゃないか!久し振りだな!!」

 

 そうガートライトに声を掛けてきのは、年の頃はガートライトと同年代か少し上。

 短い銀髪と人懐こそうなタレ気味の蒼眼がガートライトに向けられていた。

 中肉中背、特に何かに秀でるものはないかも知れないが、あるいはこの人当たりの良さが長所の人間かとアレィナは捉える。

 

「おー久し振りだな、レイヴズ。今はこっちなのか?」 

 


 ガートライトにレイヴズと呼ばれた男性は物怖じすることもなく、ガートライトの隣の席へとちゃっかり座る。むぅむぅ〜とアレィナは小さく唸る。

 本来なら自分が隣でと思っていたことを第三者たにんにやられてしまったことに、少なからず不満に思ったのである。(やつ当たりとも言う)

 

「そういや第7艦隊勤務か。今はこっちに派遣ってやつ?」

「ああ、いらん苦労ばっかしてるよ」

「はじめまして。グギリア大佐の副官を務めています。アレィナ・エリクトリナル少尉です」

「ああ、お噂はかねがね。自分はレイヴズ・ヘイクツグス少佐です。第7艦隊で補給物資の担当をしています」


 初対面ということで、アレィナは立ち上がり簡易敬礼をしてレイヴズへ挨拶をする。

 返ってきた挨拶は、噂云々と(どーせその手の奴)少佐ということ。その年齢からすれば相当なやり手とアレィナは理解した。 

 第7艦隊というのは、いわゆる補給部隊のことであり、それぞれの艦隊へ分散されながら常駐している訳だ。

 1番重要な役職であるにも関わらず、その待遇はあまり良いとは言えないのが玉に瑕だ。

 アレィナはそんな感想を頭に浮かべ、2人の話に耳を傾ける。 


「そういやお前のいた部署、いきなり廃止になったけど何したんだ?お前が転属になった後、全員が降格やら地方に転属になってたぞ?」

「って言われてもなぁ。仕事してたの俺だけだったから?」

 

 ガートライト自身はあの部署に執着はしていても、その係員に対しては特に何の興味もなかった。上司と部下。ただそれだけの関係だったので、そういった受け答えしか出来なかった。

 ガートライトは少しだけ名残惜しげにほぅと息を吐く。ああ……俺のピースフルプレイス。

 

 しばらく互いに近況を話し歓談していたが、レイヴズが徐ろに居住まいを正しガートライトに話し始める。

 

「会って早々悪いんだが、ちょっと相談に乗ってもらえないか?」

 

 レイヴズのしょうを知っていたガートライトは己も態度を改めて相談事について話を聞くことにする。

 レイヴズと知り合ったのも、前任部署で消耗品の調達についての事だった。

 その時はガートライトの尽力で事なきを得て、その時からの知己である。

 周囲(といっても人も疎らになってきた食堂内なのだが)にはばかる様に小声でレイヴズがガートライトに話を始める。

 

「ちょっとばかし補給物資調達できんか?」

 

 その言葉にガートライトは一瞬思考停止をし、アレィナはハァ?と眉をしかめた。

 

「えー……。いったい何を言ってるんです?少佐」

 

 第7艦隊の中で物資管理の担当官が物資の調達を頼むというのは、あんまりにも筋が違っているというものだ。

 アレィナの言にもっともだと頷いて、レイヴズはその事について話をする前に場所を変えようと言ってきた。

 

「ちょい場所を移動しよう。あんま聞かれたくないもんがあるからな」

 

 ガートライトとアレィナはそれに首肯し、食べ終えた食器を戻した後レイヴズの後へとついて行く。

 とは言っても、同じフロアの喫茶スペースの一角だ。

 レイヴズの奢りという事でガートライトはコーヒーを、アレィナは紅茶とパンケーキをいただくことにする。『太りますよ』のヴィニオの皮肉にも「運動するから大丈夫ですっ」と返すアレィナだ。

 レイヴズもヴィニオの声に挨拶を交わし、『なかなか大変そうですね』とヴィニオに労われ苦笑する。

 そしてひと息ついてからレイヴズは話し始める。

 

「いやなぁ、ご多分に漏れず中継基地ここは貴族の力が幅を利かせててな」

 

 レイヴズが訥々とガートライトに聞こえる程度の声音で告げる。

 そんなことはガートライトもアレィナも理解している。

 自身も貴族という身分であるが故、その理不尽さも痛感してはいる。(特にアレィナは)

 とすれば自ずと推測は出来るものだ。

 

「なるほど、横流ししてる訳だ、誰かは知らんが」

 

 ガートライトの呟きに、アレィナは冷めた目をして息を吐く。

 以前のアレィナは横流し(そのこと)に対して苛烈に反応し、周囲へというか上への心象を悪くして、第35開発試験場(ここ)に在籍することになった経緯があるからだ。

 今思えは、もう少しマシなやりようがあったのではないかとアレィナも考えないではないが、過ぎた時は如何ともしがたいと振り返るのみなのだ。

 

「なんだよ〜。何とかならね?」

 

 レイヴズが何の気無しにそんな事をのたまってくる。

 同年代のせいかあるいは性格か、口調が気安いものになってるなぁと思いつつガートライトが気になったことをつい突いてみる。

 

「つーか、その手のヤツって、ある程度ストックしてるもんじゃないのか?」

「そうなんだが………。ちょい前にそこの宙域で遭難騒ぎがあって、ついそっちに放出しちまった……」

 

 補給物資等については、軍の規約によりある程度の備蓄物資を保管貯蔵することが義務付けられている。

 そして仕様で定められた期限が過ぎると、それらは廃棄されることになっている。

 補給物資とは、肉・野菜等を加工したものをパッキングして料理で使えるようにするものや、レーションの様にそのまま口にする物まで多岐にわたる。

 

 そしてその廃棄予定のものを、一部の貴族が流用してるのである。その権勢を高める為に。

 しかも廃棄予定の古いものでなく、製造したてのものと交換して。

 なので実質保管されてる物資とは、古い物ばかりになってしまうという変な状況になっているのだ。

 その横流しする予定の物資を供出してしまった為、レイヴズは現在進退窮まる状況になっていると言う。

 

 そう言えばレイブズという人間は、困った奴がいるとつい手を差し伸べてしまう、そんなお人好しの一面があったのをガートライトは思い出した。

 もちろん宇宙空間ではそれこそが正しい行為なのだが、利潤を追い求める人間もしくはそんな状況(そうなん)に置かれたことのない人間には、理解も興味も向けることはないのだ。哀しい事に。

 

 法は法だがそれを履行、遂行するかはそれを運用する人間次第ということだ。

 そして正しい事を正しい事と為されないのが、貴族社会というものだ。(一部だが)

 宙空間救助法というものに従い措置したと言っても、そんな事は通用しないのである。

 

 無いものはないのだが、レイヴズはその分を調達しなければならなかったのだ。

 二進にっち三進さっちも行かなくなったレイヴズはガートライトを見てつい言ってしまったのである。

 レイヴズ自身、無茶なことを言ってる自覚はあったのだが、以前助けられた時の手際の良さを思い出して言葉に出してしまったという訳だ。

 

 さすがのガートライトでも無理だよなぁと思い直し、謝罪をしてから立ち上がったレイブズにガートライトはやれやれと肩を竦めて答える。

 

「あるよ」

「ガートっ!」

 

 アレィナが警告の声を上げるがまぁまぁとアレィナを制して、レイブズを指でちょいちょいとこちらに来させて耳打ちする。

 

「150年前のヤツでいいならな」

 

 

  □

 

 

 よもや奴が――ガートライトが自分と同じ階級で、アレィナの上司であるという信じ難い情報を耳にして、少しばかり憤りをボルウィンは感じた。

 こちらは嫁き遅れの不細工な女のところへ婿入りし今の地位を戴いたのに対し、奴はどういう訳か数カ月で幾つもの階級を飛び越しているのだ。

 

 冗談ではない!そんな事は認められない!と憤慨したものの、某系公爵からの指示と言われてしまえば、口を噤むほか無かった。

 ただ自身の努力を何故か蔑ろにさせられた気になった。

 

 そこでボルウィンは一計を案じた。

 いや一計などという大層なものではない。

 あくまで貴族らしく、貴族のやり方で。

 すでにこの事案は承認され、後は実行へ移すのみである。

 

 やつを借金塗れにして、自分以上の不幸へと蹴り落としてやる。

 それに彼女アレィナもきっと奴が上司であることに不満を抱いているに違いない。

 これも含めて宣誓書を送りつけてやろうと、ボルウィンは口元を厭らしく歪め笑う。

 例の件の報告とこれからの事について報告する為、この基地のNo.3である義伯父へと連絡を入れる。

 この時のボルウィンには自身が成功する未来しか見えてなかった。

 

 


 

 

(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマありがとうございます ガンガリます (T△T)ゞ

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